穴井詩4年ぶりの激闘V POを制す

<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

 JLPGAツアー2023シーズン第5戦『ヤマハレディースオープン葛城』(賞金総額1億円/優勝賞金1,800万円)大会最終日が4月2日、静岡県袋井市・葛城ゴルフ倶楽部 山名コース(6,480ヤード/パー72)で行われ、穴井詩が逆転優勝。4年ぶりのJLPGAツアー通算4勝目をあげた。大混戦のこの日、勝負は通算9アンダーで並んだ、ささきしょうことのプレーオフへ。PO2ホール目、バーディー奪取で激戦を制した。
(天候:晴れ時々曇り 気温:17.3℃ 風速:5.5m/s)
《グリーン=スティンプ:11 1/4フィート コンパクション:24mm》

 

 4年間の空白を経て、穴井詩はツアー通算4勝目をあげた。「この4年、ムダなことなどひとつもない。今、頭が真っ白になっていて…。夢じゃないか。そう思っている」。心の叫びを言葉にした。

 

 最終日。前3日間は穏やかな天候が続いた。しかし、この日は強風が吹き、グリーンのスピードが上がる。しかも、ピンポジションが難しい。選手の力量を試す絶好の条件がそろった。ザ・ガマン比べ。大混戦の勝負はプレーオフへ持ち込まれた。

 

 PO1ホール目。第1打が大きく右へ曲がる。ところが、一大ピンチを迎えたか-と感じたが、ボールはテレビタワーに当たりフェアウェイへ戻った。ツキがある。ただ、勝負を決めるには至らない。

 

 PO2ホール目は、素晴らしい第1打を放つ。アドバンテージを握ったものの、第2打がグリーン左手前バンカーへ飛び込む。ここで絶妙のテクニックを披露。ピン右1.5メートルにつけた。対する、ささきも2メートルのバーディートライだったが、チャンスを生かすことができない。

 

 「3ホール目へ行きたくない」と、集中力を一気に高めた。鮮やかなウイニングパット。何度も何度もガッツポーズが飛び出した。「緊張していて、右へすっぽ抜けて…。PO1ホール目、あれで終わったと思った。本当にラッキー」と前置きし、「オフに取り組んできたことが結果にあらわれた。難しい、難しい葛城を攻略して優勝できたことは、これからの人生の原動力になります」と背筋を正して、神妙な口調で話している。


<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

 プロ、アマを問わず、飛距離を伸ばすことはゴルファー永遠の願い。22年ドライビングディスタンスで第1位。また、年に1度のドライビング女王コンテストでは302.3ヤードをマークし、通算3回目のタイトルを手中にした。ただし、飛距離は諸刃の剣でもある。精度が伴わなければ、アドバンテージとはならない。

 

 「必要がないところでクラブを大きく振ってしまう。今年は方向性を重視する。そのためにアドレスから見直した。パワーコントロールです」とテーマを掲げ、実践中。平均飛距離は約15ヤード、マイナスとなったものの、「それは仕方がないこと」と割り切った。

 

 その成果は今季のパーオン率が示す。今大会を終えて、3位へ躍進。驚くべき進化である。今年は年女。もっか35歳だが、「もっと、ゴルフがうまくなりたい。終わりなんて、見えません」。続けて、「複数回優勝。年間獲得賞金1億円。公式競技も優勝したい」と目標がある。

 

 「私、そういえば欲望ばかりですね。もっときれいなスイングをつくりたいし、パッティングで上りをしっかり打てる心の強さも欲しいです」。ボルテージが上がった。4年間を振り返るのではない。将来のことばかりを語った。大変身。新たなスタイルは大いなる自信と活力となる。


<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

以下、各選手のコメント

 

