ウクライナ戦争を世界大戦に発展させる
https://tanakanews.com/221119ukraine.htm
11月15日の午後、ポーランドの対ウクライナ国境近くのプシェボドフ村に1発のミサイルが着弾し、村の2人が死亡した。
ミサイルはウクライナから飛んできたものだった。
それ、誤情報ですよ。ウクライナ軍の防空ミサイルがポーランドに落下した、と正しく報じませんか? https://t.co/8pGUsg9PEz
— J Sato (@j_sato) November 15, 2022
ロシアとの戦場になっているウクライナの上空は、防空レーダーなどによってNATOに詳細に監視されている。
ウクライナからポーランドに飛んだミサイルは、瞬時にNATOによつて確認され、即時にポーランドを含むNATO加盟諸国に伝達されたはずだ。
だがポーランド政府(外務省)は事件発生後まもなく、着弾したのは「ロシア製のミサイル」だと発表し、ポーランドに駐在するロシアの大使を呼びつけて詰問した。
実のところ、着弾したのは「ロシア製」でなく、ロシアの前身であるソ連が開発したS300地対空迎撃システムのミサイル(5V55)だった。
S300はソ連時代にロシアやウクライナなど旧ソ連諸国に配備され、ウクライナは冷戦後にソ連から独立した後もそのままS300を使用し、ミサイル部分は自国のキエフ工場で製造してきた。
ポーランドに着弾したのは「旧ソ連が開発したウクライナ製のミサイル」だった。
ミサイルの胴体部分にはウクライナ語で製造番号などが記載されており、プシェボドフ村に着弾し爆発したミサイルの破片もウクライナ語の製造番号が読み取れた。
ポーランド政府が着弾の現場を調べて「着弾したのはウクライナのミサイルのようだ」と言い直したのは事件発生から1日たった後で、それまでポーランド政府は不正確なロシア犯人説を言い続けていた。
ウクライナ戦争の戦闘がNATO加盟国に飛び火したのは2月の開戦以来、これが初めてだった。
ポーランド政府はロシアを非難するだけでなくNATOにも連絡し、加盟国であるポーランドの安全が脅かされているので条約の第4条を発動して対策を協議してほしいと要請した。
「ロシアがミサイルを撃ち込んできたので、NATOとして反撃するかどうか協議してほしい」という意味だ。
NATO4条の協議は、集団的自衛権の行使である5条を発動する際の前提となる。
「ロシアが、NATO加盟国であるポーランドをミサイルで攻撃した」という歪曲話を「事実」とみなし、ロシアを敵として4条から5条への発動に進むと、米国が主導するNATOとロシアが世界大戦に突入する構図ができあがる。
11月15日のミサイル騒動は、米露が戦う「第三次世界大戦」を引き起こすための「トンキン湾事件(ベトナム戦争を誘発した捏造の事件)」になりかねなかった。
NATOの事務局や米国は結局、ロシア犯人説を採用しなかった。
ポーランドに着弾したのがロシアでなくウクライナのミサイルだったことは着弾した瞬間からNATOのレーダーに映っており、NATOや米国がロシア犯人説を採用しなかったのは「常識」で考えると当然だ。
だが、常識が通らず、ウソと非常識が次々に延々とまかり通るのがウクライナ戦争だ。
ポーランド政府は、レーダー情報などから、着弾したのがウクライナのミサイルだったことを最初から知っていたはずだが、意図的にそれを無視してロシア犯人説をとった。
NATOや米国も、ロシア犯人説こそ正式採用しなかったが、誰が撃ったのかわからないという姿勢をとり、米国側のマスコミがロシア犯人説を喧伝するのを誘発した。
NATOや米国は、ポーランド政府がウクライナ犯人説に転向するのと前後して「着弾したのはウクライナのミサイルのようだ」と言い出した。
ウクライナ犯人説が優勢になったが、それで確定したわけでなく、この事件の全容は曖昧なままだ。
11月15日、ロシア軍がウクライナのエネルギーインフラをミサイル攻撃しており、露軍が飛ばしてきたミサイルをウクライナ軍がS300で迎撃している時に、迎撃用ミサイルの1発が正しく発射されずポーランドに飛んでしまった可能性がある。
米高官の中には「だから今回の事件で悪いのはロシアだ」と言っている者がいる。
民間専用の設備を破壊すると戦争犯罪だが、露軍が攻撃したのは軍民共用の設備なので戦争犯罪にならないという説もある(ウクライナがロシアのインフラを攻撃してきたので露軍が報復した)。
