安倍晋三は究極の売国を達成できるか  2 | きなこのブログ

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大失業時代が到来しています。大失業の恐ろしさを歴史から学ばなければならない。『大失業は戦争への道につながっている』

日本を明るい未来へ…

 
食に安さを求めるのは命を削ること
 
確かにTPPによって関税が下がれば、米国から安い牛肉や豚肉が入ってくるため、牛丼や豚丼は安くなる。
 
しかし、関税を下げれば当然関税収入も減る。
 
日本の関税収入は、税収60兆円の内の1・2兆円ほどだ。
 
TPPによってその大半が減れば、他で補わなければならなくなるため、結局のところ消費者の税負担は増える。
 
さらに問題なのは、米国やオーストラリアの牛肉や豚肉を食べ続けることは極めて健康リスクが高いということだ。
 
米国では牛の肥育のために女性ホルモンのエストロゲンなどが投与されている。
 
これは発癌性があるとして、EUでは国内での使用も輸入も禁止されている。
 
実際、EUでは米国産牛肉の輸入を禁止してから六年間で、乳癌による死亡率が大きく下がったというデータもある。
 
日本では国内使用は認可されていないが、輸入は許可されているため国内に入ってきている。
 
また、ラクトパミンという牛や豚の餌に混ぜる成長促進剤にも問題がある。
 
これは人間に直接に中毒症状も起こすとして、ヨーロッパだけではなく中国やロシアでも国内使用と輸入が禁じられている。
 
日本でも国内使用は認可されていないが輸入は素通りになっている。
 
さらに、米国の乳牛には遺伝子組み換えの牛成長ホルモンが注射されている。
 
米国ではこれが認可された1994年から数年後には、乳癌発生率が7倍、前立腺癌発生率が4倍という論文が出されたため、今やスターバックスやウォルマートでも、わざわざ「成長ホルモンを投与した牛乳・乳製品は扱っていません」と表示するようになっている。
 
もちろん日本でもこの牛成長ホルモンは認可されていないが、やはり輸入を通してどんどん入ってきている。
 
さらに、米国の牛にはBSE(狂牛病)の危険性もある。
 
日本はこれまで、BSEの発症例がほとんどない20カ月齢以下の牛に限定して輸入を認めていた。
 
ところが米国から「TPPに参加したいなら規制を緩めろ」と言われたため、「入場料」として30カ月齢以下にまで緩めてしまった。
 
また、米国ではBSE検査率は一%未満でほとんど検査されておらず、しっかりとした危険部位の除去も行われていない。
 
 
食の安全基準はすでに緩められている
 
政府はTPPでは国際的な安全基準を順守することが規定されているだけだから日本の安全基準は影響を受けないと主張しているが、国際基準は日本の基準よりも緩い
 
それ故、国際基準を守るということは、基準を緩和するということだ。
 
既に日本政府は米国から「科学的根拠」が示せないなら規制を緩和しろと圧力がかかることを踏まえ、いつでも規制を緩和できるように準備を整えている。
 
例えば、30カ月齢以下にまで緩めてしまった米国産牛肉輸入の月齢制限を撤廃する準備をすでに終えている。
 
国民への説明と完全に矛盾している。
 
米国は、遺伝子組み換え(GM)食品は安全性検査によって安全が明らかになっているのだから、「GMを使用していない」と表示することは消費者を惑わす誤認表示だと主張している。
 
「GMが安全でない」という科学的根拠が示せないならやめろと迫るであろう。
 
GMのもう一つの懸念は、我々が大量に輸入しているGM大豆やGMトウモロコシには発癌性が確認されているグリホサート系の除草剤がかけられていることだ。
 
グリホサート系薬剤をかけても枯れないように遺伝子を組み換えたのがGM大豆やGMトウモロコシなのだから。
 
それを我々が食べているのだ。
 
しかも、耐性雑草が増えてきたため、米国では残留基準が緩められ、さらに散布量が増えているのが実情だ。
 
近年、我々の食べている大豆やトウモロコシのグリホサート系薬剤の残量濃度はさらに高まっている。
 
さらに、防カビ剤も大きな問題だ。
 
日本では収穫後に農薬をかけることが認められていないが、米国のレモンなどの果物や穀物には、日本への長期間の輸送でカビが生えないように農薬(防カビ剤)をかけなくてはならない。
 
