■「スプリング」50代男性へのおすすめ度
★★☆☆☆ ← 好奇心旺盛な50代男性向け
■あらすじ
内容紹介(「BOOK」データベースより)
彼は求める。舞台の神を。憎しみと錯覚するほどに。
構想、執筆10年、待望のバレエ小説。
著者情報(「BOOK」データベースより)
恩田 陸(おんだ・りく)
1964年、宮城県出身。小説家。
1992年『六番目の小夜子』でデビュー。
2005年『夜のピクニック』で第26回吉川英治文学新人賞および第2回本屋大賞、
2006年『ユージニア』で第59回日本推理作家協会賞、
2007年『中庭の出来事』で第20回山本周五郎賞、
2017年『蜜蜂と遠雷』で第156回直木三十五賞、第14回本屋大賞を受賞。
■感想
「スプリング」は、
お気に入りのバレエダンサーをこれでもかと、ほめたたえる小説でした。
恩田陸さんの小説は、これまでに5冊読んでいます。
- 蜜蜂と遠雷
- 祝祭と予感
- 鈍色幻視行
- スキマワラシ
- 中庭の出来事
はじめて読んだ「蜜蜂と遠雷」が面白くて夢中になって読んで、
「他の作品も読んでみたい」となって、いっとき続けて読みました。
そして今回の「スプリング」。
正直、私には合いませんでした。
・良かった点
私には合わなかったものの恩田さんが表現し伝えたかった、
「バレエは芸術だ」ということは理解できました。
「バレエは他の分野の芸術と密接な関係にある」という説明やうんちくを、
ストーリーに組込み読者に教えてくれるテクニックは素晴らしいです。
たとえば、お気に入りの小説と音楽で新作バレエを作るとか。
彼がマヌエル・プイグの小説「蜘蛛女のキス」を
アストール・ピアソラの音楽でバレエにした時は、
運よく初演を観ることができた(中略)。
(142ページ)
現代音楽の新作バレエを作って伝統的な劇場で上演するアイデアとか。
今やデューク・エリントンやクイーンまでバレエになっているんだから、
パリのオペラ座はミシェル・ルグラン・バレエを作るべきだよね。
ルイ十四世がミシェル・ルグランを聴いていたら、
絶対バレエにしていたと思う。
(234ページ)
新作バレエ「メルヒェン」を作るときの昔話と童話のうんちくとか。
「メルヘン」ではなく、
あえて古めかしい感じのする呼び名のほうにしたとのこと。
「メルヒェン」は、ドイツでは昔話のことだ。
「ファンタジー」は個人の創作だが、
「メルヒェン」はその土地土地に言い伝えられている話のことを指す。
たとえば、グリム童話はグリム兄弟が聞き書きして集めた昔話なので、
メルヒェンだ。(中略)
昔話や童話というのは、とかく残酷だ。(中略)
グリム童話の初版が残酷描写満載だったということはよく知られている。
(258ページ)
新作バレエ「アサシン」の語源のうんちくとか
アサシン。
すなわち暗殺者を指す言葉の語源には諸説あるが、
ハシシ(大麻)だという説が根強く、
聞いたことがある人もいるかもしれない。
(304ページ)
これらの文章を読んで、
古臭いものと思い込んでいた「バレエ」の見方が変わりました。
「バレエって、他の分野の芸術とこんな風につながっているんだ」
と、結構ためになりました。
恩田さんの文章はこれまで通り、しっかりしていて読みやすかったです。
文章表現が巧みなプロ作家としての
「恩田さんの特徴がとてもよく出ている作品」です。
そういった意味で「スプリング」は、
はじめて恩田作品を読む、という人にはお勧めの本です。
「これが恩田陸さんの小説なのか」と理解できると思います。
ただし、50代以上のおっさんにはお勧めしません。
・悪かった点
内容がボーイズラブ(少なくとも私はそう感じた)。
50代のおっさんに「ボーイズラブ」はかなり厳しいです。
少女マンガの世界観ですからね。
「スプリング」は四章だての小説です。
主人公の名前は「春」(はる)。
春は、中性的な男の子。
一章と二章は、春のことが大好きなストーリーテラー(両方とも男性)が、
春の良いところばかりを思いっきり語ります。
三章では、春の幼なじみの女の子が「春ちゃんは王子さまなの」って語ります。
最後四章は、春が「自分で自分を褒め」語ります。
私なんかは、「どんだけ褒めるんだよ!」って感じになりました。
一方で、
「王子さまキャラが褒めまくられるお話しが大好きな人にはたまらない小説」
だと思います。
「蜜蜂と遠雷」とか、「スキマワラシ」とか、
恩田陸さんの小説の男の子キャラって、結構、王子さまキャラが多いんですよね。
テレビ番組の「あの本、読みました?」で、
「スプリング」を褒めていた人がいたので、気になってはいました。
だけど、全編にわたって「ボーイズラブ」とは、勘弁してほしかった。
以上、「スプリング」の文章が秀逸なので「星2つ」にした良い点と、
ボーイズラブなので50代以上のおっさんにはお勧めしない悪い点の説明でした。
今回は、50代男性にはお勧めできない「スプリング」を紹介しました。
このブログが少しでも小説選びのお役に立ちましたら幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
本書以外にも「恩田陸さんの小説」をブログで紹介しています。
併せて読んでみてください。
【恩田陸さんの小説】

