JR西日本は5月15日、京阪神の都市圏で3種類ある運賃体系を2025年4月1日から統一するため、国土交通相に認可申請したと発表しました。
京阪神都市圏では、通常の幹線用の運賃のほか、割安な「電車特定区間」、さらに割安な電車特定区間の「大阪環状線内」(大阪環状線・JRゆめ咲線・大和路線今宮~JR難波間のみの利用の場合に適用)という3種類の運賃体系が、国鉄時代から設定されています。
電車特定区間の運賃は、JR発足後に開通したJR東西線とおおさか東線を除き、国鉄時代に制定されたものです。
これは、国鉄時代に通勤型電車が走っていた区間として区分されたようです。
東京の電車特定区間は「国電」区間で、通勤型電車の走る線路(山手線、京浜東北線・根岸線、中央線快速、総武線・中央線各駅停車、常磐線快速など)と列車区間に直通する近郊型電車の普通列車の走る線路が明確に区分されていました。
これは戦前の省線時代からの名残で、列車区間に直通する「汽車」の普通列車を戦後、輸送力増強のために電車化、さらに複々線化で線路を分離したのです。
この輸送力増強策は「東京五方面作戦」と呼ばれました。
そのため、常磐線上野~取手間や中央本線新宿~高尾間では列車区間に直通する近郊型電車の普通列車が通勤型電車の快速より停車駅が少ないという現象が起きていました。
東海道本線横浜~大船間、横須賀線、東北本線上野~赤羽間(尾久経由)、総武本線東京~錦糸町間は国電区間だが近郊型電車が運用されていました。
一方、京阪神地区は近郊型電車の快速と通勤型電車の普通が同じ線路を走ります。
福知山線は1981年に尼崎~宝塚間が電化され通勤型電車が走っていたが、非電化区間に乗り入れる気動車やディーゼル機関車牽引の客車の普通列車も走っていたためか、除外されました。
一方で阪和線は夜行の客車普通列車「はやたま」が運転されていたが、阪和線内は普通列車だが全駅通過でした。
片町線の京橋~片町間はJR東西線開通とともに廃止されました。
同社は、都市圏域の拡大にともなう輸送サービスや利用状況と運賃水準の不一致が課題であると認識。
今回、同じレベルの輸送サービスを提供しているエリアにおいて運賃体系を統合し、平準化を図ることを決めました。
一方で、大阪環状線内の区分は廃止し、通常の電車特定区間に統合します。
その結果、大阪環状線内は10~30円の値上げ、現行の電車特定区間は同額か10~20円の値上げとなります。
現行の幹線の区間で発着する場合は、同額か10~210円値下げとなります。
値上げ区間の例
大阪-天王寺間 210円→240円
大阪-西明石間 950円→960円
値下げ区間の例
大阪-新三田間 770円→750円
大阪-姫路間 1520円→1460円
一方、大阪-京都間や大阪-三ノ宮、神戸間など私鉄と競合が激しい区間は、安価に設定した「特定運賃」を据え置きます。
電車特定区間の運賃には鉄道駅バリアフリー料金10円が含まれます。
電車特定区間の拡大は青春18きっぷユーザーにも朗報です。
青春18きっぷの1回の有効期間は、乗車した列車が午前0時を過ぎて最初に停車する駅までだが、電車特定区間だと最終電車まで有効になります。
現行の電車特定区間
東海道・山陽本線(JR京都・神戸線)京都~西明石間
大阪環状線
桜島線(JRゆめ咲線)
片町線(学研都市線)長尾~京橋間
JR東西線
おおさか東線
関西本線(大和路線)奈良~JR難波間
阪和線(羽衣線を含む)
新たに電車特定区間となる区間
東海道本線(琵琶湖線)野洲~京都間
湖西線 山科~堅田間
山陰本線(嵯峨野線)京都~亀岡間
奈良線 京都~城陽間
片町線(学研都市線) 松井山手~長尾間
福知山線(JR宝塚線) 尼崎~新三田間
関西空港線
山陽本線(JR神戸線) 西明石~網干間