桑木志帆、精神面の成長でツアー初Vを呼び込む

<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

 JLPGAツアー2024シーズン第18戦『資生堂 レディスオープン』(賞金総額1億2000万円/優勝賞金2160万円)大会最終日が6月30日、神奈川県横浜市・戸塚カントリー倶楽部西コース(6697ヤード/パー72)で行われた。桑木志帆が通算11アンダーでツアー初優勝を飾る。2打差の通算9アンダー、2位に堀琴音。通算8アンダー、3位に原英莉花。
(天候:曇り 気温:27.6℃ 風速:7.3m/s)
《グリーン=スティンプ:11 1/2フィート コンパクション:23mm》

 

 昨年の今大会で敗れたときは号泣していた桑木志帆が、今年の大会では見事に嬉し涙に変えた。首位の堀琴音と1打差でスタートした最終日、7752人のギャラリーが入ったこともあり、朝から一種独特の緊迫したムードが会場内を漂っていた。「スタートの2ホールぐらいは緊張感がありました」。しかし、その2ホールをパーセーブしたことで徐々に気持ちが落ち着いていく。堀に1打ビハインドで迎えた9番パー4では、13メートルのバーディーパットを決めると、堀がボギーを叩いたことで逆転。反対に1打リードで後半の9ホールに突入した。

 

 自然を相手に広大な敷地で戦うゴルフの特性かもしれないが、勝つためには実力だけでなく、運も大事な要素となる。この日の桑木には幸運の女神が微笑むシーンが2回あった。まずは、12番パー4でのティーショットだ。ボールは右の林に向かって一直線に飛んでいく。「打った直後は完全にアウトだと思い、ダブルボギーを覚悟しました」。ところが、ボールは木に当たってフェアウェイに戻る。ダブルボギーどころか、そこから第2打をピン左6メートルにつけてバーディーを奪った。

 

 幸運は終わらない。続く15番パー4では、ティーショットを左に曲げる。「きのうも同じ様なボールを打ち、つま先下がりのライから打ったんです」。難しいライから長い距離を打つのかと覚悟した瞬間、ボールはカート道路を跳ねて50ヤードほど前方へ。ラフだったが、平らに近いライだったこともあり、しっかりとグリーンをとらえた。


<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

 「どちらもラッキーでしたね」と、笑顔で振り返った桑木だが、弱気な人間に幸運の女神はそう簡単に微笑んではくれない。昨年の反省を生かし、常に前向きな気持ちで戦い抜いたからこそ、微笑んでくれたのではないか。聞けば、ラウンド中は昨年の自分と比べていたという。

 

 「昨年はこういう場面ではマイナス思考になっていたなと。例えば、ボギーを叩いたらバーディーを取らなきゃという気持ちになり、それが焦りに変わり、どんどん悪い流れになっていました」。それを払拭しようとラウンドしていたが、最後の最後で試されるようなシーンが登場する。18番パー4でのアプローチだ。1打リードで迎えたこのホール、2打目がグリーン左サイドのラフにつかまる。ピンまでは12ヤード。左足上がりのライだ。昨年の桑木なら安全に寄せようと思ったが、今年は違った。

 

 「セーフティーにいったら負けると思ったので、チップインして引き離すぞというメンタルで打ちました」。その結果、ボールはピンを50センチオーバーしたところで止まり、それを沈めて、桑木のリベンジ劇が終了した。

 

 「今年に入って初優勝を飾る方を見て悔しかったですし、優勝争いに絡めない試合が続いた時期も辛かったですね」。周囲からの期待が大きい分、それに応え切れない自分にイライラも募った。しかし、今回の優勝でその呪縛からもようやく解放された。次の目標を聞かれると、迷うことなく、「2勝目です!」と言い切った桑木。その目標はすぐに達成するかもしれない。

 


<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

以下、各選手のコメント

堀琴音<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

堀 琴音(2位:-9)
 「最終日、ちょっと情けなかったですね。風のミスジャッジ、アイアンショットで距離感がいまひとつ…。ひと工夫すれば、何とかなった。残念です。振り返ると、朝から緊張しっぱなし。ただ、ガチガチというわけではなく、いい意味で適度の、でした。だから、プレーを楽しみながらできたと思う。
 ホールアウトしてから、悔しさがこみあげてきたけど、去年のことを考えれば優勝争いができたことをプラスに考えたい。自信を失っていたからです。この感じなら、通算3勝目をしたい、ではなく、できると感じました。
 桑木さんは一日を通して、素晴らしいプレー。飛距離が出るし、パッティングもうまい。特にきょうはスキがなかった」


