No.1『In the Mouth of Madness(マウス・オブ・マッドネス)』 | CURSE OF CINEMA

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メジャー、インディー、洋画、邦画を問わず映画や、アメコミのレビュー、自作のイラストを掲載していくブログです!映画はホラー映画メインになりそうですが(笑)とにかく個人的に好きな作品などを褒めちぎる愛のある映画レビューを書いていきます!

このブログは、自分が学生の頃自主映画をやっていた事もあり、どんな映画でも世に出るだけで凄い事だと思ってしまうので、B級や、マニアックな物も含めて、映画は全て素晴らしいという思いを込めて褒めちぎろうというブログです。

今回は記念すべき(?)第1回になるので、何について語ろうかと悩みました。
小学生の頃に観て、自分が映画の虜になるきっかけとなった『レイダース』にしようか、それともホラー映画メインのブログだし、ホラーというジャンルに関わらずマイベストの1本である『エクソシスト』にしようか、などなど。
しかし、それらの作品はここで語るまでもなく(いつか語ると思いますが)、有名な名作であるし、やはり第1回には自分のお気に入りのホラー映画にしようという事で、こちら、
『In the Mouth of Madness(マウス・オブ・マッドネス)』になります!




そこまでマニアックじゃありませんけど!
なんたって監督は、スラッシャー映画の走りとなった『ハロウィン』、特殊メイクの可能性を格段に広げた『遊星からの物体X』などのジョン・カーペンター!!(以下JC)
僕のホラー映画人生において欠かす事の出来ない監督であります。
他にも『ニューヨーク1997』や、『要塞警察』、『ダークスター』、『ザ・フォッグ』、『パラダイム』、『クリスティーン』、『ゴーストハンターズ』(※注意、『バスターズ』じゃない!)、『エスケープ・フロム・LA』、『ヴァンパイア 最後の聖戦』(シリーズ物でもないのに最後の聖戦っていう邦題が凄い!)、『ゴースト・オブ・マーズ』、『ザ・ウォード 監禁病棟』などなど。

一般にはホラー、SFの監督、B級映画監督と思われていますが、『スターマン 愛・宇宙はるかに』(なんだこの邦題!)では、主演のジェフ・ブリッジスにアカデミー主演男優賞ノミネートをもたらしている(受賞はならず!この時は『アマデウス』でサリエリ役だった、F・マーリー・エイブラハムが受賞しております)、反骨精神溢れる名匠であります。

JC

JC映画には幾つかの決まり事というかお約束があります、
1、アウトローっぽい男性が主役の映画が多い
2、音楽はヘビメタ
3、映画の尺は90分程度
4、画面はシネスコ
5、タイトルにジョン・カーペンター`sと付ける(『クリスティーン』に至っては原作者である、あのスティーブン・キングを押しのけてるとこが凄い!)
などです。
他にも西部劇を意識したキャラクターや設定、シーンを好んだり、何故かあまり綺麗な女優を使わない、警察は出てきても使えないか悪い奴な事が多い、ホラー映画が多い割にあまりホラー映画お約束のお色気シーンを撮りたがらない、なんてのもJC流です。


今回のタイトルの基本データですが、
1995年公開のアメリカ映画で、出演は『ジュラシックパーク』や『ピアノ・レッスン』のサム・ニール、『ベン・ハー』の名優チャールトン・ヘストン、『Uボート』、『エアフォース・ワン』のユルゲン・プロホノフ、他にもジェリー・カーメン、デビッド・ワーナーなど。

ストーリーは、
精神に異常をきたしているとしてある施設に収容されている主人公ジョン・トレント(サム・ニール)の元に1人の医師(デビッド・ワーナー)が面会に来るところから始まります。
自分は正常だと訴えるトレントは、収容されるに至る経緯を語り出します。
やり手の保険調査員だったトレントは、出版社の社長(チャールトン・ヘストン)から、行方不明になったホラー小説のベストセラー作家サター・ケイン(ユルゲン・プロホノフ)を探し出すか、または書き上げているはずの新作小説『マウス・オブ・マッドネス』の原稿を見つけて欲しいと依頼される。トレントは出版社の女性社員(ジェリー・カーメン)を伴ってサター・ケインを探しに出発するが、いつの間にか地図にない町ホブに辿り着き、そこで想像を絶する恐怖を味わう事になる。

※ここからガッツリネタバレを含みますので、これから観ようと思っている方はご注意下さい!