そのため、半年経っても腐らずピカピカのままだったという話もある。
 
これは、米国からの圧力に屈し、防カビ剤を食品添加物に分類する事で日本への輸出を許可する事にしているからだ。
 
ところが、食品添加物は食品パッケージに表示する義務があるため、米国は、こんどは、それが不当な差別だと言い始めた。
 
そのため、TPPの日米二国間交渉で、日本はさらに規制を緩めることを約束したことが米国側の文書で発覚した。
 
当時、政府はそんな約束は断固していないと言い張っていたが、TPP付属文書を見ると、日本政府が二年前に米国の要求に応えて規制を緩和すると約束したと書いてある。
 
つまり、輸入農産物は、成長ホルモン(エストロゲン)、成長促進剤(ラクトパミン)、GM、除草剤(グリホサート)の残留、収穫後農薬(イマザリル)などのリスクがあり、まさに、食に安さを追求することは命を削ることになりかねない。
 
このような健康リスクを勘案すれば、実は、「表面的には安く見える海外産のほうが、総合的には、国産食品より高い」ことを認識すべきである。
 
そこで、外食や加工品も含めて、食品の原産国表示を強化することが求められるが、表示に関連しては、「国産や特定の地域産を強調した表示をすることが、米国を科学的根拠なしに差別するもの」としてISDSの提訴で脅される可能性もある。
 
 TTIP(米EUのFTA)でも米国はEUのパルメザンチーズなど地理的表示を問題視している。
 
ところが、米国自身は食肉表示義務制度で原産地表示を義務付けている。
 
さらに、これがカナダとメキシコから不当差別としてWTO(世界貿易機関)に訴えられ、米国が敗訴する皮肉な事態になっている。
 
つまり、そもそもTPPのみならず食料の原産地表示の困難性が増してきている事態は深刻である。
 
 
米国の要求に応え続ける「アリ地獄」
 
農産物関税のみならず、政権公約や国会決議で、TPP交渉において守るべき国益とされた食の安全、医療、自動車などの非関税措置についても、全滅である。
 
軽自動車税の増税、
自由診療の拡大、
薬価公定制の見直し、
かんぽ生命のがん保険非参入全国2万戸の郵便局窓口でのA社の保険販売、
BSE(牛海綿状脳症)、
ポストハーベスト農薬(防かび剤)など食品の安全基準の緩和、
ISDS条項への賛成など、
日本のTPP交渉参加を認めてもらうための米国に対する「入場料」交渉や、
参加後の日米平行協議の場で「自主的に」対応し、
米国の要求が満たされ、
国民に守ると約束した国益の決議は早くから全面的に破綻していた。
 
一番わかりやすいのは郵政解体である。
 
米国の金融保険業界が日本の郵貯マネー350兆円の運用資金がどうしても欲しいということで、「対等な競争条件」の名目で解体せよと言われ、小泉政権からやってきた。
 
ところが、民営化したかんぽ生命を見てA社は、「これは大きすぎるから、これとは競争したくない。TPPに日本が入れてもらいたいのなら、『入場料』としてかんぽ生命はガン保険に参入しないと宣言せよ」と迫られ、所管大臣はしぶしぶと「自主的に」発表した。
 
それだけでは終わらなくて、その半年後には、全国の2万戸の郵便局でA社の保険販売が始まった。
 
これが「対等な競争条件」なのか。
 
要するに、「市場を全部差し出せば許す」ということだ。
 
これがまさに米国のいう「対等な競争条件」の実態であり、それに日本が次々と応えているということである。
 
しかも、「TPPとも米国とも関係なく自主的にやったこと」と説明しておきながら、今回TPPが決まって協定の付属文書を見たら、「米国の要請に日本が応えた」とちゃんと書いてある。
 
実は決議違反だった事を今になって平然と認めている。
 
さらに驚くことは、今回の付属文書には、米国投資家の追加要求に、日本は規制改革会議を通じてさらなる対処をすることも約束されている。
 
TPPの条文でなく、際限なく続く日米二国間協議で、巨大企業の経営陣の利益のために国民生活が犠牲になる「アリ地獄」に嵌まっている。
 
それにしても、法的位置づけもない諮問機関に、利害の一致する仲間(彼らは米国の経済界とも密接につながっている)だけを集めて国の方向性を勝手に決めてしまう流れは、不公正かつ危険と言わざるを得ない。
 
