今回は、井上荒野さんの小説を2冊、ご紹介します。

 

1.「生皮 あるセクシャルハラスメントの光景」は、長編小説。

 

2.「小説家の一日」は、短編小説です。

 

 

2冊読んでわかったのは、

簡単な文章でスラスラ読める小説を書く作家さんだということです。

 

この簡単な文章を、

時代に合っているとするか、物足りないとするかは、みなさんの自由です。

 

どのくらい簡単な文章なのかは、

井上荒野さんの小説をご自身で読んで体験してみてください。

 

 

ちなみに、小学生の頃から図書館で本を借りて読んでいる私には、

物足りなさが目立ちました。

 

そんな私の感想を

「こんな意見の人もいるんだな」くらいの感覚で、読んでいただけたらと思います。

 

よろしくお願いします。

 

 

 

1.「生皮 あるセクシャルハラスメントの光景」

■50代男性へのおすすめ度

★★☆☆☆ ← 好奇心旺盛な50代男性向け

 

「生皮 あるセクシャルハラスメントの光景の表紙

 

 

■あらすじ

内容紹介(「BOOK」データベースより)
動物病院の看護師で、物を書くことが好きな九重咲歩は、

小説講座の人気講師・月島光一から才能の萌芽を認められ、

教室内で特別扱いされていた。
しかし月島による咲歩への執着はエスカレートし、

肉体関係を迫るほどにまで歪んでいくー。
7年後、何人もの受講生を作家デビューさせた月島は

教え子たちから慕われ、マスコミからも注目を浴びはじめるなか、

咲歩はみずからの性被害を告発する決意をする。
なぜセクハラは起きたのか? 

家族たちは事件をいかに受け止めるのか? 

被害者の傷は癒えることがあるのか? 

被害者と加害者、その家族、受講者たち、

さらにはメディア、SNSを巻き込みながら、

性被害をめぐる当事者の生々しい感情と、

ハラスメントが醸成される空気を重層的に活写する、

著者の新たな代表作。

 

著者情報(「BOOK」データベースより)
井上荒野(イノウエアレノ)
1961年生まれ。

89年「わたしのヌレエフ」でフェミナ賞、

2004年『潤一』で島清恋愛文学賞、

08年『切羽へ』で直木賞、

11年『そこへ行くな』で中央公論文芸賞、

16年『赤へ』で柴田錬三郎賞、

18年『その話は今日はやめておきましょう』で織田作之助賞受賞

(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

 

■キーワード

動物病院の看護師、カルチャーセンターの小説講師、生徒、俳句の結社

 

■感想 陳腐だった

この感想は、自分の読書メモを頼りに書いています。

 

このブログをはじめる前、2020年8月に読了したためです。

 


 

井上荒野さんの小説を読んだのは、

本書「生皮 あるセクシャルハラスメントの光景」がはじめて。

 

「生皮 あるセクシャルハラスメントの光景」は、私には陳腐でした。

 

どこかで読んだような話(ストーリー)もあって(含まれていて)、

つまらなかった。

 

登場人物たちが、各々の性や憧れの人への思い込みで行動する・行動した結果が

副題の「あるセクシャルハラスメントの光景」となるのですが、

各々の自我の起こり・発生が稚拙で読み手の私はついて行けませんでした。

 

つまり、

幼稚な行動がアホくさくて「何なのコレ」という感じ・気分になりました。

 

 

文章も淡々としていてつまらないですが、

その分早く読めるというメリットがありました。

 

恋愛経験の少ない登場人物が、自分の我だけで行動した(思い込みによる行動の)

結果が、ハラスメントということでした。

 

取るに足らない、つまらない小説でした。

 

2.「小説家の一日」

■50代男性へのおすすめ度

★★☆☆☆ ← 50代男性にはちょっとって感じ

 

小説家の一日の表紙

 

 

■あらすじ

内容紹介(「BOOK」データベースより)
小説、メモ、日記、レシピ、SNS…

短篇の名手が「書くこと」をテーマに紡いだ豊饒の十作。

 

目次(「BOOK」データベースより)
緑の象のような山々

園田さんのメモ

好好軒の犬

何ひとつ間違っていない

料理指南

つまらない湖

凶暴な気分

名前

小説家の一日

 

■感想 面白い短編もあった

完全に女性向けに書かれた短編集だったので、

「小説家の一日」は50代のおっさんにはつまらないと思います。

 

正直、私はつまらなかったです。

 

結末がないまま終わる短編がほとんどで、

読み手からすると消化不良になります。

 

 

たいして面白い短編でもないし、この先こうなってほしいということもなかった

から、「この短編も読み終えられた」という気持ちにしかならなかった。

 

ただ文章がそこにあるだけ、といった感じでしょうか。

 

そんな気分になりました。

 

毎回結末なく終わるもんだから、

「こういう作風の作家として理解するしかない」と思うことにしました。

 

 

そんな短編の中にも「面白い!」と感じた短編が2編ありました。

 

「料理指南」と「つまらない湖」です。

 

「料理指南」

「料理指南」はとても良かった。

 

「何だ、ちゃんとした短編も書けるじゃないか」という感想です。

 

それまでの短編がつまらなかったので、一息つけたという感じでした。

 

