先週末の土曜日、私は一年ぶりに中学時代の友人と飲み明かしていた。
出発前に「何時ころ帰ってくるんだよ?!」の問いには「電車のあるうちには帰ってきます」と答えてはみたが、実際には始発もありえるだろうと、そんな覚悟もあった。
二十代中盤のころは、毎週のように朝まで飲み明かしていた友人たちだった。
この日集まったのは私を含めた5名で、個別にはフットサルなどや、友人のキックボクシングの試合で顔をあわせてはいたが、集まっての飲み会というと1年以上は経過していた。このため「何時に帰ってくるんだ?」と聞かれても、どんな飲み会になるのか、どんな話題が展開されるのか、帰りは何時くらいになるのか、まったく予測不能だというのが、私の率直な思いだった。
久しぶりに集まった5人、とはいえ、もう十数年もの付き合いにある友人たちなので、
久しぶりに会っても話題に事欠くことはない。
なんだかよく分からないが、テンションは高め、誰かがボケれば誰かが突っ込む。
中学時代から性欲の塊だったやつは、三十路を過ぎてもやはり性欲の塊で、
ビールを5杯ほど飲んですっかり陽気になった結果、全然関係のない席に座っている女性に目線でアプローチし、なぜか単独でナンパを敢行し始める。
1年前に結婚・出産を経て、すっかり「母ちゃん」と化した女友達は、「いい加減落ち着けよ」と説教を始める。
場は盛り下がることを知らず、「今日は終電間に合わないかな・・・」と半ば覚悟しかけたそのときだった・・・
「ブルブル・・・ブルブル・・・」
うん?携帯が鳴ってる。妻だ。
普段何かあっても大抵の連絡手段はメールを選ぶ。わざわざ電話してくることはそうそうない。
なんかあったのか、頭に疑問符を浮かべ、携帯を手にして通話ボタンを押した。
「早く帰ってきて・・・」
ローソクの消えかかった火のような、か細い声だった。
「えっ?」
基本的に最終電車で帰ってくることを強要する妻ではあったが、飲みには多少の理解がある妻が、当日にそのような電話をしてくることは珍しい・・・
「早く帰ってきて・・・」
もう一度言い、「大変なことが起こった・・・」
相変わらず聞き取るのも大変な小さな声でボソボソと囁いた。
「む、虫が・・・」
虫嫌いなのは知ってるが、飲み会中の旦那を呼び戻すほどの虫なんているのか・・・
「えっ?」
私の口から発せられたその言葉には、若干の怒りと疑惑が込められていた筈だ。
「虫なんだけど、これは最早虫じゃない。虫の域を逸脱している!」
その動揺ぶりは普段のドS妻のそれとは大きく違っていた。
これ以上電話で話してもこれは帰らざるを得ないだろう・・・
私はあっさりと諦めて、友人たちにその旨を伝えた。
「なんか、虫が出たらしいので帰ります」
もちろん、「はぁー」の嵐だ。私が逆に見送る側の立場であったら、同じように言うだろう。
「虫なんか自分でどうにかできるだろう!」と。
電車からタクシーに乗り継ぎ、慌てて家を目指した。
途中で「帰りにローソンのツインシュー買ってくるよ」と約束していたのを思い出し、ローソンの前でタクシーを止め、ローソンから家までは走ることにした。
「ただいまー」とドアを開けたとき、家の中は既に格闘が行われたあとのような状況だった。
妻はリビングに置いてあった動かせる家具を、すべてキッチンへ移動させ、キッチンからリビングへの扉を残して完全にリビングを封鎖。そして残された扉の前に椅子を置き、その椅子の上からリビングを見渡していた。高い位置からその虫を見失わないようにしていたらしい。
「敵はリビングにあり」
私はすぐに察知した。
「く、蜘蛛・・・いやあれはもう蜘蛛と呼べるレベルじゃない!」
涙目になった妻が訴えるようにそう言った。
妻をここまで震え上がらせた蜘蛛、確かに私の想像をはるかに超えるサイズだった・・・
その蜘蛛の写真を妻が残していた。せっかくなのでここにアップしよう・・・
この夜、妻VS蜘蛛の武勇伝を、夜中の2時まで聞かされることになるのだった・・・
