光石研の主役の映画ですが、ネットの感想などだと定時制高校の教頭となっていますが画面から見えるのは全日制の高校のようで病気で記憶がなくなるボケなのか病名などは出てこず、うどん屋で飯を食いお金を払わずに出てきてしまって教え子の店員が追っかけてきて結局そのとき病気なんだといって払わず去ってしまうのです。
また再度訪れてお金を払ってその際にお礼をしなくっちゃだというと実は店をやめて中洲で働く、月50万の仕事だといいます。ギリシャの何とか島に行きたいからと。
黙ってたから退職金を寄越せということでこの事件がテーマの逃げきれた夢なのかという不思議な緊張感を持ってみさせてしまうお話です。
この事件、口封じに教え子を殺してしまおうというならサスペンスになるし、教え子と変な関係になってしまうのか何が逃げきれた夢なのか見ている人は思うでしょう。
光石研という俳優は一見いい人でサスペンスなどでも最後に悪い面を見せて実は悪役という設定もありますが、悪の首魁というには迫力も格もなく、映画めがねの宿のオーナーみたいな人畜無害な添え物的役がお決まりです。そんな脇役の役者がありのままの今の姿で演じたのがこの作品で、同じく北九州出身の松重豊と博多弁でのやり取りなど存分にその演技を見せます。
教頭ということで端から見れば一応成功して人生を終えるだけのようですが、帰ってもうちに居所がなく夫婦の関係も形だけで愛もなく、親友との関係も本音で向き合えるものでもない。そんな状況で人生の幕引きを迎える今を浮かびあげているのです。
結局逃げきれた夢は人生そのものだったのです。振り返ったらなにもない寄り添ってくれる人もない。ダメな教師で誰も救えなかったそんな自分でも教え子に正直に後悔ないよう生きろと言葉を掛けそれが自分の経験と学びから得られたものと見ている人に訴えてくる。そしてお前が海外に行くなんて思ってないという辺りもそうだよなと共感させ物語は終わります。それぞれの人生で逃げきれた夢があるだろうそんな気にさせてくれる映画です。
ただ、私の年齢はこの人生が黄昏る同じ境遇のなかで見るとああそうかとすまされないものがあり、これから来る老後とは健康とはそんな簡単なもんじゃないだろうと思ってしまいます。まあ光石研の演技は妥当だとしても。