「つまらない湖」

人生のピークが過ぎた女性となった主人公が、

異性とのやりとりに戸惑い、はかない夢を見る短編です。

 

何もないよりはいい!」 まさにこの言葉がしっくりくる短編でした。

 

最後に

「小説家の一日」は、かなり女性よりに片寄った小説(短編集)なので、

男性向きではありません。

 

この短編集に収録されている「凶暴な気分」を読んで私は、

女って、あの女より自分の方が上って思っていないとダメなんだろうか

と感じてしまいました。

 

 

さらに、全体的な感想として

「女って必ず不倫して、その結果、妊娠するものなのだろうか」

と思ってしまいました。

 

そんな話ばっかりの短編集だったから。

 

 

「不倫して妊娠する」それこそが大人の女性へのステップである。

 

井上荒野さんは、

この短編集でこのことを伝えたかったのではないかとの印象を持ちました。

 

■私が気に入った文章

短編集「小説家の一日」から、私がいいなと思った文章をご紹介します。

 

1.甘やかされた娘でいる以外の生きかたが目下のところわからない

結局のところ自分が甘やかされた娘であること、

周囲からもそう思われていることはわかっていた。

でも、甘やかされた娘でいる以外の生きかたが

目下のところわからないので、どうしようもない。

(36ページ)

 

いいですね。

 

甘えて済むならそれでいいじゃないですか。

 

もしかしたら、作者さんの知り合いに

こういう娘さんがいたのかもしれないなと思いました。

 

2.人生いろいろあるけど、ないよりいいよ

「今度、飲もうよ。ふたりだけで」
マンションの前まで来たとき、

新ちゃんはそう言って私の腕をぽんぽんと叩いた。
「人生いろいろあるけど、ないよりいいよ」
うん。私は頷いて車を降りた。

(151ページ)

 

「確かにそうだよな」と思いました。

 

人生いろいろあるけど、ないよりいいよ」この言葉、

長く私の中に残りそうな気がします。

 

 

柔らかな雰囲気の言葉でいいなと思いました。

 

私のお気に入りの言葉になりそうです。

 

「つまらない湖」の感想に、

「何もないよりはいい!」と書きましたが、この言葉から発想しました。

 

.気の利いた持ちもの

岩瀬のほうにも私を女として意識している気配はなかった。

彼は私を、気の利いた持ちもののように看做(みな)している

ふしがあった。~ 中略 ~
それでかまわなかった。

それを言うなら私にとっても彼は気の利いた持ちものだった。
(163ページ)

 

「つまらない湖」の中にでてくる文章です。

 

他人との関係性を「気の利いた持ちもの」と表現するのをはじめてみたけど、

なかなか意味深だなと思いました。

 

 

「あると便利なんですよ」っていう間柄かな。

 

お互い便利に使い合えたらいいけど、

使い勝手が悪くなったらすぐに処分されてしまいそうでイヤですね。

 

4.面倒になると雑な物言いをする人

夫はなかなか戻ってこない。

面倒になると雑な物言いをする人なので、

そのことでさらなる面倒を呼び込むかもしれない。

(234ページ)

 

「面倒になると雑な物言いをする人」という文章を読んでドキッとしました。

 

自分もそうかもしれない。

 

家族にそう思われているかもしれない。

 

 

たぶん、

50代のおっさんならみんな私と同じように思うのではないかと想像します。

 

女の人に心配されているのなら、気を付けないといけないですね。

 

自信ないけど。

 

5.聞かせたがっている言葉

習慣的にツイッターを開いてしまう。 ~ 中略 ~
まったくその通りだと思ったり、笑ったり、

なるほどそういうことかと納得したりしている。

それこそ小説のヒントになりそうなものだが、

なぜかほとんどそうならない。

それはたぶん、それらが「聞かせたがっている言葉」であることと

関係があるのだろう、と海里は思う。
(239ページ)

 

そうかと、腑に落ちました。

 

確かに聞かせたがっていました。

 

 

先日、LiLy(リリイ)さんの

別ればなし TOKYO 2020.」という小説を読みました。

 

 

この小説の登場人物たち(24歳女性)も、ツイッターに頻繁に投稿していました。

 

 

「今どきだからそんなもんかな」と思って読んでいましたが、

ツイッターの発信内容を本で読むこと・小説の文章として読むことに馴染めず、

違和感がずっとありました。

 

そうなんです。

 

「聞かせたがっている言葉」ばかりだったから、

読み手である私の気持ちがのってこなかったんです。

 

キャッチボールがない会話を読んでいると、

どうでもよくなっちゃうものなんですね。

 

やっと気づきました。

 

 

「あんたの言いたいことばっかり聞かされて。うんざりなんだよ」ってことです。

 

「聞かせたがっている言葉」は、いい表現だと思います。

 

 

「どんな小説の中にもいい文章はある。それを紹介する」

というコンセプトで毎回、感想文を書いています。

 

 

今回は、それが上手くできたと思いました。

 

ここまで、50代男性が読むと

「共感できる部分が少ないんじゃないかな」と思われる

井上荒野さんの小説を2冊紹介しました。


このブログが少しでもお役に立ちましたら嬉しいです。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。