どちらにせよ、ウクライナ軍が発射した迎撃ミサイルの1発がポーランドに着弾したことは、NATOもポーランドもウクライナもレーダーで瞬時に知ったはずだ。
それをウクライナがすぐに認めて発表していたら、今回のような世界大戦につながりうる事態にならなかった。
ゼレンスキー大統領のウクライナ政府は、事件発生後すぐにロシア犯人説を声高に言い出し、翌日にポーランドがウクライナ犯人説に転向した後もロシア犯人説に拘泥し、転向したポーランドに対して「ウクライナのミサイルだというなら証拠を見せろ」と言い続けた。
🇵🇱攻撃を🇷🇺軍のせいにしようと思っていたら、🇺🇦軍の仕業とバレてしまって、途方に暮れる西側首脳陣 https://t.co/2iaoFb1vmq
— J Sato (@j_sato) November 17, 2022
NATOや米国がウクライナ犯人説に傾き、米高官がウクライナ政府に電話してロシア犯人説への拘泥を批判したと報じられた後、ようやくゼレンスキーはこの件について沈黙した。
ウクライナではメディアの論調がゼレンスキーに批判的になったが、ゼレンスキーは批判的なメディアを潰しにかかっている。
こうした経緯からして、ミサイルがポーランドに飛んだこと自体は偶発的な事件だったとしても、その直後に米政府の担当者がウクライナとポーランドに連絡してロシア犯人説を採らせた可能性がある。
米国は2014年の政権転覆(マイダン革命)以来、ウクライナ政府を傀儡として動かしている。
レーダーの記録や現場のミサイル破片の製造番号など、物的証拠があまりに明白なのてポーランド政府が転向し、はしごを外されて犯人扱いされたゼレンスキーが「証拠を見せろ」と騒ぎ、米当局者が電話して黙らせた。
そんな経緯が感じ取れる。
ロシアは戦争プロパガンダの戦いでは、米英にボロ負け、というか不戦敗している。
今回のミサイル騒動で、ロシア犯人説は引っ込められたもののウソと確定しておらず、ロシアへの濡れ衣は晴らされていない。
4月初めの「ブチャ虐殺事件」も、ロシアに濡れ衣がかけられたままだ。
今回ロシアにかけられた戦争犯罪の濡れ衣はいくつもあるが、いずれに対してもロシアがあまり反論せずに話が終わっている。
2014年7月にウクライナ東部のドネツク上空を飛んでいたマレーシア航空機MH17便が何者かに撃墜された事件について、オランダの裁判所が11月18日に、ウクライナ軍でなくロシア人らの仕業だと結論づける判決を出した。
ウクライナ政府は、当日のレーダーの記録を裁判所に出すことも拒否しており証拠を隠匿しているが、オランダの裁判所はウクライナ(と米NATO)に味方してロシア側の犯行と断定した。
実際のMH17便は、ウクライナ内戦でウクライナ軍が撃った流れ弾に当たって墜落した可能性が高い。
ロシアは判決を非難している。
この濡れ衣も晴らされないままだ。
https://www.theburningplatform.com/2022/11/14/fourth-turning-winter-of-death/
ロシアはプロパガンダの戦いで連敗しているが、戦場の戦いではおおむね優勢だ。
「名を捨てて実を取る」の観がある。
露軍は巧妙な攻撃でウクライナのエネルギーインフラの半分近くを破壊し、ウクライナはこれからの厳冬期、多くの地域で居住不能になり、国民の戦意喪失と難民化が加速する。
ウクライナは厳しい戦いを迫られている。
今後の厳冬期に居住不能になるのはウクライナだけでなく、ロシアからの石油ガス輸入を急減したドイツなど西欧諸国も同様だ。
ドイツでは燃料不足が悪化して停電も予測され、市民生活が困難になり、経済成長が止まって自滅的な退化が進んでいる。
ウクライナ戦争は世界大戦の懸念すら高めてしまい、ドイツなど欧州にとって何の利得もない。
欧州人は馬鹿だ。
露軍は10月後半、ドニエプル川右岸のケルソン(ヘルソン)から撤収してウクライナ軍に明け渡しており、これが「露軍の惨敗」として米国側で喧伝されている。
だが、ロシアはウクライナで長い戦争を予定しており、露軍とウクライナ露系住民の犠牲を最小限にするため、ウクライナ軍が米欧から支援されてしつこく攻撃してくる場合は撤退するようにしている。
ウクライナ戦争が長引くほど、ドイツなど欧州の自滅が進み、欧州が対米従属とロシア敵視をやめて親露・非米側に転換する可能性が強まる。
欧州の非米化が、ロシアと米多極派が共有するウクライナ戦争の隠れた目標になっている。
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