テレビドラマシリーズ「横溝正史シリーズ」などで知られる、俳優の古谷一行（ふるや・いっこう、本名＝かずゆき）さんが8月23日、亡くなりました。
所属のフロム・ファーストプロダクションが2日、発表しました。
78歳でした。
古谷一行さんは1944年（昭和19）1月2日生まれ、東京都出身。
中央大学在学中に俳優座養成所に入り、研修生をへて1967年に入団し同年の舞台「アンナ・カレーニナ」でデビューしました。
1977年にTBS系でスタートした「横溝正史シリーズ」（毎日放送制作）の名探偵・金田一耕助役で人気を集めました。
1982年からはテレビ朝日系「土曜ワイド劇場」の「混浴露天風呂連続殺人」シリーズで主役・左近太郎役を演じ、25年演じる当たり役となりました。
川島なお美さん（故人）の相手役を務めた、1997年の日本テレビ系「失楽園」も話題となりました。
2019年12月にフジテレビ系で放送された、NEWSの加藤シゲアキさんが金田一耕助を演じた「悪魔の手毬唄～金田一耕助、ふたたび～」に磯川常次郎警部役で出演し、新旧金田一役俳優の共演も実現しました。
色気ある低音の声でドラマを中心に活躍した古谷さん。
人生を変えた役が33歳の時に出合った名探偵・金田一耕助です。
「横溝正史シリーズ」「名探偵・金田一耕助シリーズ」で29年にわたって演じました。
古びた着物やボロいはかまで、ボサボサの髪の毛をかきむしりました。
「精神を解放する男を演じるのは無理」と自信もなかったが、数を重ねるにつれて「“俺の金田一”と思えるようになった」と話していました。
推理に行き詰まると「逆立ち」するという、新たな金田一像をつくり上げました。
げたを履いて全力で走り、いびきをかいて寝るなど自由奔放で、とぼけた一面もありました。
この明るさがお茶の間で受け、撮影所前に“出待ち”の女子高生が集まるほどでした。
金田一役はシリーズが終了する2005年まで、29年にわたって演じました。
これまで映画やドラマで金田一耕助を演じた俳優は28人。
古くは片岡千恵蔵さん（故人）に始まり、高倉健さん（故人）、渥美清さん（故人）、石坂浩二さん、西田敏行さんら時代を代表する名優が名を連ねています。
片岡さんが演じた初代はスーツにネクタイのスタイルで銃を使い、渥美さんはくたびれたスーツに麦わら帽子姿で演じるなど、それぞれの装いや役作りにも個性が反映されました。
古谷さんはTBS系ドラマシリーズで10代目の金田一に“就任”。
原作に忠実に描かれていたとされ「映画なら石坂、ドラマなら古谷」と言われるほどの人気を博しました。
シリーズの放送期間は29年に及び、金田一像をお茶の間に定着させたのは、古谷さんの功績と言えます。
テレビ朝日「混浴露天風呂連続殺人」シリーズも25年間放送されるなど、出る作品が次々に長期シリーズ化されました。
同作では毎回、女性と露天風呂に入るという役で「この仕事が入ると心が休まる」と楽しんでいました。
共演者、スタッフ、視聴者の誰からも愛されました。
関係者は「とにかく真面目。1作ごとに集中して取り組む役者さんでした」と振り返っていました。
セクシー女優との不倫でも世間を騒がせたが、潔く本人が認めたことで評価を上げる結果となりました。
不倫ドラマでも活躍し、TBSの「金曜日の妻たちへ」、日本テレビの「失楽園」に出演しました。
「不倫男を演じると右に出る者はいない」と言われました。
近年は病気とも闘いながら、NHK連続テレビ小説「ひよっこ」（2017年）ではヒロインの祖父役を好演するなど存在感を発揮。
昨年１月公開の映画「おもいで写眞」が最後の出演作となりました。
私生活ではテニスやゴルフが好きで、40代でテニスは週5回、ゴルフは50歳時に年間100ラウンド超とアクティブでした。
古谷さんの息子でKjこと降谷建志さんがボーカル、ギターのロックバンドDragon Ashは8月26日、公式ツイッターなどで、同日の山梨県での音楽イベントを出演辞退すると発表していました。
理由について、「Kjの体調不良のため」としていたが、 古谷さん死去から3日後のイベントでした。
降谷さんは8月31日にインスタグラムを更新し「＃体調はもうほぼ大丈夫！」とハッシュタグを添えて記していました。
古谷さんの死因は明らかにされていないが、その上で事務所担当者は「『体調が悪い』とのことで、大事を取って検査をすることになりまして。『入院してくるわ』と言って検査のために病院に泊まったのですが…。本当に急死で…。トレーニングに通って復帰に向けて頑張っている矢先でした」とショックを隠せませんでした。
合掌。