一体、本当は、何が起きていたのか。
ここから私、副島隆彦 が書くことは、長年、政治評論家として世界政治の大きな動きを分析してきた者としての私の洞察と推理である。
前述したとおり、行方不明機MH370便には、中国政府の大物の核(かく)技術の専門家が乗っていた。
この人物は、サウジアラビアの首都リヤドから出発して、マレーシアのクアラルンプールに到着した。
この後、まっすぐ北京にトランスファー便に乗り換えた。
それが、このMH370便である。
MH370便は、中国南方航空( China Southern =サザン= Airlines )とマレーシア航空のコードシェア(乗客の相互乗り合わせ)便であった。アブダビ発10時40分で、クアラルンプールに22時20分に着く便がある(MH5260便)。
私が昨年、中東のアブダビ (UAE,アラブ首長国連邦の中の一国)の現地に行ったときの経験で、リヤドからは、車を飛ばして3時間ぐらいでアブダビに到着できる。
この中国政府の大物の核技術者は、サウジアラビア国の現在の国王(2015年2月から)であるサルマン国王と会っていた。
そして、中国からサウジアラビアに核兵器を完成品として、そのまま購入する話が両国で行われていた。
そのために核兵器を技術移転することになった国家重要機密の外交文書をアメリカの国家情報部(CIAの特殊軍=スペシャル・フォーシズ )は、どうしても動かぬ証拠として奪取しなければならない。
表面で報道されているようなサウジへの中国からの原子力発電所の建設や運転の技術供与どころか、核兵器(ニュークレア・ウエポン)そのものの購入と運転・運営の一式についての秘密合意事項をこの人物は持っていたのではないか。
MH370便の行方不明事件が起きた時には、サウジはまだアブドッラー国王である(2014年12月23日死去)。
そして、当時、内相(内務大臣。警察庁長官でもある)であったのが、現サルマン国王(現在80歳)で2015年2月に新国王になった。
サウジアラビア国王の8代目である現在の国王まで、すべて初代国王であるアブドル・アズィーズ・イブン・サウド(1876~1953)の直接の子供たちである。
したがって、今のサルマン国王の次のサウジの国王は、イブン・サウド初代国王の孫たちになる。
初代のイブン・サウドは、日独伊3国が連合国側に敗北する直前の、1945年2月4日のヤルタ会談(クリミア半島の保養地)には主要国として参加していない。
しかし、この直後(3月)に、米ルーズベルト大統領と黒海洋上の船で会談している。
サウジアラビア、すなわち「サウド家のアラビア」は、石油の埋蔵量世界一の国(ガワール油田他)として、大戦後の世界でアメリカの重要な家来の国として育てられてきた。
日本国の岸信介(きしのぶすけ)首相と、同格の扱いの人物である。
今、現在も、アメリカ合衆国の主要な貯金箱(”打ち出の小槌”。 資金供給国)は、サウジ王国と日本である。
●サウジアラビア王家の内部抗争
なぜ、サウジアラビアが中国から核兵器を買うなどという恐ろしい状況になっているのか。
ここでは長々と説明しない。
私の近刊の本『マイナス金利「税」で凍(こお)りつく日本経済』(徳間書店刊 http://www.amazon.co.jp/dp/4198641404/ref
)を読んでほしい。
1行だけ簡潔に理由説明をすると、「あの、イランが核兵器を持つというのなら、それと同格であるサウジアラビアが核を持つのは当然である」というものだ。
1995年7月にイランは、西側同盟(欧州EUとアメリカ)との外交交渉で、核兵器の自力での開発・保有をしない、と決まった。
これが、「イラン“核抜き”合意のジュネーブ条約」である。
しかし、「サウジとしては、そんなものは信じられない」ということで何と、サウジ新国王は、中国から核兵器を直接、購入するという動きに出たのである。
世界政治の大きな動きとして、政治力学という考えからは、イランと競争してサウジが核を持つと言い出すことは自然な流れである。
ところが、「核拡散防止条約体制」(ニュークレア・ノンプロリファレイション・トリーティー・オーガナイゼーション。NPT体制 ) が現在の世界の大きな世界政治の管理支配の考え方である。
世界のお役人様である5大国(米、英、仏、露、中)以外には核兵器は持たせない。