ホブの町に辿り着いたトレント達だが、そこで起こる奇怪な出来事がことごとくケインの書いた別の小説『ホブの町の恐怖』にそっくりな事に気付く、そしてついにケインを見つけるトレントだが、ケインから「全ての出来事は私が書いた小説の通り、私が書いた事が現実になるのだ、そう、お前も私が書いたキャラクターに過ぎない」と言われます。
そして新作小説『マウス・オブ・マッドネス』の原稿を渡され、「それを持って帰り出版しろ、それを読んで人類は生まれ変わるのだ」と命令される。
ケインの小説に人を発狂させる力がある事を知ったトレントは何とか出版を阻止しようとするが失敗し、発売された小説『マウス・オブ・マッドネス』は世界中でベストセラーとして大ヒットしてしまう。
読んだ者はことごとく発狂し、殺し合いを始めてしまい、世界は大混乱へと陥ってしまうのだった。何とか阻止しようと考えたトレントは、『マウス・オブ・マッドネス』を読んだ読者を斧で惨殺した為に、異常者として収監されてしまうのでした。
ラストで、トレントは施設を抜け出すが、街には人っ子ひとりいません。
1人で映画館に入ってみると、なんとスクリーンに自分が映っているでわないか!
しかも、本作のオープニングと同じ、医師がトレントに面会に来るシーンが流れている。
そこでトレントはケインの言った通り、自分がケインの書いた物語『マウス・オブ・マッドネス』の登場人物であり、今目の前で流れている映画は小説『マウス・オブ・マッドネス』の映画版であり、小説を読まない人間も映画やビデオの『マウス・オブ・マッドネス』を観て発狂し、既に全人類が発狂したと気付くのだった。
最後、今度こそ完全に発狂したトレントが自分の出ている映画『マウス・オブ・マッドネス』を観ながら笑い狂うところでエンドロールが流れて映画が終わります。
通常あるはずのキャスト、キャラクター名がエンドロールにない、それはこの映画がケインの『マウス・オブ・マッドネス』の映画版だからだ。

初めて映画館でこの映画を観た時の衝撃は忘れられない。
普通、どれだけ面白い映画でも、観終わってしまえば否が応でも現実に引き戻されます。ホラーやSFなら尚更現実に引き戻された感が強くなってしまう。
しかし、この映画は違います!
観終わって映画館を出ると、映画『マウス・オブ・マッドネス』の看板がある。そう、映画の中と同じ様に。
今観た映画こそ、ケインの書いた『マウス・オブ・マッドネス』映画版なのだと思わせてくれる。映画の世界と現実が混ざった感覚を味わう事が出来るのだ!
だから今DVDで見返しても同じ感覚を味わえる。またこうしてケインの書いた物語が世界に広まっているんだなと思わせてくれる。こんな感覚を味わえる映画はそうそうない。
この入れ子型の構成こそ本作最大の魅力だと思います。

また、主人公が体験する悪夢の様な出来事の数々も素晴らしい。すれ違ったはずの自転車に乗った少年が次の瞬間再び前からやってくる、しかも老人になって。ホテルの主人である老婆は自分の旦那を斧で輪切りにしている。一緒に行動していた出版社の女性は、顔が背中に向いた状態で四つん這いで追いかけてくる。
驚く程ショッキングという様なシーンは少ないが、じんわりと来る恐怖演出が続きます。

輪切りにします!


四つん這いで追いかけます!

ちなみに本作は、ラヴクラフトのクトゥルフ神話もモチーフにしています。長くなるのでクトゥルフ神話の詳細は省きますが、ラヴクラフトという作家やその仲間が書いた、太古から地球を征服していた悪魔の様な異形の化け物達『オールド・ワンズ(旧支配者)』の物語を纏めた神話体系の事です。
劇中にクトゥルフ神話を思わせる言葉が登場したり、本作のタイトル『In the Mouth ~』も繋げて発音するとクトゥルフ神話の一編『インスマスの影』に登場する『インスマス』という町の名前になるというネタも仕込まれています。

ネタと言えば、ホラーファンニンマリのキャスティングも。主役のトレント役のサム・ニールは大ヒットオカルトホラーシリーズ3作目の『オーメン3』にて世界征服を目論む悪魔の子ダミアン役を演じてましたが、本作でそのトレントに面会する医師役のデビッド・ワーナーは、『オーメン』の第一作目にて、映画史に残る死に様を見せつけてくれた人です。

『オーメン』のデビッド・ワーナー、あ、首がっ!!

虚構と現実をミックスするというメタ的な構成に唸る、JCの傑作の一つがこの『In the Mouth of Madness(マウス・オブ・マッドネス)』だと思っています。