福岡取材旅行記 Mr.えいみすの逆襲(後編) | 『Go ahead,Make my day ! 』

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【オリジナルのハードボイルド小説(?)と創作に関する無駄口。ときどき音楽についても】

えーっと、早くも1月も半ばに差し掛かろうとしております。

ということは、このプチ旅行からもはや半月が過ぎ去ろうとしているということなわけで……。

 

記憶が消え去らないうちに、とっとと後編はじめますね。m(_ _ )m

 

さて、前回は夜間撮影機能を使っての天神地下街でしたが、もう一つ、旧カメラの性能+「こんなところでパチパチやれるほど命知らずじゃねえ」という理由でカメラに収めてこなかったところがあります。

 

それは九州最大の歓楽街、中洲。

 

最大と言っても面積は大したことはないし、単純に人出という点で言うなら大名近辺のほうがよっぽど賑わっているのですが、それでも「お子様お断り」の大人の社交場の雰囲気があって、歓楽街特有の怪しさでは他の追随を許さないのがこの街です。

(バブル期はすごかったんですけどねー。土曜の夜は文字通りごった返してましたし、国体道路は客待ちのタクシーで1車線塞がってましたから)

 

そんな昔話をしても仕方ないのですが、”逆襲”と銘打った今回、ついにその中洲の撮影に挑むことにしました。ただし、撮影日は1月2日。当然、盛り場には人っ子一人いやしません。

まあ、だから撮影できたんだという説もありますがね……。

 

まずは例によって中洲の基礎知識編から。

 

【 中 洲 】 (クリックすると別窓でGoogleマップが開きます)

中洲(なかす)は福岡市博多区、那珂川と博多川の中洲(中の島)に位置する地区である。地名通りに中州状になっている。

 

大阪に次ぐ西日本最大級の歓楽街である。最寄り駅は、福岡市地下鉄中洲川端駅。

1600年(慶長五年)、当時の福岡藩主黒田長政が、福岡(現在の中央区)と博多(現在の博多区)を結ぶために中の島の東西に東中島橋、西中島橋(現在の昭和通り)をかけて誕生した。現在の中洲には18(福岡方に7つ、博多方に11)の橋が架けられている。かつては老舗百貨店「玉屋」や映画館でにぎわいを見せた地域であるが、現在の商業地域の中心は中央区の天神や大名へと移っている。

全国的に有名な事物として、福博であい橋(かつて福岡ダイエーホークスの優勝時この橋からファンがダイブをした)からのネオンサインの風景や那珂川沿いの屋台、風俗店がとても多いことなどが挙げられる。

1996年、隣接する住吉地区にキャナルシティ博多が開業してからは、天神地区とキャナルシティ博多の中間に位置し、天神-中洲-キャナルシティ博多-JR博多駅のエリアが一体化した。また隣接する川端地区とも一体化した再開発が進められており、今後の新しい中洲地区が期待されている。

2006年には玉屋跡地に大型複合商業施設gate’sがオープンした。

 

中洲にある店の数 - 約3,500軒(飲食店、風俗店など)
中洲で働く人の数 - 約3万人
1日に中洲に遊びに来る人 - 約6万人
(いずれも中洲観光協会 より ※ただし、これは最盛期の数字のようです)

 

福岡市出身のタレント、タモリはかつてギャグで中洲産業大学教授を名乗っていた。

 

              出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
 

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余談ですが、わたしの創作の主人公である不良少女・榊原真奈の語りの中でよく出てくるフレーズに”夜の街”というのがあります。

これは実はかなり微妙で、しかも曖昧な表現です。というのも、それだけでは彼女のテリトリが特定できないからなのですね。もちろん意図的にそうしたのですが。

本文中では中洲や天神、大名周辺を内包する言葉として使ってます。個々のエピソードで中洲周辺が主であることは何となく書いてますけど。

これは作品が福岡の非行少年事情を描くことを目的としていないことや、”女だてらに敗けなしのファイター”というやや荒唐無稽な設定に考証をこじつけるのを避けた結果なのですが、逆に福岡の夜の街をご存知の方から見ればややリアリティを削いだ感も否めないのですよね。

基本的なイメージは「素っ気ない男のような格好をして、別に行くアテもなく盛り場をただブラブラしていて、ときどき揉めた相手とケンカになったりしていた」という感じです。自分からケンカを売ったり、他人の揉め事に首を突っ込んだりしたことはありません。例外は「多勢に無勢で被害者に非がない、または加害者に理がない」ケースで、真奈が入り浸る唯一の場所であるバーのマスターとの出会いや、作品のもう一人のヒロインである由真との出会いがこれですね。

