創作を始めると、ただでさえ少ない(←オイ)読書量が激減する私ですが。
というのも、以前にダラダラと未完の作品を書いていた頃、途中で、
「……どっかで読んだ話だな」
と思ったら、並行して読んでいた作品を無意識にパクッていたというシャレにならないことをしでかして以来、創作中は似たジャンルのものは読まないことにしているのです。出来れば、他のジャンルのものも。
ですが、この本は書店で見つけて、速攻で買ってしまいました。
- マイクル ムアコック, Michael Moorcock, 井辻 朱美
- メルニボネの皇子―永遠の戦士エルリック〈1〉
いやぁ、懐かしい(笑)。
最初に読んだのはもう十数年前でストーリーもおぼろげ、しかも今回は訳者が変わっているので(安田均→井辻朱美)、何となく受けるイメージも違っているような気がするのですが、それでも心はすでに<夢見る都イムルイル>へと誘われております。
日頃、殺伐としたハードボイルドばかり読んでいる身には、この手の作品の絢爛な言い回しや単語の選び方は非常に新鮮でして、それだけでも読んでいて楽しいのですが、さすがは世界的なヒロイック・ファンタジーの双璧と呼ばれる作品(もう一つはロバート・E・ハワードの「コナン」シリーズ)だけあって、描写の細やかさやキャラクター造形の艶やかさも見事の一語に尽きます。
エルリックの物語が他のファンタジー作品と決定的に異なるのは、その始まりから有名なラストの魔剣ストームブリンガーのセリフ、『さらば友よ。我は汝の何倍も邪悪であった!!』に至るまで、全編を彩るのが皮肉と苦悩、誤算に満ちた”悲劇”であることです。
勇気と友情に満ちた美しいストーリーも悪くはありませんが、こういう作品にももっと注目が集まってもいいんじゃないかなーと思いますが、どんなもんなんでしょうね。(映画向きの素材では……ないかな。救いがなさ過ぎるし)
一つだけ不満を。
残念なことに、カバーイラストが旧版の天野喜孝氏のものから違う方に変更されていて、あの美しくもオドロオドロしい世界観が失われているのですよねー。
日本でファンタジーの挿絵を描かせたら、天野氏の右に出る者は未だに出ていないと、激しく主張しておきたいと思います。