半世紀にわたって京都発の時代劇が撮影されたセットが、4月7日で見納め。
来年の開業50周年に合わせて全面改装中の東映太秦映画村(京都市右京区)は、時代劇のオープンセットを作り直し、江戸時代の京都の町並みに生まれ変わります。
数々の映画やテレビの名作を生み出した旧セットの雰囲気を最後に味わう「太秦江戸酒場」が、4月6、7両日に開催されます。
映画村は1975年11月、時代劇の撮影風景を見学できるテーマパークとして、東映京都撮影所内に開業しました。
開業にあたっては、当時の東映京都撮影所の所長で後に東映社長を務めた高岩淡さん(故人)の尽力がありました。
背景には、テレビの台頭によって時代劇映画が衰退しつつあったことがありました。
戦後の映画黄金期には東映のほか松竹、大映も京都の太秦に撮影所を構えていました。
しかし、松竹は1965年に京都撮影所を閉鎖、大映は1971年に倒産しました。
東宝は当初から京都に撮影所がありません。
東映は撮影所の東京集中に危機感を強め、京都撮影所で生きる道を模索していました。
それが、撮影所内のオープンセットを一般に公開することでした。
旧セットは呉服屋や湯屋(銭湯)、ろうそく屋など約35棟の建物で構成され、商家などが立ち並ぶ目抜き通りや宿場町、遊郭の吉原、江戸の日本橋などを模した町並みを再現していました。
これまで映画2000本、テレビドラマ9000話以上が撮影されました。
映画では、深作欣二監督がメガホンを取った「柳生一族の陰謀」(1978年)「赤穂城断絶」(同)「魔界転生」(1981年)「蒲田行進曲」(1982年)「里見八犬伝」(1983年)、五社英雄監督の「鬼龍院花子の生涯」(1982年)「吉原炎上」(1987年)などの名作、ヒット作をはじめ、「銀魂」「るろうに剣心」シリーズ、公開中の「身代わり忠臣蔵」にも使われました。
テレビ時代劇では、「水戸黄門」「大岡越前」「江戸を斬る」(TBS)「銭形平次」「旗本退屈男」(フジテレビ)「服部半蔵影の軍団」「大奥」(関西テレビ)「遠山の金さん」「暴れん坊将軍」「三匹が斬る」(テレビ朝日)などの人気シリーズの舞台となりました。
今年は「仮面ライダーガッチャード」(テレビ朝日)にも映画村が登場しました。
映画村は、旧セットで撮影した写真を専用のハッシュタグをつけてSNSに投稿する写真コンテストや見学ツアー、殺陣体験などを実施しています。
6、7日は「夜桜花吹雪」と題し、江戸時代さながらの雰囲気の中で飲食を楽しんでもらいます。
新セットは4月13日にお目見えする予定で、映画村の担当者は「多くの映画、ドラマと笑顔を生み出した現在のセットが50年の歴史に幕を閉じる。『ありがとう』と『よろしく』を込めて最後と新たな一歩を見守ってほしい」と話しています。
リニューアルに先立ち、場内にある「京都太秦美空ひばり座」が、4月8日で閉館します。
ひばりプロダクションが3月28日、同社公式X(旧ツイッター)で伝えました。
映画村の公式サイトでも同日までに案内されました。
ひばりプロダクションは「京都太秦映画村内にある『京都太秦 美空ひばり座』が映画村リニューアル工事に伴い閉館となります。10年に渡る御愛顧に心より感謝申し上げます」と報告。
また、「その後の展示につきましては改めての発表とさせていただきます」と伝えました。
「京都太秦美空ひばり座」は、2013年5月末に閉館した「京都嵐山 美空ひばり座」から移設されました。
昭和のスター・美空ひばりさん(故人)の東京ドームコンサート実物衣装(森英恵作)や、女性初の国民栄誉賞を受賞した時の貴重な写真や映画ポスター、貴重な小道具などが公開されてきました。
前身の「美空ひばり館」はひばりプロダクションではなく、京都在住の美空ひばりファンの実業家が自費で開設、運営していました。
しかし、利用者が低迷したため閉館、ひばりプロダクション主導で「京都嵐山 美空ひばり座」として再オープンしました。
ひばりプロダクションが東京に新しい美空ひばりの記念館を開館する構想を打ち出したため、再度閉館しました。
それでも、京都に美空ひばりの記念館を残してほしいという要望も多く、東映が運営を引き受け、「京都太秦美空ひばり座」として移転、再々オープンしました。
「京都太秦美空ひばり座」は映画文化館の中にあるが、映画文化館も同じく4月8日に閉館します。
衣裳体験施設の先駆けといえる時代劇扮装はリニューアル後も続けられます。
映画村のリニューアルは営業を続けながら工事を行い、2028年に新装オープンとなる予定です。