 
思考停止的な米国追従を止めない限り問題は永続する
 
米国への譲歩は水面下ですでに進んでいる。
 
米国では、いま誰もTPPに賛成していない。
 
TPPを推進してきた製薬会社などから数年で5億円も献金を受けている共和党の中心人物ハッチ議員は「新薬のデータ保護期間を20年とか12年まで延長しろと言ったのに8年とか5年にしかなっていない。これでは著しく不十分で批准できない」と憤慨している。
 
一方、失業増大の懸念などからTPPに反対してきた米国の与党民主党は、想定以上にひどいと怒っている。
 
賛成派も反対派もこれはダメだと言い、クリントン、トランプのどちらが大統領になっても、公約を反故にしないかぎりは、今の状態ではTPPは米国で成立する見込みはない。
 
そこで日本が動いている。
 
駐米公使が「いま条文の再交渉はできないが、日本が水面下で米国の要求をまだまだ呑んで、米国の議会でTPP賛成派が増えるようにすることは可能だ」と漏らした。
 
例えば、米国の豚肉業界は、「日本が関税を大幅削減してくれて輸出が増やせてありがたいと思っていたら、国内対策で差額補填率を引き上げるという。それで米国からの輸入が十分増えなかったら問題だ。その国内対策をやめろ」と要求してきている。
 
この関連でもう一つ重大な事実がある。
 
一昨年の秋に米国議会で、オバマ大統領に一括交渉権限を与える法案がぎりぎり1票差で通った。
 
あのとき、日本政府はロビイストを通じて、民主党のTPP反対議員に多額のお金を配って賛成を促したという。
 
「日本は牛肉、豚肉をはじめ農産物でこんなに譲ったのだから、賛成しないと米国が損をしますよ」とでも説得したのであろうか。
 
かたや、日本国内では、農家に「何も影響はないから大丈夫」と言っている。
 
これが「二枚舌」の「売国」の実態である。
 
政府は「規模拡大してコストダウンで輸出産業に」との空論をメディアも総動員して展開しているが、その意味は「既存の農林漁家はつぶれても、全国のごく一部の優良農地だけでいいから、大手企業が自由に参入して儲けられる農業をやればよい」ということのように見える。
 
しかし、それでは、国民の食料は守れない。
 
関係者が目先の条件闘争に安易に陥ると、日本の食と農と地域の未来を失う。
 
TPP農業対策の大半は過去の事業の焼き直しに過ぎないばかりか、法人化・規模拡大要件を厳しくして一般の農家は応募が困難に設計され、対象を「企業」に絞り込もうとしているのも露骨である。
 
また、収入保険を経営安定対策かのように提示しているが、これは過去5年の平均米価が9000円/60㌔㌘なら9000円を補填基準収入の算定に使うので、所得の下支えとはまったく別物だ。
 
基準年が固定されず、下がった価格を順次基準にしていくのだから「底なし沼」である。
 
米国では強固な「不足払い」(所得の下支え)に収入保険がプラスアルファされているのに、収入保険だけを取り出して米国を見本にしたというのもごまかしである。
 
TPPの影響が次第に強まってきて、気が付いたときには「ゆでガエル」になってしまう。
 
現場で頑張ってきた地域の人々はどうなってしまうのか。
 
全国の地域の人々とともに、食と農と暮らしの未来を崩壊させないために主張し続ける人々がいなくてはならない。
 
まず、食料のみならず守るべき国益を規定した政権公約と国会決議と整合するとの根拠を国民に示せない限り、批准手続きはあり得ない。
 
なお、大統領選後のオバマ政権のレームダック期間にTPPが米国で批准される可能性は極めて低いが、クリントン大統領の場合は、「現状のTPPには反対」なのだから、日本が一層譲歩させられてTPPが成立することになりかねない。
 
かたやトランプ大統領なら、「TPPには署名しない。二国間FTAでよい」ということだから、日本が一層譲歩させられた日米FTAが成立しかねない
 
米国で批准できそうにないから大丈夫との他力本願は通用しない。
 
対米従属の呪縛から解放されないかぎり問題は永続する
 
だまされても、だまされても、おこぼれを期待し、見せしめを恐れて従い続ける選択に未来はない。
 
真っ向から対峙することで未来は切り開けることを先の参院選結果も示している。
 
国民の命を守る使命に誇りを持ち、ひるむことなく前進するしかない
(詳しくは『悪夢の食卓』(KADOKAWA、2016年)参照)。