今回から卓上で音楽制作をするDTM関連の記事をシリーズで書いていきます。
第1回目は、「DTM環境をどの構成で構築するのが良いのか」というテーマでお届けします。
筆者は元々ヤマハのオールインワンシンセ「SY-85」を愛用しており、当時はそれで演奏や打ち込みを楽しんでいました。
久々にシンセでの演奏や作曲を再開したくなり、色々と調べて現在のDTM環境を構築した経緯があります。
昔は環境構築にかなりの費用と手間がかかりましたが、現在は安価かつコンパクトでありながら、驚くほど高機能な機材が揃っています。
価格面や機能面のハードルは劇的に下がったものの、これから始めようとする方にとっては専門用語や難しい解説が多く、情報面のハードルは少し高く感じられるかもしれません。
そこで、これからDTMをやってみたい方や、シンセサイザーでの演奏・音作りを楽しみたい初心者の方に向けて、機材の構成やおすすめ製品、使い方などをなるべく分かりやすく解説していきます。
本題に入ります。シンセサイザーでの演奏や楽曲制作をする場合、主に3つの選択肢があります。それぞれの特徴や価格帯、向き不向きを見ていきます。
■ 選択肢1:PC(DAW)のみ

DAW(Digital Audio Workstation)という音楽制作ソフトをPCにインストールし、アプリ上でマウスやキーボードを使って曲を作るスタイルです(※DAWについては別記事でも詳しく解説する予定です)。
① 価格帯
CubaseやLogic、Ableton Liveなどが有名で、機能が抑えられた入門用エディションは1万円前後で購入できます。
※Logic ProはMac専用でエディションのバリエーションはなく、買い切り約3万円です(逆に3万円でプロ仕様のフル機能が入手できます)。
② メリット
- 機材が最小限で済む:PCとDAWソフトさえあれば単体で楽曲制作ができ、他の機材がいらないのが最大の魅力です。
- 豊富な音色:インストールした時点でピアノやギターなど一通りの音色が入っており、クリックするだけで音が鳴ります。有料・無料の音色や、往年の名シンセを再現したソフトウェアシンセもプラグインとして追加可能です。アプリ上で実機のシンセと同じ操作、音作りも出来ます。
- 演奏スキルが不要:ピアノやキーボードを弾けない人でも、打ち込みを再生すれば演奏している気分で作曲が楽しめます。
③ デメリット
- 演奏の楽しさが少ない:これ単体では「キーボードで実際に演奏しながら曲作りをする」ことができません。PC上で画面をポチポチ操作するだけなので、楽器を演奏している感覚はやや薄れます。
- 初期の学習コストと専門知識:DAWソフトのインストールや初期設定に加え、DTM固有の専門用語や操作に慣れるまで、どうしても一定の時間がかかります。ある程度PC周りの知識が必要になる場面もあります。
- PCのスペックが必要:古いPCやCPU性能が低いPC、メモリが少ないPCだと動作が重くなります(※グラフィックボードの性能はほぼ関係ありません)。
■ 選択肢2:PC + MIDIキーボード
PCにUSB等で接続し、上記のDAWと組み合わせて使う鍵盤型のコントローラーです。
① 価格帯
機能がシンプルなものでは1万円台、高機能なものでも3万〜4万円前後、プロ仕様で10万円前後と、ハードウェアシンセサイザーに比べて安価です。また、DAWソフトのライト版や各種音源(総額10万円相当以上)が付属している製品もあり、非常にお得感があります。
(※各製品の価格や特徴については次回の記事で詳しく紹介します)。
② メリット
- 手軽で省スペース:音源やシーケンサーを内蔵していないため、本体が軽くて小さく、使わないときはデスクの片隅に立てかけておけるなど収納が簡単です。
- 付属ソフトが豪華:別途DAWを買わなくても、これ一つでDTM環境がほぼ一式揃います。複数のソフトシンセをPC側に追加できるため、実質的に何台ものハードシンセを手に入れたような拡張性があります。