出発前に「何時ころ帰ってくるんだよ?!」の問いには「電車のあるうちには帰ってきます」と答えてはみたが、実際には始発もありえるだろうと、そんな覚悟もあった。
二十代中盤のころは、毎週のように朝まで飲み明かしていた友人たちだった。
この日集まったのは私を含めた5名で、個別にはフットサルなどや、友人のキックボクシングの試合で顔をあわせてはいたが、集まっての飲み会というと1年以上は経過していた。このため「何時に帰ってくるんだ?」と聞かれても、どんな飲み会になるのか、どんな話題が展開されるのか、帰りは何時くらいになるのか、まったく予測不能だというのが、私の率直な思いだった。
久しぶりに集まった5人、とはいえ、もう十数年もの付き合いにある友人たちなので、
久しぶりに会っても話題に事欠くことはない。
なんだかよく分からないが、テンションは高め、誰かがボケれば誰かが突っ込む。
中学時代から性欲の塊だったやつは、三十路を過ぎてもやはり性欲の塊で、
ビールを5杯ほど飲んですっかり陽気になった結果、全然関係のない席に座っている女性に目線でアプローチし、なぜか単独でナンパを敢行し始める。
1年前に結婚・出産を経て、すっかり「母ちゃん」と化した女友達は、「いい加減落ち着けよ」と説教を始める。
場は盛り下がることを知らず、「今日は終電間に合わないかな・・・」と半ば覚悟しかけたそのときだった・・・
「ブルブル・・・ブルブル・・・」
うん?携帯が鳴ってる。妻だ。
普段何かあっても大抵の連絡手段はメールを選ぶ。わざわざ電話してくることはそうそうない。
なんかあったのか、頭に疑問符を浮かべ、携帯を手にして通話ボタンを押した。
「早く帰ってきて・・・」
ローソクの消えかかった火のような、か細い声だった。
「えっ?」
基本的に最終電車で帰ってくることを強要する妻ではあったが、飲みには多少の理解がある妻が、当日にそのような電話をしてくることは珍しい・・・
「早く帰ってきて・・・」
もう一度言い、「大変なことが起こった・・・」
相変わらず聞き取るのも大変な小さな声でボソボソと囁いた。
「む、虫が・・・」
虫嫌いなのは知ってるが、飲み会中の旦那を呼び戻すほどの虫なんているのか・・・
「えっ?」
私の口から発せられたその言葉には、若干の怒りと疑惑が込められていた筈だ。
「虫なんだけど、これは最早虫じゃない。虫の域を逸脱している!」
その動揺ぶりは普段のドS妻のそれとは大きく違っていた。
これ以上電話で話してもこれは帰らざるを得ないだろう・・・
私はあっさりと諦めて、友人たちにその旨を伝えた。
「なんか、虫が出たらしいので帰ります」
もちろん、「はぁー」の嵐だ。私が逆に見送る側の立場であったら、同じように言うだろう。
「虫なんか自分でどうにかできるだろう!」と。
電車からタクシーに乗り継ぎ、慌てて家を目指した。
途中で「帰りにローソンのツインシュー買ってくるよ」と約束していたのを思い出し、ローソンの前でタクシーを止め、ローソンから家までは走ることにした。
「ただいまー」とドアを開けたとき、家の中は既に格闘が行われたあとのような状況だった。
妻はリビングに置いてあった動かせる家具を、すべてキッチンへ移動させ、キッチンからリビングへの扉を残して完全にリビングを封鎖。そして残された扉の前に椅子を置き、その椅子の上からリビングを見渡していた。高い位置からその虫を見失わないようにしていたらしい。
「敵はリビングにあり」
私はすぐに察知した。
「く、蜘蛛・・・いやあれはもう蜘蛛と呼べるレベルじゃない!」
涙目になった妻が訴えるようにそう言った。
妻をここまで震え上がらせた蜘蛛、確かに私の想像をはるかに超えるサイズだった・・・
その蜘蛛の写真を妻が残していた。せっかくなのでここにアップしよう・・・
この夜、妻VS蜘蛛の武勇伝を、夜中の2時まで聞かされることになるのだった・・・