国会が国民に対して憲法改正の発議 | きなこのブログ

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壮大な物語(saga)の始まり:改憲までの道のりは長く険しい
http://suinikki.blog.jp/archives/63233180.html

昨日、参議院議員選挙の投票開票が行われました。

結果は、自民党と公明党の政権与党が勝利を収めました。

また、改憲に賛成・反対のくくりになると、今回の選挙の結果、改憲賛成ブロックが164(おおさか維新・日本のこころを大切にする会の非改選、無所属を含む)となり、改憲の発議に必要な参議院議員の3分の2を2議席超える結果になりました。

民進党はほんの少しですが、無党派からの支持を獲得することに成功し、改選時は下回りましたが、前回よりは挽回しました。

共産党は、例の「人殺し予算発言」が響いてそこまで党勢を拡大することはできませんでした。

自公は設定した勝敗ライン61議席を超えたので、まずは勝利と言えます。

皆で「アベノミクス選挙だ」と言っていたのですから、とりあえず「アベノミクスは民意の賛意を得た」と言うことが出来ます。

”Japanese voters have bought Abenomics.”となりました。

今回の参院選挙の争点は、公式的(自民党が設定しようとしたもの)には「アベノミクス、これをそのまま続けるか」ということですが、野党やメディアは「改憲が可能となる参院での改憲勢力が議席数の3分の2を占めるかどうか」という観点で報道しました。

そもそも今回の参議院議員選挙では当初、衆議院の解散に伴う総選挙と同日選挙(ダブル選挙)になる可能性もありました。

ところが、安倍首相は衆院解散を断念しました。

この時点で、改憲に関しては及び腰である、と言うことが出来ます。

2014年の総選挙と今回の参院選の争点は、アベノミクスでした。

もちろん、2014年の選挙の後、安保法制を成立させましたので、争点でないことを平気でやるのは安倍政権の得意技です(「新しい判断」という言葉を安倍首相は使ってきました)。

しかし、彼らの悲願の本丸である改憲に関しては衆議院、参議院それぞれの院で100名、50名の議員の賛成で発議が行われ、本会議で3分の2の議員の賛成で可決となり、国民投票にかけられます。

この手続きについては、慎重さを期さなければなりません。

いささかの瑕疵もあってはなりません。

そうなると、まずは改憲の発議を行う前に、衆院解散を行って、直近の民意を問うことが憲政の常道です。

今回はそのチャンスでした。

しかし、安倍首相は衆院解散をしての同日選挙に踏み切れませんでした。

それは、同日選挙にするとそれは「改憲」を大きく打ち出すことになり、

そうなれば、いくらふがいない野党勢力と言ってもまとまる口実を与えてしまい、

また選挙が盛り上がってしまい、

衆院で改憲勢力で3分の2を取れない、

自民党が解散前の議席を割り込むなんてことになってしまったら、

安倍首相の責任問題に発展して、辞任ということになります。

そうなれば、おじいちゃんを乗り越えるチャンスを失うことになります。

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私は今回の選挙結果は、「日本人の絶妙のバランス感覚が発揮されたもの」と考えます。

野党がまとまって行動したことに評価を与えつつ、3分の2をほんの少し超える程度の議席(現在流行りの週刊文春のスクープで減らされることだってあり得ます)を与え、「ほれ、これで改憲ができるものならやってみろ」という態度を示したものと思います。

私は、今回自民党と公明党を中心とする改憲ブロックが参議院で3分の2を少し超える議席を獲得したと言っても、改憲はかなり困難である、安倍首相が考えているような改憲はほぼ不可能であると考えます。