小祝さくら<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

小祝 さくら(4位タイ:-7)
 「きょうは肝心の調子がいまひとつ。前半、グリーンを狙うショットの精度がさっぱりです。その中でも後半は、粘りのプレーを展開できた。
 ちょっと悔しい結果でしたけど、次週はディフェンディングチャンピオンとして迎える、地元の北海道大会。気持ちを切り替えて、精いっぱいプレーします。
 桑木さんは本当に素晴らしい。16番のバーディーなど、大接戦の状況で勝負強さを発揮した。おめでとうございます」


小滝水音<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

小滝 水音(4位タイ:-7)
 「欲をいうと、スコアをもう少し伸ばしたかった。しかし、とにかく強風が…。というわけで、地道なプレーを心がけた。今大会は久しぶりにアプローチ、パッティング、バンカーショットがすごく良く、他でもフェアウェイキープ率が上昇。ようやく、戦える状態が整った。
 次週は好きな洋芝でプレーできる。アイアンショットは、きっちりとクラブフェースが入らないとナイスショットにならない。そんなところが魅力です。ただし、コースは難しい。各日、アンダーパーを目標にして上位を狙います」


安田祐香<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

安田 祐香(4位タイ:-7)
 「今まで最終日にいいゴルフをしても10位、20位で終わっていたのが、こうやって2週連続トップ5に入ったのは、ショートゲームが圧倒的にいいからです。次週は洋芝での戦いになりますが、私はあまり打ち込むタイプではなく、ウッド系が上手く打てるかどうかがカギを握ると思います。それでも、しっかりとコースを攻略して、チャンスがあれば優勝を目指したいです」

天本ハルカ<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

天本 ハルカ(4位タイ:-7)
 「けさはショットの感触がいまひとつ。しばらく様子を見ながら-の状況が続いた。それでも、ボギーになりそうなピンチを回避。いい内容だったと思います。風が強く、タフなコンディションでしたけど、こういう時、迷いは禁物。しっかりジャッジを行い、その通りにプレーしたことが良かったのでしょうね。
 次週は去年、ここはもうお手上げと思い知らされたコース。これから移動して、あすから練習ラウンドをしっかり行い、対策を練る。新たな挑戦を楽しみにしている」


川岸史果<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

川岸 史果(8位タイ:-6)
 「風がいろいろな方向から吹き付け、難しいコンディションでした。特にフォローの風がやっかい。ただ、前日と比較して、1Wの調子が良かった。パッティングもまずまずだったかなぁ。
 それだけに16、17番が悔しい。とりわけ17番はフライヤーでグリーン奥へ外して、2.5メートルのボギーパットを入れたから、内容としてはそれほど悪くはなかったけど、第2打が悔やまれる。
 きょうは自宅でゆっくりして気分を切り替え、あす北海道へ行く。次週、また上位争いを必ず-」


新海美優<Photo:大会提供>

 

新海 美優(10位タイ:-5)※14番ホールインワン=賞金100万円
 「ホールインワンは8Iで打ちました。カップ手前、50センチ手前へキャリーで、ボールが消えて…。とてもいい感じと思って、後ろを振り返ったら賞金100万円のボードが目に入って、イェーイです。
 ショットの前、たまたまキャディーさんへ風の方向を確かめ、感じる風でいい、とアドバイスを受け、それを信じて…。距離もピッタリだった。また、スコアラーさんが今年、これで3回目のホールインワンだそうです。福男さんの見えないバックアップもありました。
 エースはプライベートで1回あったけど、試合では今回が初めて。いただいた賞金で記念に家具を買おうかなぁ。今季はパッティングがいまひとつでした。でも、3試合前から、だんだんタッチが合ってきてバーディーをとれるようになっている。迷いを吹っ切り、次週はもっと自信をもっていきたい、と思います」


荒木優奈<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

荒木 優奈(10位タイ:-5)※ベストアマチュア
 「JLPGAツアーで、はじめての優勝争い。スタートホールではすごく緊張したけど、たくさんのギャラリーさんから、励ましの言葉、歓声もすごい。楽しく貴重な経験ができました」