ただ、一方で自分の深夜徘徊や、そういう揉め事が警察沙汰になるのをある部分で望んでいたところもあります。(この辺りは「Left Alone」で語られてますね)

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閑話休題。

さて、そんなわけで中洲へ。まずは天神から明治通りを歩いてアクロス福岡、西中洲の南端をかすめて西大橋から中洲へ。

いきなり話が脱線しますが、この西中洲、那珂川と薬院新川という小さな川に挟まれた一角です。中洲といっても中州地形にはなっておらず、しかも中洲は博多区なのに西中洲は中央区という紛らわしさ。

西中洲
これが西中洲のメインストリート。といっても1本しかないんですが。

この写真だとちょうど真ん中の光源がある辺りから左手に入った旧県公会堂貴賓会館の前を通って渡る橋が、ウィキペディアの解説にも出てくる(「砕ける月」の冒頭の回想シーンにも登場する)福博であい橋です。

 

ふくはく出会い橋(中洲側) ふくはく出会い橋(橋の上)

左写真が福博であい橋の中洲側の袂。右は橋の上ですね。昔はこの袂にサックス吹きのオジサンがいたのですが、最近は見ないという話を聞きます。実際のところはどうなのか、情報をお持ちの方はお寄せください。

 

ふくはく出会い橋(ベンチ) ふくはく出会い橋(景色)

左は橋の上にある屋根つきのベンチ。右はそのベンチから見た中洲の夜景。どんなに一時期の勢いがなくなったと言われようとも、この煽情的な景色を見ると「ああ、中洲だなあ……」と思ってしまうのですよね~。

 

ちなみに旧県公会堂貴賓会館は2005年3月に発生した福岡県西方沖地震の被害のため、現在は修復工事が行われています。

旧県公会堂貴賓会館(工事中) 旧県公会堂貴賓会館
何の写真だか分かりませんね……。なので観光資料から在りし日(?)のお姿を。


さて、そんなわけで中洲へ。

中洲というのは広義には那珂川に浮かぶ島全体を指すのですが、一般に「中洲」というときには南端の中洲1丁目(通称・南新地。いわゆるソープランド街)から明治通りに接する中洲4丁目までを指します。5丁目と北端の中洲中島町(「砕ける月」のブログ掲載版では熊谷幹夫の事務所があったところ)にはポツポツと居酒屋などがある程度で、道を挟んだだけだというのに様相は全く違うのですよね。

 

狭義の中洲の路地は結構入り組んでますが、大雑把にいうとど真ん中を縦断する中洲大通り(と言いつつ、一方通行の狭い道ですが)と東と西の川沿いの道、それに横丁が走っている形になります。

このうち、東側(博多川沿い。対岸は上川端商店街)はあんまり店はありません。西側の那珂川沿いは飲み屋の雑居ビルが建ち並んでます。これらのビルのネオンが有名な川面の夜景の光源です。
 
中洲(那珂川沿い1) 中洲(那珂川沿い2)
おおよそこんな感じですね。

個人的な印象としては、中洲大通りやその横丁の路地にある店がどっちかというと派手でお高めな店だったり露骨に怪しかったりするのに対して、川沿いの店はやや朴訥とした昔ながらの飲み屋街のような気がします。風俗店(おさわり系を含む)が見当たらないせいかもしれませんね。

右の写真をもうちょっと先に進むと↑の福博であい橋の袂に着きます。ちなみにちょっと前のエントリで写真を載せた人形小路もこの通り沿いにあります。

 
人形小路

写真を撮り直してみましたが……あんまり変わりませんね。

 

で、問題の中洲大通りですが。とりあえず北端(明治通り側)から南端(国体道路側)までを歩きながら撮ってみました。
 
中洲大通り1 右に写ってるのは地場大手のパチンコチェーン。

中洲大通り2 左に写ってるのはウチのヨメ(着ぶくれバージョン)

中洲大通り3 真ん中辺り。右にかつてゲーセンがありました(後述)

中洲大通り4 中洲に限りませんが、福岡の放置自転車は酷いです。

中洲大通り5 そろそろ国体道路。人がいない盛り場は寂しい……。

 

3番目の写真の横で書いてるのは、この写真の右側あたりに真奈と由真が出会った中洲のゲームセンター(TAITO)があったのです。今はいくつかのテナントが入れ替わった末に閉鎖されてますが。