それは国民投票で賛否を決めるまでの高いハードルがいくつもあるからです。
 
国民投票については総務省のウェブサイトが便利です。
 
※以下が総務省のウェブサイトのアドレスです↓

憲法改正の発議が衆議院では100名以上、参議院では50名以上の賛成で行われます。

そして、両院の憲法審査会でそれぞれ審議が行われます。

合同の審査会も可能です。

そして、両院の本会議で採決が行われます。

それぞれ3分の2以上の賛成で可決となります。

これで国会が国民に対して憲法改正の発議を行ったということになります。

この可決された日から60日から180日以内の日に国民投票が実施されます。

国民投票の投票率によって効果が無効になるということはなく、単純に過半数で賛成、反対が決まります。

その後、賛成となった場合には、内閣総理大臣は直ちに改正の手続きを行うということになっています。

国民投票では、単純に「日本国憲法を改正することに賛成ですか?反対ですか?」という設問ではありません。

改正する部分、部分それぞれに設問があって、「賛成・反対」に○をするという形になります。

こうして見てくると、国民投票は単純な話ではありません。

憲法改正の発議はまぁできます。

その時に、どのように改正するかという案を出さねばなりません。

日本国憲法は前文から第96条まであります。

理論的には全部を変える・修正することは可能でしょうが、実際には無理な話です。

設問の数や順番のこともあります。

設問が50問などとなってしまったら、いつもの選挙のように立って丸を付けていくだけでも大変な苦痛になります。

ですから、設問はできるだけ絞るということになるでしょう。

自民党の憲法改正草案にはいろいろなことが書かれていますが、あれを全部1回でやるということは無理です。

「この部分は良いけど、これは嫌」という人が大多数になるでしょう。

そうなると、自民党の内部でまずどの変更や修正を優先するかで意見が分かれるでしょう。

自民党は総裁一任ということにはなるでしょうが、その議論の過程で、様々な意見や批判が党内から出るでしょう。

これは大きな痛手です。

更には、公明党とも調整しなければなりません。

公明党今や看板だけになっているかもしれませんが、「平和の党・福祉の党」と謳っています。

「加憲」ということを言って、ある意味で「逃げ」を打っている状況ですが、そこまできたら、肚をくくり、自党の運命を決めねばなりません。

自民党の陰にいて補完勢力になって、批判の弾は自民党に受けさせるというオイシイ立場は終わりになります。

公明党は、自民党に同調するのか、しないのかの踏み絵を踏まされます。

そして、全国に約800万世帯にある創価学会の皆さんを説得しなくてはなりません。

ここも大きな関門です。

また、野党でも与党でもない「ゆ」党路線のおおさか維新や日本のこころを大切にする会の意向も問わねばなりません。

これらは少数ですが、彼らが抜けてしまえば3分の2に響くのですから、かなりの要求を飲まねばなりません。

政治家の最大の指名は選挙に勝つことですから、選挙協力という話も出るでしょうが、実際におおさか維新と争う自公の政治家たちからは不満が出るでしょう。

衆議院では自公で3分の2ですが、参議院ではこれらを含んで3分の2から2議席出ただけのことです。

自民党や公明党、その他の勢力から造反が出る可能性も高くなります。

それに備えて、自公側は民主党の内部に手を突っ込むことになるでしょう。

アクターが複雑に入り組んでいますから、そう簡単に、スムーズに憲法改正の発議が進むとは思いません。

もちろん、野党は激しく抵抗するでしょうし、院外の街頭では、抗議活動が行われるでしょう。

憲法改正の発議が両院の憲法審査会で通り、本会議で審議・可決されて国民投票になります。

それから60日から180日以内に国民投票が実施されます。

現在の世論調査の数字では、反対が上回っています。

憲法に関する議論がメディアなどを通じても盛んになるでしょう。

国民投票になった場合に、通常の選挙と同じ手法が使えるのかどうかが疑問です。

自公は組織票固めに走るでしょう。

この組織というのは利益団体であって、単純に言えば、国の予算を分け与えてもらう見返りに投票をする、選挙運動をするということになります。

自公が

「国民投票で自分たちの発議に賛成の票が多かった都道府県や市町村に予算を手厚く配分する」

なんてことを言えば、

「・公務員等及び教育者は、その地位を利用した国民投票運動をすることができません。

・組織的に多数の者を対象に、投票に影響を与えるような利益を供与したり、利害関係を利用して誘導することは罰則の対象となります」

という国民投票の規定に引っかかってしまいます。

また、組織の中でも色々な考えがあるでしょうから、「自民党がやることは何でもいいんだ」という人から「今回は従えないな」という人まで出ます。

これは労組でもそうです。

こうして見てくると、改憲の道のりは長く険しいということになります。

「3分の2を取れば明日にも改憲だ!」ということにはなりません。

今回の選挙の後でも改憲勢力は揃って死んだふりをしています。

しかし、油断はできません。

改憲勢力にとっては、今が最後のチャンスかもしれないのですから。

衆議院議員の任期が2018年、次の参議院議員選挙は2019年です。

それまでは確実に3分の2が確保されているのですから、このことは安倍首相にとっては大変魅力的でしょう。

次の選挙ではどうなるかは分からないのですから。
 
両院で改憲勢力が3分の2を取ったという事実を踏まえて、

まず私たちができることは、

自民党の憲法草案を読む、

その解説書(賛成・反対それぞれの立場)を読む、国民投票について知る、

という極めて単純な話です。

そして、改憲ブロックの中心である自民党と公明党があらゆる手段を用いてきても良いように準備をしておくことです。

ですから、今回の選挙で「あいつが出たからダメだった」とか「頑張りが足りなかった」という批判はある程度までにして、反省するところはしっかり反省して、改憲ブロックに反対する、議会に議席を持つ人々と結び附き、また彼らをしっかり結び付けておかねばなりません。
 
(終わり)



[Sputnik]憲法改正はあるのか?安倍政権に圧力をかける謎多き市民団体「日本会議」のベールを剥がす 〜まず自分自身の内なる声に耳を傾け、自分自身を癒す必要がある〜
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