岩井千怜が大会連覇で見せた別の顔「昨年より状況判断できる」

<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

 JLPGAツアー2024シーズン第11戦『RKB×三井松島レディス』(賞金総額1億2,000万円、優勝賞金2,160万円)大会最終日が5月12日、福岡県福岡市・福岡カンツリー倶楽部 和白コース(6,305ヤード/パー72)で行われ、ディフェンディングチャンピオン・岩井千怜が通算12アンダーで連覇を達成した。

 

 この日は荒天。第3ラウンドは規定ホール終了を目指すため、セカンドカットを実施し、午前6時30分、第1組がスタートした。首位タイで最終組の岩井は6バーディー、1ボギーの67をマーク。通算9アンダー、2位タイの藤田さいき、山下美夢有に3打差をつけた。88年のツアー制度施行後、同一大会2年連続優勝は52回目。
(天候:雨 気温:19.2℃ 風速:7.9m/s)
《グリーン=スティンプ:10 2/3フィート コンパクション:23mm》

 

 自身初の「大会連覇」で、今季メルセデス・ランキングトップに躍り出た。最終18番のグリーンに立った岩井千怜。約1メートルのバーディーパットを沈めると、右拳をぐっと握りしめ、それから満面に笑みをたたえながら万歳した。この1打で通算12アンダーとし、会場が福岡カンツリー倶楽部 和白コースとなった2012年以降のトーナメントレコードも塗り替えた。

 

 昨年のこの大会でプレーオフにもつれ込む死闘を演じた山下美夢有、同い年の佐久間朱莉と3人で首位に並び、最終日最終組でスタート。終始激しい雨が降り、風も強く吹き付けるコンディションにも関わらず、前半だけで4バーディー(ノーボギー)を量産。ライバルとの差をぐんぐん広げていった。

 

 「果敢にグリーンを狙い、どんどんバーディーを取って、笑顔で誰かにパワーを届けるのが私のゴルフ」と言い切る通り、今季通算バーディー数139はJLPGAツアー断トツ(12日現在)。このダイナミックさこそ、岩井千怜の最大の武器だ。

 

 ただ、この日は「別の顔」も見せた。9番・パー4では、第2打がグリーンをオーバーするも、約8メートルのリカバリーショットを、ふわりと浮かせてから転がし、見事チップイン。勝利への流れを決定づけるバーディーで、思わず「よしっ!」と叫びながら、ガッツポーズをつくった。

 

 このショットでは、「54度で開いて打つか、58度で打つか」で迷ったと明かす。最終的に「58度でふわっと打ちつつ、少し転がってくれればいいな」とイメージした通りに打ち切った。「打った瞬間、これはいいかもと思いました。パーフェクトに近い感触でした」と自画自賛するのも無理はない。


<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

 昨年、メルセデス・ランキング6位に躍進した岩井千怜だが、今季はさらに成長している。「昨年よりも、状況判断ができるようになったと思います。イメージが違うと思ったら、その場でクラブの番手を変えられるようになりました」とうなずき、「今日は全体的にティーショットが暴れ気味でしたが、グリーンを外した時のアプローチでしのげました」と口元を綻ばせた。

 

 したたかさも見せた。13番・パー4では、岩井が第2打をピンから4.5メートル、山下は6メートルにつけ、2つのボールがカップへ向かって同じライン上に並んだ。先に打った山下のバーディーパットがカップの左をかすめて外れるのを観察していた岩井は、上りのフックラインを読み切り、決定的なバーディーを奪ったのだった。

 

 「美夢有さんのパッティングは、私のラインのすぐ後ろからでしたし、結構な上りで、どれくらいの強さで打たなければならないかがわかりづらかった。めちゃめちゃ参考になりました」と微笑んだ。

 

 母の日にちなみ、第1日には同組で回った双子の姉・明愛と、ピンクのウェア、ピンクのリストバンドでそろえた。この日もピンクのレインウェアで臨み、「いてくれると落ち着く存在」の母・恵美子さんに勝利を贈った。

 

 「本当は常に笑顔でいたいのですが、今日は少し油断すると、すぐにひっくり返りそうな場面が多々あったので、少し真剣な顔でやってしまいました」と反省するが、それも引き出しの1つと言っていいだろう。日々成長する21歳が、スターダムへの階段を着実に上っていく。

 

以下、各選手のコメント

 

藤田さいき<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

藤田さいき(2位タイ:-9)
 「きょうは覚悟を決めて、18ホールへ挑んだ。雨の日のプレーでは打ち急いだりして、さまざまなルーティンを慌てない。ちゃんとグリップを握って打つなど、当たり前のことを、ペースを乱すことなく行うように注意した。
 途中までそれほど雨は強くなかったから、最後まで行けるんだろうと考えていたら、17番で土砂降りになって、中断したらいやだ-と思って・・・。でも、ホールアウトできて何よりです。
 今、全米女子オープンへ向け、いろいろな準備を行っている。私のプレーもきょうのような荒天にもかかわらず、いい感じだからすごく良かった」

 


小祝さくら<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

小祝 さくら(4位タイ:-6)
 「ダブルボギーのスタートでしたが、その後すぐに気持ちを切り替え、2番ホールからしっかりバーディーが取れました。かなり風もありショットが難しかったのですが、全体を通して良いラウンドだったと思います。
 天候が悪い中でもバーディーが取れたので、自信にも繋がりました。再来週は全米女子オープンを控えています。しっかりと調子をあげていくために、マネジメントから見直してプレーしたい」

 

ペソンウ<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

ペ ソンウ(7位タイ:-5)
 「きょうのベストスコアを出した藤田さいきさんと一緒にラウンドして雰囲気が良く、ミスが少なかった。ホールアウトしてから、リーダーボードを見るとトップ10に入っていたので、よしっと思いました。トップ10入りを積み重ねていけば、優勝のチャンスが見えてくるでしょう。頑張って、メルセデス・ランキングも上げていきたい。 次戦は、過去に優勝したことのある韓国ツアーへ出場します。JLPGAツアーには3週後のヨネックスレディスから復帰予定です」


菅沼菜々<Photo:大会提供>

 

菅沼 菜々(13位タイ:-2) ※12番ホールインワン達成=賞金30万円
  「人生で初めてホールインワン。いつも、パー3で副賞がかかっている看板などを見ても、どうせ入るわけがないと思って打っていた。それが、きょうはグリーンエッジに落ちて、あとは私、視力がいまひとつですから見えていません。けさは18ホール、プレーできるのかなぁと思ったけど、まさかのホールインワンが出た。その後は、もし途中で中止になったら大変・・・。記録なしになるなど、そんな話をしていた」


佐久間朱莉<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

佐久間 朱莉(13位タイ:-2)
 「何もうまくいかない。朝は普段通りでしたけど、パー5でボギーが多く、悪い流れを止めることができなかった。天候が荒れたら、耐えていればいい、と私自身へ言い聞かせたつもりでも、肝心の自分が崩れていった。きょうの反省はそれです」