ちなみに中洲にはもう一つ、老舗のゲーセンがありまして。

本当は物語に登場させるのはこっちにしようかと思ったのですが、そこは場所があまりにも危ないところな上に、周辺には本当にヤバイ人たちがウロウロしているのでやめたという経緯があります。写真で見ていただくイメージを描くのが面倒だったというのもありますが。

他にもとても格闘戦がやれる広さではないというのもあります(笑)

中洲のゲーセン1 中洲のゲーセン2

ちょうど福博であい橋の袂から真っ直ぐ来て中洲大通りとぶつかる辺りにあるのですが(グーグルマップ参照)、この辺りは「Left Alone」の第82回、真奈が中洲にある街金融の事務所を見に行くシーンで登場しています。左の写真の角を右のほうへいくと、真奈が通ったとおりの道筋になります。

 
中洲の地獄通り
お正月なのでまったく灯りがありませんが、この先の路地と右折した通り、ちょうどGate’sの裏辺りはかつてはボッタクリ店の巣窟であり、今でも怪しい風俗店が軒を連ねている一画です。(一応、大抵の店の看板に”明朗会計”とかいう文句が踊ってますけど、もちろんそんなことはありません)

そしてこの近辺には中洲名物の客引きのオジサンやオニイサンたちがウロチョロしています。れっきとした条例違反なので、表向きは「困っている人に風俗案内所の場所を教えてあげる親切な人たち」という体裁をとってますけど、ちゃんと無線機で連絡をとりあってカモを探す、かなり統制のとれた連中です。

実はわたしも若かりし頃にこの通りで被害にあったことがあるのですが、さすがに今は様々な条例ができて、昔のようにやりたい放題ではないようです。

ただ、通りで声をかけづらくなったのを穴埋めするかのように、最近の中洲には先述の「風俗店の案内所」が乱立しています。

 

ここからはいくつかスナップを。
中洲・飲み屋ビル 中洲・大人のネットカフェ
同じ通りの雑居ビルなんですが――なんでしょうかね、この佇まいの違いは。

左のような高級感のある(笑)クラブやラウンジが入ったお高そうなビルもあるし、右のような猥雑極まりないビルもあるのですね。

しかし、大人のネットカフェってなんだろ。

 
中洲の横丁 中洲の横丁

どっちも中洲大通りから入る横丁ですね。

個人的な意見ですが、中洲の街並みからどうしても抜けない如何わしさの原因って、街灯をはじめとするライティングが”いかにも歓楽街”だからなんじゃないでしょうかね。

もちろん、訪れる酔客の皆さまにしてみれば「それがいいんじゃねえか」ということになるのでしょうけど。

 
中洲交番

そんな中洲の治安を守る中洲警部交番の皆さま。何だかヒマのように見えるのはわたしの気のせいでしょうか。(店も開いてないんで騒ぎを起こすヤツもいないんでしょうけど)

 
中洲大通り(国体道路側) 国体道路のカフェ
これは中洲大通りの南端の角。写真が只者ではないくらいにピンボケなのはお許しくださいませ。

新年と言うことでお休みでしたが、右の建物(というか店)は「Left Alone」第93回にて真奈と千原留美、倉田兄弟の会談の舞台になったカフェ。ちなみに国体道路側からみたのが右の写真です。

 

上の写真の奥、国体道路を渡った向こう側にあるのがローソン(ギリギリ、看板の色でお分かり頂けるかと……)です。ここも第95回でちょっとだけ出てます。
国体道路のローソン

昼間はこんな感じ。
実はこのローソンは「La vie en rose」の第2回、熊谷幹夫が坂倉有紀子の手掛かりを求めて風俗雑誌を買い求めた、あのローソンでもあります。

ちなみに上層階は思いっきり風俗関係……。まあ、南新地の入口でもあるわけですから、驚くには値しないのかもしれませんが。

最後に一枚だけ、南新地の写真を。

中洲・南新地
夜はさすがにカメラを向ける度胸はありませんでした。つーか、写ってる女性の二人連れはこれからご出勤なのか、それともキャナルシティへの近道なのか……。
どっちだよ。


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えー、さて。毎度のことながらやめ時が見つからずにダラダラと続く取材旅行記でしたが、楽しんでいただけましたでしょうか。

人のいない盛り場というのは事の他うらぶれて見えるものだな、というのが今回の感想でした。

どこかで書いたことがあるのですが、小説において街を描くというのは、もちろん風景やその様子を描くことなのですが、同時にそこで生きている人々を描くということでもあるのですね。それがなければ、単なる観光ガイドに過ぎないわけで。


では、また次の取材旅行記にて。(まだやるのかよ)