興梠慎三(写真)は4月28日に行われた清水戦の後半アディショナルタイム7分にネットを揺らし、「平成ラストゴールを決めた男」として歴史に名を刻んだ。しかも、そのゴールは日本サッカーのパイオニア、キング・カズに並ぶJ1通算139得点目。もはや、“そういう星の下に生まれた”としか思えない引きの強さである。

もっとも、その引きの強さは傑出したスキルが生み出したものである。清水戦でマウリシオが決めた先制点は興梠のシュートをGKが防いだこぼれ球から生まれたが、そのシュートに至る一連の流れは圧巻だった。左サイドから上がったクロスに対して胸でトラップ、ゴールから離れる形で浮き上がったボールに対し、下がりながら体をひねって利き足ではない左足でボレーという超絶技巧。ゴールマウスも正確に捉えていた。

そして劇的アディショナルタイム弾は憎らしいほど冷静、かつGKをあざ笑うかのような華麗なチップキック。そんな巧みなストライカーのプレーにはオズワルド オリヴェイラ監督も「イマジネーションあふれるプレーを見せてくれる選手。あのような素晴らしいゴールは昨年の川崎F戦でも見せましたし、過去にも何度か見ている」と目を細める。

興梠は2013年に鹿島から加入して以来、文字通り、替えの効かない存在として君臨している。前線にいるか、いないかでチームの明暗が分かれるほどの影響力がある。オリヴェイラ監督も「彼が疲れていても、交代を躊躇してしまいます」とその存在の大きさを痛感している。

浦和はリーグ戦3連勝中で、順位も5位まで上げてきた。その間、興梠は2得点を決めている。チームの浮上にエースの躍動は不可欠だ。

平成から令和へ。元号が変わって初めて迎える一戦、その時代の節目でスポットライトを浴びるのが最も似合うのはやはりこの男しかいない。磐田戦のキックオフは明治安田J1第10節最速の3日14時。「令和ファーストゴール」の可能性は十分ある。そして、次のゴールが決まればミスターレッズ、福田正博氏が持つJ1でのクラブ歴代最多91得点に肩を並べることになる。

舞台は整っている。あとは主役の登場を待つだけだ。