- DAWの直感的なコントロール機能:モデルによっては、再生・停止・録音などのトランスポートボタンや音色変更のノブやスライダーが搭載されています。マウスやPCのキーボードを使わなくても、DAWの主要な操作を手元で完結させられる機種が多く、画面から視線を逸らさず演奏や打ち込みに集中できます。
- 初心者でも安心のサポート機能:鍵盤があると音階の確認や和音が簡単にわかり、指一本でメロディーを試行錯誤できます。間違ったキーを押しても自動補正してくれる機能や、DAW側のタイミング自動補正機能(AQ)、ステップ入力などを活用すれば安心です。ピアノが弾けない方にとっては練習にもなります。
③ デメリット
- 初期設定の手間:PCとの接続やDAW側の設定が必要で、繋いですぐに音が出ない場合があります。大量の付属ソフトが付いてくる製品もありますが、それぞれでアカウント作成や専用ソフトのインストールや認証が必要で準備に手間がかかります。
- 学習コストと専門用語の壁:追加ソフトのインストールやドライバ設定には一定のPC周りの知識が必要で、DAW固有の専門用語や操作を憶えて慣れるまでは少し時間がかかります。
- コントロール機能の割り当て設定:スライダーやノブがDAWのどの機能に対応しているのかが分かりにくく、思うように動かすための割り当て(マッピング)設定がやや面倒に感じることがある。
- オーディオインターフェイスが必要な場合も:音声出力の遅延(レイテンシー)が気になる場合は、PCから音声を高速で出力するための小型機材(オーディオインターフェイス:2万円前後)が別途必要になります(※これについても別記事で詳しく解説予定です)。
■ 選択肢3:ハードウェアシンセサイザー
昔ながらの鍵盤に音源やシーケンサーを内蔵したオールインワンシンセ(ワークステーション型シンセ等)です。単体で音が出て演奏、音作り、作曲が完結します。
① 価格帯
比較的リーズナブルなもので10万円弱(KORG Kross 2、Roland JD-Xi、Arturia MiniFreakなど)、平均的なモデルでは20万円以上となります。
② メリット
- 単体で完結する手軽さ:電源を入れればすぐに音が鳴り、複雑な設定やPCなしで作曲や音色作成まで1台で行えます。すべての操作が直感的に行えるのも魅力です。
- 遅延のない快適な演奏:音声の遅延がないため、ストレスなく気持ちよく演奏できます。PCと接続する場合もPC側の負荷が低いため、低スペックなPCでも安心して使えます。
- 所有欲を満たすルックス:ボタンやスライダー、つまみが並んだ無骨でカッコいいシンセサイザーらしい外見は、眺めているだけでも気分が上がります。
③ デメリット
- サイズと重量:重くて大きいモデルが多く、ある程度の設置スペースが必要になります。
- コストと選定の難しさ:価格が高く製品の選択肢も幅広いため、気軽には購入しづらい面があります。また、PCやDAWとの連携を前提とする場合、機能が重複してどちらかの機能が無駄になってしまうこともあります。
■ まとめ:筆者が選んだ構成は?
ここまでご紹介したように、それぞれの構成にメリット・デメリットがあります。
- PC(DAW)のみ:コストを最も抑えられる反面、演奏している感覚は少なめ。ひたすらクリックする地道な作業になるので、最初は楽しさを感じにくい。
- PC + MIDIキーボード:コストパフォーマンスが最も高く、演奏も作曲も省スペースでこなせる。ただし初期設定やDAWとの連携に慣れが必要。
- ハードウェアシンセサイザー:設定不要で直感的に演奏・作曲ができる一方、価格が高く設置場所を選ぶ。
ちなみに筆者の場合は、「鍵盤でしっかり演奏したい」「設置スペースはあまり広くない」「軽い気持ちで気楽にDTMを再開したい」という条件があったため、比較的低コストで環境が作れる「選択肢2:PC + MIDIキーボード」の構成を選択しました。
結果としてこの構成は大正解で、今でも非常に満足して音楽制作を楽しんでいます。
次回は、「失敗しないMIDIキーボードの選び方とおすすめ製品」をご紹介する予定です。お楽しみに!