プラチナ世代・阿部未悠が首位タイで悲願の「アレ」へ

<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

 JLPGAツアー2024シーズン第6戦『富士フイルム・スタジオアリス女子オープン』(賞金総額1億円、優勝賞金1,800万円)大会第2日が4月6日、埼玉県鳩山町・石坂ゴルフ倶楽部(6,535ヤード/パー72)で行われた。前日首位タイの上田桃子、佐久間朱莉に、阿部未悠を加えた3人が通算8アンダーで首位に並んだ。藤田さいきは13番パー3でJLPGAツアー史上単独最多となる通算7度目のホールインワンを記録し、1打差の4位タイにつけた。
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《グリーン=スティンプ:10 1/2フィート コンパクション:23.5mm》

 

 「明日は『アレ』をしたい、という感じですかね」。阿部未悠は、プロ野球・阪神の岡田彰布監督が昨年、あえて「優勝」という言葉を避けて「アレ」で代用し、最終的に18年ぶりのリーグ優勝と38年ぶりの日本一を成し遂げたことにちなんで口元を綻ばせた。

 

 JLPGAツアー7勝の古江彩佳、6勝の西村優菜、3勝の吉田優利らを擁する2000年度生まれの「プラチナ世代」の1人。上田桃子、佐久間朱莉と3人で首位に並び、念願の初優勝を目前にしても、はた目には興奮はうかがえない。「優勝したいのはもちろんですが、優勝するぞと気合を入れれば近づけるというものではないと思います。1つでも上の順位で終われるように頑張ることも、いつものことです」と落ち着いた口調で心境を語った。

 

 プレースタイルも冷静沈着だ。特にグリーンの傾斜がきつい難コースの石坂ゴルフ倶楽部では「無理をせず、絶対に外してはダメなところには外さず、許容範囲内でプレーする」ことを心がけている。この日も5バーディー・ノーボギーの堅実なゴルフを披露した。

 

 最大のピンチは最終18番パー4。第2打をグリーン上のマウンド付近に落とし、「少し上ってから一気に下る、10メートルの難しいラインを残してしまいました」。幸い、想像よりグリーンが遅く、バーディーパットはカップの左手前1メートルでピタリと止まり、難なくパーをセーブすることができた。


<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

 趣味は玄人はだしの写真撮影。シーズンオフには、自宅のある北海道で雪の中を歩き回り、フクロウ、オオワシなどを写真に収める。「(小型で『雪の妖精』の異名を取る)シマエナガを見つけたのに、撮る前に逃げられてしまいました」と無邪気に話す。

 写真撮影は基本的に気分転換のためだが、「集中力や諦めない気持ちが大事なところは、ゴルフと共通しているかもしれません。フクロウを探して4時間歩き回ったこともあります」と明かした。慌てず騒がず、諦めることもなく、熱い思いを胸に秘めて最終日に挑む。

 

以下、各選手のコメント

上田 桃子 <Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

上田 桃子(1位タイ:-8)
 「良いところ、悪いところがあった一日。2番など、欲が出たホールですね。1番でバーディースタートを切ったら、ギャラリーの皆さんの大声援がすごい。私まで高揚してしまった。2年前、優勝した時と同じピン位置で、腕試しのつもりで警戒心もなかったですね。
 最終日、優勝争いができることは本当にうれしいです。今、わくわくしているぐらい。だけど、肝心なことは集中力。紙一重の差でバーディー、ボギーが来るコースです。2-3打のリードでも安心ができない。だから、後悔しないようなジャッジをすることを心がける。
 きょうはあたたかかったから、左手首痛がまったく出ることはなかった。最終日、最終組でそれぞれがいいプレーをお見せできれば、と思います」


佐久間 朱莉 <Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

佐久間 朱莉(1位タイ:-8)
 「きょうのラウンドは70点。チャンスをたくさん、つくることができなかった。3パットがあったし、全体を通して流れに乗れない気がした。でも、最終ホールの第2打は良かったと思います。残り147ヤードを7Iで1メートルないぐらいにつけることができた。あすへつながると思います。
 最終日は上田桃子さんと、ご一緒できることがうれしい。小さなころからテレビのゴルフ中継で拝見し、あこがれの人です。しかも最終組で優勝争い。たくさんの良い経験をします。もし、優勝することができたら、すごい自信になりますね」


蛭田 みな美 <Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

蛭田 みな美(4位タイ:-7)
 「17番のイーグルがとても大きい。残り73ヤードの第3打を58度です。ただ、打球は見えなかったけど、手応えが良かった。1番も実は、イーグルチャンス。でも、決まらなくて、ようやく胸のつかえがとれたような気がした。また、今シーズンの初イーグルだったし、本当にうれしい。
 一日のプレーを振り返ると、去年とは違って、ただ攻めるのではなく冷静なジャッジができていると感じました。あすは優勝争い。カギを握るのはグリーンを狙うアイアンショット。距離感をしっかりあわせていきます」


山下 美夢有 <Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

山下 美夢有(8位タイ:-5)
 「ショットが安定しない。思い通りにいきません。しっかり修正しなければ…と考えていますけど、原因がよくわかっていない。ただ、今大会も最終日を残すだけ。パッティングが決まれば、上位を狙えそうでも、安定しないショットを立て直さなければ、チャンスがつくれない」

 

櫻井 心那 <Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

櫻井 心那(13位:-3)
 「(17番パー5で今季JLPGAツアー最多の3つ目のイーグル)強気にいきました。エッジまで217ヤードの第3打を3Uで右手前8メートルに付けて、パッティングもショートだけはしたくないと思って、しっかり打ちました。今季3つ目のイーグル? 1つはアクサレディスでのホールインワンですが、その他の2つはロングホールで持ち味の飛距離を生かせたのかなと思います。
 調子はだんだん上がってきています。今週からユーティリティーとウッドのシャフトを変えて、まだ調整中。調子とクラブがかみ合ってくれば、もっとよくなると思います。これまでうまくミートしていなかったので、しっかりめのシャフトにしました」


川畑 優菜 <Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

川畑 優菜(28位タイ:-1)※アマチュア
 「きょうは主催者推薦の予選会のように、イメージ通りのプレーができた。1Wが安定し、きのうはサッパリのパッティングがうまく決まった。返しのパッティングも落ち着いて、沈めることができたことが大きい。
 兄がキャディーでしっかりラインを読んでもらい、チャンスを生かせたと思います。JLPGAツアーは20年のゴルフ5レディス以来。ベストアマチュアをとりました。あの時はコロナ禍で無観客だったし、今回はギャラリーさんがたくさん。めちゃ楽しかったです。あすも6アンダーを目指し、できるだけ上位でフィニッシュしたい」


神谷 和奏 <Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

神谷 和奏(67位:+5)
 「第2日からギャラリーの皆さんが多く、私自身がちょっとフワフワしていたような気がする。落ち着いて、落ち着いて、と言い聞かせながらプレーをしたけど、どうしてもバーディーを狙いにいきたくなる。うまくメンタルをコントロールできなかったことが反省点でした。もう一度、最初からやり直したい気分。でも、皆さんから励ましの声援をいただいて、すごく励みになりました」