7920円で大発奮 川﨑春花-圧巻V

<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

 JLPGAツアー2024シーズン第19戦『ミネベアミツミ レディス 北海道新聞カップ』(賞金総額1億円、優勝賞金1,800万円)大会最終日が7月7日、北海道札幌市・真駒内カントリークラブ 空沼コース(6,667ヤード/パー72)で行われ、川﨑春花が通算18アンダーのトーナメントレコードで圧勝。ツアー通算3勝目を飾った。4打差の通算14アンダー、2位は櫻井心那、尾関彩美悠が通算13アンダーの3位。94期生がトップ3を独占した。
(天候:曇り 気温:20.7℃ 風速:2.2m/s)
《グリーン=スティンプ:11 1/2フィート コンパクション:23.5mm》

 

 川﨑春花は「長かった」といい、フーッと大きなため息をついた。張りつめていた緊張をとき、満面の笑顔がもどる。22年NOBUTA GROUPマスターズGCレディース以来、1年7カ月ぶりのJLPGAツアー通算3勝目を圧勝で飾った。

 

 ウイニングパットを決めても、なかなか表情が変わらない。「うれしいなぁ、思った程度です。もし、優勝したら涙が流れてくるとは思っていたけど、きょうは一生懸命すぎた。やっと、勝てました、そんな気持ちです」と振り返った。

 

 この日もテーマは、「目前に集中」。外見ではまったくわからなかったが、「同級生には負けたくない。だけど、感情を出してしまったらうまくはいかない。ひたすら、抑えていた」という。ところが、「序盤は心がザワザワしていた」。第3日まで、抜群の安定感でノーボギーラウンドを続けていたが、1番で3パットのボギーを叩く。早々とツアー史上2人目の4日間大会ノーボギーの大記録は、あっさりと立ち消えてしまう。

 

 ようやく、腹がすわったのはパー3の5番。6Iでピン2メートルへ運び、初のバーディーを奪う。うまさと、しぶとさを兼ね備えたスタイル。微妙なパーセーブも次々と決めていく。3週前から変更したクロスハンドスタイルで、いい仕事をしてみせた。

 

 前半2バーディー、そして後半でも数少ないチャンスをモノにして、櫻井心那、尾関彩美悠の追撃を許さない。決定打は17番。「特に集中して打てた」と絶賛し、3メートルのバーディーパットも鮮やかにカップインさせた。4打差は圧巻である。


<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

 実は、発奮材料があった。今大会は初出場。資生堂 レディスが終わって、そのまま移動した。コース未経験のため、1日早朝から練習ラウンドのスケジュールを立てた。しかし、空港で-。「通常は宅急便を使う。でも、荷物とキャディーバッグをカウンターで預けたら重量超過で、7920円のオーバーチャージでした。私にとっては、大金です。資生堂 レディスは成績がいまひとつだったし、しっかり頑張ろうと気合が入った」と舞台裏を明かす。しかも、大まじめな口調で・・・。終わってみれば、優勝賞金1800万円を手中にしたのだから、なかなかの勝負師だ。

 

 とはいえ、この日を迎えるために苦悩、苦闘の連続。「ゴルフを続けていけなるかもしれない。ダメになってしまう。何をやってもうまくいかない。ショットがどこへ飛んでいくかもわからない。コースへ行くだけで気が滅入ってしまった。クラブを振ることさえ、怖かったです」と、負の連鎖に見舞わた。

 

 しかし、「このまま、終わることだけはイヤだった」の一念で、誰にも頼らず、自身でスイング改造を行いながら、三度目の栄光を手にする。不振に陥るとクラブを変更するのが、通常のセオリーだが、「優勝した時のセッティングは替えない」ことが矜持。唯一、パターだけを、替えただけだ。信念は揺るがない。

 

 3勝はすべて4日間大会。「スタミナには自信がないです」といい、ブヨに4カ所刺されても、「歩いていると、ズキズキしていた」ものの、まったく表情が変わることはなかった。両親の見守る前で、ようやく完全復活をアピール。「きょうはミスショットが多かったから、また課題がみつかりました」とも語った。プロフェッショナルの言葉だ。

 

以下、各選手のコメント

櫻井 心那<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

櫻井 心那(2位:-14)
 「試合の運び方としては12番までで自分に苛立ってしまう悔しいところはありました。13、14番で立て直して連続バーディーを獲れたのは、戻ってきたという感じでした。 15番でバンカーへ入れましたが、3メートルぐらいのパーパットを決められて、そういうところも良かった時の感覚というか、4打差ですけど優勝争いしている感覚があって良かったです。
 負けてしまいましたけど、いい成績で終われて、すこしホッとしている部分と後半戦も戦っていけるという自信、確信になりました」


尾関 彩美悠<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

尾関 彩美悠(3位:-13)
 「きょうはパッティングの、読みが合っていなかった。決めたい時のパッティングが全然入らなくて、絶対入れないといけないパッティングも入らなかった。そこがもったいなかったです。一番もったいなかったのは15番ですね。
 (前半戦は)安定はしていたので、そこは去年に比べて成長していると思いました。あとはしっかり優勝争いで勝てるようになりたい」


河本 結<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

河本 結(6位タイ:-10)
 「きょうは、当初から決めていた通り、気合を入れるためにノースリーブでプレー。袖がないと、気持ちよくスイングができる。一日を通して、いいプレーができたと思います。唯一、残念だったのは18番で、絶対に避けなくてはならない左手前のバンカーへ入れてしまったこと。
 今大会の反省は第3日ですね。なかなか流れがこなくて、スコアを落とさなかったのは幸いでした。ただ、そういう時でもよい流れを引き寄せ、2つ、3つとスコアを伸ばせないと優勝に手が届かない。理想とする、いつも60台をマークする理想へ向けて努力するしか手がありませんね」

 

申 ジエ<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

申 ジエ(9位タイ:-8)
 「3試合連戦で体力がもつか、ちょっと心配でした。でも、北海道は気候が涼しく快適。4日間アンダーパーを続けることができたし、満足です。きょうのベストショットは10番の第2打。12ヤードを60度でチップインバーディーです。ギャラリーの皆さんに、いいプレーを披露できました」


菅 楓華<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

菅 楓華(18位タイ:-6)※ベストルーキー賞獲得
 「4日間通してショットが安定していました。もっとパッティングが入っていれば上にいけたでしょう。パッティングもそうですが、アプローチもミスが多かったので、次戦までにしっかり調整して準備をしていきたい。
 きょう、順位を見てベストルーキー賞があるのは知っていました。意識してしまうとプレーに集中出来ないと思ったので、あまり意識せずに回りました。すごくうれしい」


桑木 志帆<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

桑木 志帆(24位タイ:-4)
 「優勝後のトーナメント。去年の感じから予選を通過することにも自信がなかったから、精いっぱいプレーしたと思います。今季の前半戦、目標のツアー初優勝を達成することができた。後半戦は優勝争いの回数を、もっと増やしたい。そうなれば、複数回優勝が視界に入ってくるでしょう。次週のオープンウィークはスポンサーへ優勝報告をして、ディズニーシーで気分転換してきます」


都 玲華<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

都 玲華(36位タイ:-2)※ベストアマチュア賞獲得
 「4日間通してショットが良かったのですが、きょうはそんなに良くない方でした。ですが、アンダーパーで回れたのは良かったです。第4日になるとショットが崩れがちという悪い癖が出てしまう。そこを何とかクリアしたかった。将来、プロになって4日間戦うためには、まだまだという感じ。次年はプロとして戦えるように頑張りたい」