Eddie Reader / "Sings The Songs of Robert Burns" | Pockets Full of Good Intention

Eddie Reader / "Sings The Songs of Robert Burns"





人の優しさが身に沁みる時は

決まってどこかに軋みが出ている

先日も風邪をひいたと思ったら

妙に親切な人ばかりが周りにいて

その顔達は毎日見ているのだけど

特別な優しさを感じたことなどなかったのだ







ありがとう、と受け取ればいいものを

ついつい、大丈夫です、と断る

断られた方も疑り深く

本当に?

ときたものだから

その親切に甘えておきます、と

妙に浮いた答え方をする

そうそう、それで良し、と先方の顔

どうも目の向けどころが定まらなくて

何度もペットボトルに口をつけていた







ふと

自分は誰かの軋みに

あんなふうに気取らずに

さっと油をさせているのかと思うと

妙に恥ずかしくなってくる

キィキィ鳴る自分の体が

惨めに思えてきたりする

自分のメンテナンスの仕方も知らずに

他人に油を差そう

と考えることを

世間ではおごりと言うのだろう






スーパーのレジ

ハキハキと目を見てお釣りを渡される

たまには挨拶も必要だろうと

会釈をしながらありがとう

と空気に撒いてみる

ちょっとした優しさの恩返しが

返ってくるならばそれで良い

風邪薬のあの苦みもまた

同じように体に沁みるようだった





Sings the Songs of Robert Burns/Compass Records





エディ・リーダーの声が

妙に恋しくなるのがこの季節だと思う

葉っぱが色付きはじめて

空気がしん、と冷たくなって

光がぼんやりと綺麗で

月が奥まって見える頃

彼女の歌が聴きたくなる






フェアーグラウンド・アトラクションで

繊細で優美で弾けたポップスを

歌っていた彼女

ここではスコットランドのトラッドを素材に

自由にどんどん羽ばたいていく

1曲目の"Jamie Come Try Me"

一体どこまで翔んでいくのだろう、という

感情の広がりが素晴らしい

とても雄大な音楽だと思う







それぞれにケルトの旋律が顔を出し

随所にストリングスが散りばめられる

一歩間違えれば企画のみが鼻につくものだが

エディ・リーダーの解釈が素晴らしいのだろう

全てが一級品の音楽だし

彼女のベストソロに挙げても良いぐらい

歌唱も吹っ切れていると思う







古びたウィスキーの瓶のようで

リズムも楽し気な

"Charlie is My Darling"もとても良い

最後は"蛍の光"なのだが

お馴染みのあの旋律ではない

でもより郷愁が感じられるのはなぜだろう

歌とどこかの風景が重なって

胸が感情で一杯になるのは

なぜだろう