<介護職>低い賃金で疲弊 相次ぐ離職「仕事夢ない」
毎日新聞 4月27日(日)8時38分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140427-00000006-mai-soci
過酷さの割に賃金が低いと指摘される介護職。
政府も手は打ってきたものの、依然、他業種との格差は埋まらない。
人材確保には、賃金アップか外国人の活用か--。
ここへきて国の姿勢も揺れている。
【遠藤拓、佐藤丈一、中島和哉】
常夜灯がぼんやり照らす廊下を、おむつやタオル、ごみ箱を積んだ台車が行き来する。
11日深夜。
東京都葛飾区の特別養護老人ホーム(特養)「葛飾やすらぎの郷」に勤めて3年目、生活援助員の宮崎梓さん(22)の夜は長い。
1フロアには約40人が入居する。
大半は80~90歳代で7割は認知症だ。
同僚と2人、一晩で4回は巡回し、おむつを替え、トイレを介助し、体位を変える。
消灯後も徘徊(はいかい)する人はいるし、繰り返し呼び出しボタンを押す人もいる。
ひと息つけるのは午後11時の食事と2時間の仮眠の間だけ。
「朝方トイレに行きたくなりそう。でも、呼ばないようにする」。
そう気遣う女性入居者に、宮崎さんは「気にしなくていいんですよ」とほほ笑んだ。
月4~5回の夜勤日は、午後5時前から翌朝10時前までの勤務。
しかし、この日は引き継ぎ書類の記入やシーツの交換に追われ、朝食にありつけたのは昼近くになっていた。
◇平均を9万円下回る
正規職で介護福祉士の資格を持つ宮崎さんの月給は、手取りで約18万円。
15万円を切るという同業の友人よりは「恵まれている」と感じる。
とはいえ、介護労働者の賃金は他業種に比べて低い。
全国労働組合総連合のアンケート調査(昨年10月)では、手当を除く正規職の平均賃金は20万7795円。
厚生労働省調査の全産業平均(29万5700円)を約9万円下回る。
長らく介護は主婦による家事労働とみなされてきた。
職業としての確立が遅れ、低賃金から抜け出せない。
介護労働安定センターによると、介護職の離職率は17.0%(2011~12年)で、全産業平均(14.8%)を上回る。
求職者1人に働き口がいくつあるかを示す2月の有効求人倍率は2.19倍。
全産業平均(1.05倍)の2倍だ。
「家族を養えないからな」。
首都圏の介護施設に勤める30代の男性介護福祉士は、結婚を機にそう言って「寿退社」していく仲間を大勢見送ってきた。
この道7年目。
専門学校の同期80人のうち、続けているのは十数人。
自身の手取りは初任給から2万円ほど上がり、ようやく月約23万円となった。
が、同業の妻は初めて産んだ子の育休中。
共働きでなければ生活は成り立たず、保育所を確保できるかが不安でならない。
「仕事に夢を見られない。このままなら、なり手はどんどんいなくなる」
日本海に臨む金沢市郊外の特養「やすらぎホーム」。
入居する母(83)の昼食介助に隣の石川県野々市市から訪れる主婦(64)は通ううちに介護職員の疲弊を知り、入居者の家族と職員の処遇改善を求める署名に取り組むようになった。
母親が入居したのは06年10月。
脳梗塞(こうそく)で半身不随となり、食事、排せつなどすべてに介護が必要だ。
感情が高ぶるとパジャマを歯で切り裂く。
そんな母をてきぱき世話してくれる職員たちも、入居当初からの顔なじみは3人に1人ほど。
慣れた頃にはいなくなるからだ。
この主婦は訴える。
「親の面倒を見るかのようにしてくれた職員が、どんどん辞めている。専門職にふさわしい給料が必要です」
◇政府、揺れる人材確保策 外国人活用に懸念、報酬増は負担
http://mainichi.jp/shimen/news/20140427ddm003010093000c.html
厚労省は28日、社会保障審議会を舞台に、15〜17年度の介護報酬の使い道について議論を始める。
介護報酬とは保険料と税金、利用者の自己負担(1割)を元に、介護施設に払われる公定料金。
今年末に報酬の引き上げを決め、来年度から介護職員の待遇改善を実現できるかどうかが焦点だ。
政府は09年度の介護報酬改定で「人材確保」を掲げ、00年度の制度創設以来、初めて報酬を引き上げた(3%増)。
介護職の賃金は月額平均で9000円増えたという。
また11年度までは施設経営者への交付金として税金4000億円を投入、12年度は再び介護報酬を使った。
計算上、一連の対策で押し上げられた賃金は3万円分。
ただし、介護報酬には人件費にどれだけ回すという決まりはなく、経営者に委ねられている。
厚労省の特養の内部留保調査(11年度末時点)によると、回答した1662施設の平均は約3億1000万円。
その一方で、葛飾やすらぎの郷を運営する社会福祉法人「すこやか福祉会」は特養の介護報酬の人件費率が65%程度で内部留保はほぼない、という。
関係者は「人件費率は7割近くで赤字になる。内部留保をため込む法人は人件費を削って介護の質を落としているのでは」と指摘し、報酬に常勤労働者の比率に応じて加算する仕組みを作れば解決するとみる。
介護現場での勤務経験を持つ白梅学園大の森山千賀子教授(介護福祉学)は
「介護を一生の仕事にできる環境整備には、一時的な交付金より介護報酬の方がいい。ただ、単純に上げるだけでは処遇改善につながるとは限らず、資格や研修の充実など介護の質の向上を促す加算の仕組みを整えるべきだ」
と話す。
高齢化に伴い、今後都市部を中心に75歳以上人口が急増する。
埼玉、神奈川両県では30年で倍増だ。
介護職員は全国に約150万人。
国は将来、約100万人不足するとみており、政府の産業競争力会議は外国人の積極活用を打ち出した。
これに対し田村憲久厚労相は、外国人を無制限に受け入れると業界全体の賃金水準低下を招くと懸念する。
従来も経済連携協定(EPA)に基づいてインドネシアなどの介護労働者1000人強を受け入れてはきたが、目的は「研修」。
厚労省は介護報酬で賃金を増やし、日本人中心に人手不足を解消していく考えだ。
それでも、月平均の介護保険料は制度発足時の2911円から4972円(65歳以上)に膨らんだ。
保険料などが財源の介護報酬で賃金増を図れば、5000円を突破するのは確実だ。
負担が増すお年寄りや、保険料を折半する労使の理解を得られる保証はない。
社会福祉法人の売買横行 理事長私物化、数億円で取引も
朝日新聞デジタル 5月19日(月)7時51分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140519-00000010-asahi-soci