持ち球変更は大成功 大里桃子が3年ぶりのツアー3勝目

<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

 JLPGAツアー2024シーズン第15戦『宮里藍サントリーレディスオープンゴルフトーナメント』(賞金総額1億5000万円/優勝賞金2700万円)大会最終日が6月9日、兵庫県神戸市・六甲国際ゴルフ倶楽部(6526ヤード/パー72)で行われ、大里桃子が通算12アンダーで、3年ぶりのJLPGAツアー3勝目をあげた。2打差の通算10アンダー、2位に山下美夢有。通算9アンダー、3位タイに吉本ひかる、内田ことこ。
(天候:曇り時々雨 気温:20.7℃ 風速:4.1m/s)
《グリーン=スティンプ:13フィート コンパクション:23.5mm》

 

 ラウンド中はとにかく集中力を切らせたくないと思っていたこともあり、厳しい表情が多かった大里桃子だが、最終18番パー4で約2メートルのウイニングパットを沈めた後、ようやく笑顔を見せた。「本当はガッツポーズしたかったんですけど、ホッとした気持ちの方が強くて出せませんでした。それがちょっと悔しいですね」。久々に初日から優勝争いに絡んだことで、身体的にはもちろん、精神的にも疲労が蓄積していたのだろう。実際、大里にとっては最後まで気の抜けない72ホールだった。

 

 最終日を首位と1打差の2位タイでスタートしたものの、3番パー3でボギーを叩く。左サイドに立っていたピンを積極的に狙ったが、左に引っかけてしまい、難しいアプローチを残したことが原因だった。それでも、この日は逃げないことをテーマにしており、ボギーをマイナスに考えたりはしなかった。続く4番パー5でバーディー奪い、バウンスバックできたことが、それを証明している。

 

 その攻めの姿勢を最後まで貫き通したからこそ、通算12アンダーまでスコアを伸ばして優勝したわけだが、技術的な裏付けがなければ攻めることはできない。今回、大里に安心感を与えていたのがドライバーショットだ。元々アイアンショットには自信を持っていたが、昨年はパーオン率が65.7912パーセント(60位)と不振だった。ティーショットがラフに入ることが多く、フェアウェイから打つ機会が少なかったからだ。ところが、フェアウェイをとらえる確率が上がったことで、パーオン率が72.1553パーセント(6位)と一気に上がっている。

 

 「昨年夏から球筋をフェードボールに変えたことが幸いしました」。8月末の日本女子オープン最終予選で試しに打ったフェードボールが思いがけないほどいいショットだったことが、球筋を変えるきっかけとなった。その後はスイングにおける体の使い方を変えたことで、さらに安定したショットを打てるようになった。QTファイナルステージで5位となり、今季前半戦の出場権を得たが、「もしも夏にフェードを打たなかったら、今回の優勝どころか、今年は試合に出場できなかったかもしれません」とまで言い切る。


<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

 18年に初シードを獲得し、昨年までシード選手として5年間戦ってきた大里。その間、2度の優勝を飾ったが、昨年ついにシード権を手放した。「最近はどんどん若い選手が上に来るので、その分、自分がシード圏内から追い出された感じです」と振り返る。ただ、前週のヨネックスレディスで新垣比菜が優勝したり、全米女子オープンで渋野日向子が2位となったことで、まだまだ下の世代には負けないぞという気持ちにもなった。

 

 これで大里の98年世代は今季5勝目、JLPGAツアー通算48勝目となった。今大会優勝者と2位の選手には全英女子オープンの出場権が与えられるが(出場資格保持者は除くため、その際は順位が繰り下がる)、大里と吉本ひかるが獲得した。小祝さくらも、今大会終了時のメルセデス・ランキング上位3名に与えられる同大会出場権を獲得。ぜひ海外メジャーでも黄金世代が鎬を削ってほしいものだ。

 

以下、各選手のコメント

吉本ひかる<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

吉本 ひかる(3位タイ:-9)
 「この3日間、インコースでスコアを伸ばせない。だから、気合が入った。ただ、残り3ホールは集中力を高めるため、スコアボードを見ないでプレー。(その結果、全英女子オープン出場権獲得)今年はセントアンドリュースで開催するから、出場してみたいと思っていた。メジャーは初めて。世界で戦い、今の私のレベルがどのぐらいか、それを知りたい」