山下美夢有<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

山下美夢有(3位:-8)
 「(穴井)詩さんが-9で上がっていたので、絶対取らないといけなかった。17番で-9まで伸ばさないとプレーオフには行けないと思っていた。最後、取れなかったのは悔しいですが、自分のミス。しっかり切り替えて、また次週、上位で戦えるようにしたい。グリーンも固かったですし、風もきのうより強かった。前半は耐えて、耐えて、ショット自体はあまり良くなかったので、3つのボギーはそこに出てしまったのかなぁ」


吉田優利<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

吉田 優利(4位:-7)
 「ゴルフはそんなに悪くなかったが、バーディーを獲れなかったのが一番の原因。(パッティングは)ちょっとタッチが弱かった。強ければ入っていたのが、多かったかなぁ。(風は)思ったより強かったので、私以外の選手も苦戦していたと思います。自分が良いゴルフをするためにどうしたら良いかをずっと考えていました。また次年以降、勝つチャンスがあれば-」


藤田さいき<Photo:Kenta Harada/Getty Images>

 

藤田 さいき(5位タイ:-6)
 「18番のイーグルパットは10メートル以上、あった。残念だったけど、きょうの状況を考えれば、バーディーで締めくくれたし、とりあえずは良しです。また、風や絶妙のピンポジションなど、とにかく難しかった。2アンダーでプレーできれば100点に近い内容でしょう。開幕から実戦を積んで、安定してきた。こういうプレーを続けていれば優勝が近いかもしれませんね」

 

鈴木 愛(5位タイ:-6)
 「もうちょっと、運を与えてほしかった。そんな1日…。11番から3ホール連続で打った瞬間、突風が吹くなど想定外のことがあった。また、14番は6メートルのジャストタッチのバーディーパットにもかかわらず、カップをなめまわして入らない。 でも、あきらめずに最後まで集中力をキープ。最後の4ホールで3バーディーが来ました。4日間大会はメルセデスポイントが稼げるから。意識しています。次週はパッティング練習をしっかり行って上位を-。頑張ります」

 

 

石井理緒<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

石井 理緒(5位タイ:-6)
 「いい感じでは回れていましたが、後半はもったいないボギーがありました。緊張はあまりなく、優勝も意識していませんでした。リーダーボードも見ていなかったので、順位も分かりませんでした。経験になったし、山下(美夢有)さんのプレーもすごく勉強になった」

 

山内 日菜子(9位:-5)
 「最終日は無理をしない-がテーマ。ただ、18番は攻めていいピンポジションでした。バーディーパットは80センチです。いい締めくくりができた。トップ10で終わって本当にうれしい。 (前週の優勝賞金で)スーツケースを買うことにした。5年前から使っていたものが古くなったし、なかなか新しいものを買うことに踏み切れなかったけど、思い切ってちょっと高いものを奮発します」


渡邉彩香<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

渡邉 彩香(10位タイ:-4)
 「(決勝ラウンド)2日間は、ショットが良くなくて、きょうもイマイチ修正しきれずでした。ショートゲームでしのいで、後半はアプローチでパーを拾えた。いい集中ができました。風はアゲインストか、フォローかで悩むホールも多かったけど、大きなミスなくプレーができた。地元(静岡県)で優勝というのは1年間を通しての目標です。幸いチャンスは多いので、残りどこかで優勝できるように頑張りたい」


鶴岡果恋<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

 

鶴岡果恋(13位タイ:-3)
 「悔しいですが、今の自分の実力です。また近い試合でリベンジしたい。緊張していたのはスタートの1番ホールだけ。(5番のダブルボギーは)グリーンが日に日に固くなっていて、第1日と最終日のグリーンのギャップに全然対応出来なかった。もっとコースマネジメントと、グリーンに慣れること、技術をもっと上げていかないと勝てない-と感じた」

 

山下 アミ(62位タイ:+10)※ベストアマ
 「すごく緊張した中でのプレーで楽しめましたが、思うような結果が出ず、悔しいです。プロの方たちのプレーを間近で見られて、攻めと守りのメリハリがすごく勉強になりました」