さて、横手でもう一蔵立ち寄ったのが、この「浅舞酒造」。
アタマをぶつける高さに大きな杉玉が下がった、ごらんの佇まい。
この蔵も、利き酒して購入するだけのつもりで立ち寄ったのですが、
一口いただいた「天の戸」のあまりの美味しさに、
一行で4号瓶の吟醸酒を5本も購入。
珍しい客と思われたのか、「平日のみ・要予約」のはずの蔵見学を
快くお許しいただきました。
酒米はすべて地元・秋田産米。
各種の酒米の仕入元(生産者名)が記載されたサンプル。
さあ、蔵見学の始まりです。
仕込み水は当然、雪深きこの地に磨かれた、湧き水。
天井から吊られた洗米用の袋。
洗米は、白米の糠を洗い流し適度の水分を吸わせるために大事な工程です。
そしてこれが、蒸米機。
蒸しの目的は、適度に水を吸わせた生米を蒸気で加熱することによって、
米の生デンプンをα化(酵素に分解されやすく)し、
麹菌が生産する「糖化酵素」の作用を受けやすくするためです。
次いで、麹室(こうじむろ)での麹作り。
麹造りは、麹菌の作用によって蒸米のでんぷん質を糖へと分解されやすくする、
酒造りの重要なポイント。
連続50時間にも及び、杜氏が最も心血を注ぐ作業だそうです。
放冷工程によって麹菌が繁殖しやすい温度まで下がった蒸米を
木製の麹蓋(上の写真。吟醸酒はこのちいさな蓋を使用)に薄く広げ、
黄緑色の「種麹」(手前の袋がそれ)を均一にふりかけて、寝かせます。
30度以上の室温の中、40度にもなる蒸米の温度を最適に保つため、
夜中に何度も交代で起きては、麹蓋(上段ほど高温になる)の順序を入れ替える
たいへんな重労働なのだそうです。
ところで、酒づくりのメカニズムは、
①麹の酵素が米のデンプンを糖へと分解し(糖化)、
②微生物(酵母菌)がその糖をアルコールに転換する(発酵)、の2つ。
そのために、麹造りを行う一方で、
あらかじめ酵母菌を培養して大量に増殖させておく必要があり、
培養された酵母またはその工程のことを「酒母(もと)」と呼びます。
この「酒母」に、蒸米と麹と水を加えるのが、「もろみ」の工程。
大きなタンクで1ヶ月かけて行われるこの工程こそ、酒造りのクライマックスです。
このような大きなタンクで、
前述の「糖化」と「発酵」の2つの働きが同時に進行します。
最初は柔らかな固体状のもろみが、最終的には2割ほどの酒粕を残して液体状に。
発酵が進んだもろみの液面では、細かい泡がプチプチとかすかな音を立ててはじけます。
タンクの深さは2メートル以上。
つかまるところが無いので、落ちれば溺死です(汗)
もろみは温度管理が重要。
冷えすぎないようにタンクの下部は「むしろ」で覆われています。
またタンク上部は、高温になりすぎないよう冷水を循環させる機能も付いています。
次いで、搾り。
「もろみ」から生酒(なまざけ)を搾る工程で、上槽(あげふね)とも言われます。
白米・米麹などの固形分と、生酒となる液体分とに分離します。
「もろみ」に、均等に強い力を加えて搾るための、圧搾機。
なかなかの迫力です。
槽口(ふなくち)から搾り出されたばかりの生酒を、いただきました。
アルコールド高めの、荒削りな味がします。
酒粕を分離すると、このような黄緑色の透明な液体に。
麹菌の色でしょうか・・・これが本来の日本酒の色なのだそうです。
このようにして、搾り終えた酒を集め、濁りを取り除くために待つ工程のことを、
「滓下げ(おりさげ)」と呼ぶそうです。
このあと、ろ過、火入れなどの工程を経て、
酒はしばらく、この貯蔵庫に眠ります。
貯蔵の目的は、酒の旨み、まろみ、味の深みなどを引き出すため。
とくに吟醸酒は、香りや味わいを安定させるために、半年かそれ以上の
熟成期間を持たせるものも多いそうです。
なお、もろみから搾った状態の日本酒は20度前後の高アルコール濃度のため、
出荷直前に加水されますが、
この水も味に大きく影響する要素なのだそうです。
蔵の入り口に掲げられた、「清潔は信用」の文字。
丁寧にご説明くださった、浅舞酒造の若い蔵人さんに、心から御礼申し上げます。
最後に、「貯蔵」や「出荷」に関連して調べたことを、備忘のために付記しておきます。
出典:Wikipedia。
◆日本酒は、毎年7月から翌年6月が醸造年度 と定められており、通常は醸造年度内つまり6月までに出荷されたものが新酒 と呼ばれる。
◆日本酒は牛乳などと同じく、新鮮さが命であるため、生酒 はもちろんのこと、そうではない火入れ をしてある酒であっても、原則的には出荷後はできるだけ早く飲んだ方がよい、と一般に言われている。
◆搾りの日から三週間迄の間が一番生新酒のフレッシュな味を楽しめるが、生新酒は直ぐに劣化が始まるため、この期間を逃した場合は成熟の味が劣化を上回るまで待つ必要があり、酒によるが冷蔵庫で6ヶ月前後待つと素晴らしい姿になっている場合もある。
◆いわゆるひやおろしとは、冬季に醸造したあと春から夏にかけて涼しい酒蔵で貯蔵・熟成 させ、気温の下がる秋に瓶詰めして出荷する酒のこと。その際、火入れをしない(冷えたままで卸す)ことから、この名称ができた。
◆よって、ひやおろしは醸造年度 を越して出荷されるという意味ではほんらい古酒に区分されることになるが、慣行的に新酒の一種として扱われる。













































