第4話「募る想いⅠ」
夏期講習が終わって翌日のお休みの日に静香と会いました。静香のやつ次の日は塾の実力試験だというのにさ、
「だって・・・
先生と夏休み最後の思い出を作りたい・・・。だめ?」
ごふっ(吐血)(;゚Д゚)
と、思わず咳き込みそうになりました。
ま、まあ、思い出といってもいろんな思い出があるからね。
「でもさ、試験勉強しないと、家の人に怒られちゃうぞ。」
俺はね、やっぱ臆病です。いざとなると中学生と二人きりで会うのは怖いっす。なんか問題起きたらどうしよう、って考えちゃうもん。
「せんせい・・・」
「ん?」
「やっぱり私のこと迷惑ですか?」
電話ごしにね、静香の想いが溢れるほど強く伝わってきてさ・・・
「全然迷惑なんかじゃないよ。お前の気持ちはすっごく嬉しいもん。」
「ホントですか? うわあ、よかった♪」
素直に喜ぶ静香の声を聞くと何か断りずらいです。っていうか普通断れないって。そんなわけで静香の希望どおり遊園地に行ってきました。遊園地なんてここ数年行ってなかったからすごい久しぶりです。
静香が元気いっぱいで俺をいろんな乗り物に誘います。俺もね、昔はジェットコースターとか結構好きでした。でもこの歳になってさ、一時間近く並んでまで乗りたくはないね。なんか結構恥ずかしいよ。
考えてもみてくださいよ。いいですか、10代のカップルが多い遊園地でピチピチの可愛い中学生と30歳の中年オヤジが一緒にですよ、
手をつないで歩いてたら一躍注目の的やんけっ。
俺は一体何をやってるんでしょう・・・
いいえ、何もしていないっす。ただ、静香の思い出作りに協力しているだけです、ハイ。だけど一緒に遊んでいるときも誰か知り合いに見られないかとそんなことばかり考えています。
まさか他の生徒やその父兄とバッタリってことになったら・・・(汗)
万一に備えて、言い訳考えちゃうよなぁ。
やっぱバレたら超やばいすからね・・・
それにしてもよく遊びましたよ。疲れました・・・。
遊園地を出てね、「一緒に食べていく?」って一応誘います。
「今日はお父さん家にいるから早く帰んないと。ゴメンね、先生。」
ホッとしましたよ、正直ね。ヤリ損なったぜ、チッ。 これでとりあえず解放されます。思わず「ふぅ。」とため息をついたらさ、いや、これは安堵のため息ですよ。そしたらさ、なにを思ったのか、
「あ、ごめんなさい、先生、怒ってる?」
一緒に食事をできなくて、俺ががっかりしてるみたいじゃんか。
「家に電話してみる。友達のところで勉強して遅くなるって言えば大丈夫かもしれないし。」
ま、待てってば(汗)
女子中学生に同情されてどうすんだ。だいたい誤解だし。
「あ、いいって、いいって、ホント。気にすんなよ。明日は試験だしさ、今日は早く帰って寝な。」
「うん・・・。ありがとう、先生。」
静香のやつ、俺が引き留めたいのに我慢してると思ったかな・・・。
ますます泥沼にはまっていく気がするのは気のせいでしょうか。
静香を電車のホームまで送り届けました。電車を待つ間、他愛のない話をしてたんですが、静香が真面目な顔をして口を開いて・・・
「先生、今好きな人いるんですか?」
・・・・・・!!!(;゚Д゚)
そ、それって俺に付き合ってる人がいるかどうか聞いてるの?
うおーーー、なんて答えりゃいいんだ?
こうなったら正直に言っちゃう?
・・・それとも?
マッハな速度で頭の中はフル回転・・・
もしも、正直に答えたとしら・・・
静香とはこれでお終いかもしれない。いや、それが一番いいかもしれないです。先生と女子中学生の恋愛だなんてやっぱり普通じゃないしね。
俺は決意しました。
正直に言お・・・もったいねぇ!!
俺の中の悪魔が・・・。うおーーー、やはり、未練があるのか?!
「好きな人は・・・、ゴマキかな?」
「えぇ、なにそれ!? 先生、わか~い♪」
「静香も似てない? 前から思ってたんだよね。」
「そんなこと言われないですよ。もう、からかってるでしょ。」
といいつつ、嬉しそうな顔をするんだよなあ。照れた顔がまた可愛い。でもウソもついてないしね。誤魔化そうとはしてませんよ、ええ、ホント。
最後は電車に乗り込む静香を見送って帰りました。電車の中から懸命に手を振る静香がとても愛おしく見えてきて・・・。
やっぱやばいよね、俺・・・。