Woody Shaw / "With Tone Jansa Quartet" | Pockets Full of Good Intention

Woody Shaw / "With Tone Jansa Quartet"

 

 

 

 

 

 

それは良く晴れた日だった

向こうの通りに

変わった歩き方の男が見えて

10メートル先にいる

「なに、そのうち僕も」

なりふり構わないはずだったが

人よりも目立って見えた男から

目をそらした

 

 

 

 

 

 

 

あの男の歩き方

それは安寧の解体だった

シナプスの過剰反応であり

マグニチュードを持った

固い意志の揺さぶりだった

大いなる価値と

加護の傘のもとに

少なくとも僕は

生きているはずだった

 

 

 

 

 

 

 

変わったこと?

思いつかないでもなかった

変わった歩き方の男は

もうすぐ近くまできていた

すれ違うまでに

答えが必要だった

何か答えはないか

速足をこらえ

二毛の時を感じる

 

 

 

 

 

 

 

刹那に

はたと

倒れる音がした

僕の耳から先に入って

男の耳を音がかすめた

地面が回っている

どうやら

少し遅かったようだった

 

 

 

 

 

 

 

 

男は僕の横にうつぶせになって

本を読んでいるらしかった

ジョージ・オーウェル

と書かれたピンクの表紙に

鮮やかな豚の笑い声

悔しいが

彼の勝ちであることは明白だった

 

 

 

 

 

 

 

転がった本の山に

積みあがったレコード

11月のよく晴れた日に

折れ曲がった足跡がつく

あの男は

今は僕の横にいる

知らない人だと思ったら

そっくりな目鼻立ちだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジャズばかり聞いているのには訳があって

きっと我儘なあなたに会いたい

その一心なのかもしれない

前進と混迷の苦々しい痕

僕がウディショウのトランペットを

無条件に愛する理由がそこにある

 

 

 

 

 

 

 

一気に通り過ぎた音塊は

"Call Mobility"へと雪崩れ込む

放り投げてしまうことの

無情を彼は良く知っている

叩きつける音の理にかなったこと

何か手に取らずにはいられず

あたりを手探りして

触れたものは

さて