内田ことこ<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

内田 ことこ(3位タイ:-9)
 「とても良い緊張感。たくさんの収穫があった。前週まで練習を続けていても、結果につながらない。やる気にもつながらなかった。それだけに、今大会の成績でまた、努力を続けていこうという気持ちになっています。
 全英女子オープン出場権をとりたい、という意識があった。最終ホール、バーディーパットを決めて終わりたかったです」


蛭田みな美<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

蛭田 みな美(5位:-7)
 「最終日、スコアを伸ばすことができて、とてもうれしい。ただ、すべてを出し尽くしたかといえば、ちょっと物足りない。第1打の精度が安定せず、ちょっと修正が必要です」


河本結<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

河本 結(6位タイ:-6)
 「6位タイだとまだ優勝争いをしたとはいえないので、次戦となるニチレイレディスではトップ3に入っていけるように頑張りたいです。ただ、コース的にはそれほど広くないので、ドライバーショットの精度をあげるように練習しておきます。優勝争いするためにも、初日から3日間60台を出せるといいですね」


岩井千怜<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

岩井 千怜(6位タイ:-6)
 「いいスタートを切ることができました。ただ、グリーンが日増しに硬くなっていたし、バーディーチャンスをつくることが難しい。いいショットを打っても、ラインやピンポジションが…。
 それでもディフェンディングチャンピオンとして迎えた今大会は、とても楽しかった。ただ、振り返ってみると悔しい方が多かったかなぁ。だけど、次週へつながったプレーができたと感じます。
 全英女子オープンの出場権を獲得できた。もちろん、挑戦するからには上位争いが目標です。今年はトップ5を目指して-」

 

小祝さくら<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

小祝 さくら(13位タイ:-5)
 「1W、きょうは結構、いい感じでした。またアイアンショットも安定していたと思います。大きなミスがなかったから、悪い感触はなかった。それでも、バーディーが決めきれず、最終日もスコアを伸ばすことができずじまい。いまいちでした。
 (全英女子オープンは)初出場です。しかも開催コースのセントアンドリュースは、タイガー・ウッズ選手が涙を流していたのが印象に残っている程度。そんなところで今年は実際にプレーすることができる。楽しみと不安が半々です。しっかり調整します」


申ジエ<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

申 ジエ(16位タイ:-4)
 「もう少し伸ばしたかったですが、無事に4日間終えることができて良かったです。36歳なので体力の問題や時差ボケも少しあったりしましたが、朝早くから大勢のギャラリーが来てくれて、たくさん応援してくれたのでいいプレーができたと思います。
 来週はお休みして、再来週の全米女子プロに備えます。そこで一生懸命に頑張ってずっと目標にしてきたパリ五輪の切符を手にしたいです。日本には資生堂レディスオープンから出場したいです」


安田祐香<Photo:大会提供>

 

安田 祐香(16位タイ:-4) ※3番でホールインワン 賞金=10万円
 「(3番は)4UTで、打球はピンへ向かっていた。カップインの瞬間までしっかり見ました。きょうは2番でボギーが先行。しかし、あのホールインワンで良い流れに乗れたと思います。
 今大会は地元開催。いつも以上に、たくさんのギャラリーの皆さんが足を運んでくださった。だからいいプレーを届けることができて、すごく良かったと思います。きょうは雨と風の中でのラウンド。それでもギャラリーの皆さんが一緒に戦ってくれたことを忘れません。
 もう少し調子をあげて、はやく優勝争いができるように、もっと努力を重ねます」


金ミンソル<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

金 ミンソル(24位タイ:-2) ※宮里藍ベストアマチュア賞
 「初来日で、賞をいただいた。もっとスコアを伸ばせたかなぁと残念な気持ちはありますけど、楽しくプレーできたと思います。4日間、ミスが多かったのは反省点。でも、次週は韓国で試合があります。この経験をいかしてチャレンジします」


リアンヌ・マリクシー<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

リアンヌ・マリクシー(24位タイ:-2) ※宮里藍ベストアマチュア賞
 「すごくきれいですてきなコース。そんなところでプレーできたことが幸せです。個人的なことをいえば、六甲国際ゴルフ倶楽部はオーガスタナショナルGCの次に素晴らしいと感じた。
 来日は3回目。来るたびに日本が好きになります。賞をいただけたことはとてもうれしい。ただ、私にはもっと改善する余地がある。ベストアマチュアといっても、もっとスコアを伸ばさないといけない」