大相撲九州場所千秋楽(2022年11月27日 福岡国際センター)
大相撲九州場所は27日、福岡国際センターで千秋楽の取組が行われ、西前頭9枚目・阿炎(錣山部屋)が、大関・貴景勝(常盤山部屋)、前頭筆頭・高安(田子ノ浦部屋)との巴戦による優勝決定戦を制して初優勝を果たしました。
3人による優勝決定巴戦は、曙と貴ノ浪と貴闘力で争った1994年春場所(曙が優勝)以来28年ぶりとなりました。
単独トップの高安と1差の11勝3敗で千秋楽を迎えた阿炎は、本割で高安と直接対決。
過去4勝4敗と互角も今年の2度の対戦はいずれも勝っており、その勢いのまま突き倒しで高安を下して12勝3敗で優勝決定戦へと持ち込みました。
前日に「自分の相撲を思い切り取れるか。そこだけ」と話していた通り、決定戦でも平常心を貫いて高安、貴景勝に執念の2連勝。
今年は6場所で全て優勝者が異なり、7月の名古屋場所の逸ノ城、9月の秋場所の玉鷲に続き、3場所連続の平幕優勝は史上初となりました。
阿炎は今場所、8日目まで1敗をキープしたが、勝ち越し目前で2連敗。
立て直して白星を積み重ね、前日には豊昇龍との3敗同士の対決に土俵際の逆転で勝利し、優勝争いに踏みとどまっていました。
2020年には7月場所の前と場所中に接待を伴う飲食店での会食が発覚。
新型コロナウイルス対策のガイドライン違反で一度は引退届を提出したが受理されず、3場所出場停止処分を受けました。
一時は小結も務めた男が幕下まで転落したが「変わった自分を見てほしい」と改心。
稽古を重ね、幕下では2場所連続優勝を果たしました。
十両も2場所で通過すると、昨年の九州場所で幕内復帰。
今年は7月末に右肘と左足首を手術して秋場所を全休したが、「リハビリの場所」と位置付けた復帰場所で白星を重ね、初の賜杯を手にしました。
東前頭16枚目の照強(伊勢ケ浜部屋)は同2枚目・逸ノ城(湊部屋)に上手投げで敗れ、15戦全敗となってしまいました。
幕内での15戦全敗は、1991年名古屋場所の板井以来31年ぶり5人目。
照強は169センチの小兵ながら奮闘し、豪快な塩まきでも人気を集めています。
この日も塩まきでは大歓声を浴びたが、敗戦の瞬間は館内にため息が響きました。
来場所の十両転落は確実な状況となっています。
兵庫県の淡路島出身で、1995年1月17日の阪神大地震当日に生まれており、誕生日を迎える来場所で巻き返しを狙います。
幕内の同一場所での15戦全敗は、過去には1942年1月の春場所(当時は年2場所)で桂川、63年九州場所の清勢川、88年春場所の佐田の海、91年名古屋場所の板井しかおらず、ある意味全勝よりも珍しいです。
十両の15戦全敗も過去7度だけです。
幕下以下は1場所7番の取組、同じ星勘定の力士同士が対戦するため、1/128(2のマイナス7乗)の確率で全敗力士が出る可能性があります。
これに対して十両、幕内は負けが込んでくると休場する力士が多いため、全敗が出にくいです。