この5大国が今も、The U.N(ザ・ユーエヌ。✖ 国連、正しくは、〇 連合諸国=連合国側)の 5大常任理事国(ファイブ・パーマネント・メンバーズ)である。
今の今でも The U.N体制 は、この5大国しか核保有を正式には絶対に認めない。
だから、もし、それ以外の国が勝手に核兵器を開発し、秘密に保有しようとすると叩き潰す。
この動きは、世界の大親分たちの間では自然なこととして承認されている。
日本国民は、こういう大きな話を全く教えられていない。
世界で通用している常識への理解がない。
日本国民は、”洗脳されたままの国民”なのだ。
それでは、6番目の核保有国である、秘密で持ってしまったイスラエル(1964年の中国での秘密核実験で保有した。ケネデイ大統領が暗殺された翌年だ )は、どうなるのか。
7番目の保有国である北朝鮮(1993年に核実験を行って大騒ぎになった)。
8番目、9番目がインドとパキスタンである(どちらも1998年)。
インドとパキスタンは犬猿の仲であり、1発ずつ核兵器(古くは原子爆弾=アトミックボム=と言った)を撃ち合う危険性が今もある。
だから、現在の The U.NのNPT体制は、これらの未承認国の核兵器をいつでも取り上げる準備を今もしている。
パキスタンのカラチ港沖合には、アメリカの巡洋艦が常時待機していて、パキスタン国の核兵器施設を急襲して核弾頭を破壊するか、持ち去る準備ができている。
今年の3月に、“マレーシアの賢人” であるマハティール元首相たちが大騒ぎして、ナジブ首相を「腐敗している」と退陣を要求した。
●マハティール元首相ら、マレーシア首相を提訴。首相退陣要求デモに参加
2015年8月30日
2015年8月30日
(転載貼り付け始め)
「超党派で「反ナジブ宣言」 マレーシア、汚職疑惑を追及」
朝日新聞 2016年3月5日
マレーシアのマハティール元首相が、政府系ファンド「1MDB」をめぐる汚職疑惑に揺れるナジブ首相を辞任に追い込む姿勢を強めている。長年の政敵だった野党指導者や反政府活動家、一部与党議員らと4日に記者会見し、政権打倒で「共闘」を宣言。国民にも支持を呼びかけた。
「我々は、政党や組織の代表ではなく、国民としてここにいる」。マハティール氏は3月4日、こう訴え、与野党の参加者50人以上とともにナジブ氏の辞任を迫る「国民宣言」に署名した。
ナジブ氏の個人口座に入金されたとされる約7億ドル(約800億円)の公金流用疑惑をめぐっては、今年1月、ナジブ政権の司法長官が捜査の打ち切りを表明した。入金を認めたナジブ氏も疑惑は否定した。「サウジアラビア王室からの献金」とするだけで、ナジブ氏も詳細な説明は避け、幕引きを急ぐ。
(転載貼り付け終わり)
この記事で、7億ドルの賄賂(わいろ)をナジブが貰った、と今、マレーシアで騒がれてることが報じられた。
この7億円は、前述した、オバマからナジブに渡った23億ドルと関係があるだろう。
ここで重要なことは、やはりサウジアラビアと中国が接近している。
このことがアメリカはヒドく気に入らない。
サウジと中国が仲良くなって、核兵器を直接、中国から買う、という動きは、尋常ならざるものである。
サウジが自力で核技術の開発をする、というのでもなく、完成品を購入しようということです。
これは驚くべきことだ。
アメリカにとっては、前述したNPT体制( 核兵器の不拡散条約。5大国以外には絶対に持たせない)を死守しようと動く。
アメリカ合衆国にとってのプライマリー・アジェンダ(第1番目すなわち、最重要の国家重要目標 )は、「5大国以外には核兵器を持たせない」である。
これに比べれば、金融や経済の交渉ごとは、どんなに厳しいものであってもセカンダリーアジェンダ(第2番目の国家重要事項)である。
「国家存亡の危機」であるプライマリー・アジェンダとは重みが違う。
アメリカ合衆国は、自分に向かって直接、刃物(核兵器)を突き付けてくる者を絶対に許さない。
だから、北朝鮮やキューバやイラン、あるいはかつてのリビア(故カダフィ大佐)を「ならず者国家」(rouge nations ロウグ・ネイションズ)とか、 バンデッド・ステイト(banded state 山賊国家)と呼んで、「国際社会の犯罪者集団だ」と認定してきた。
アメリカは、ワールド・ポリス、あるいは、グローバル・コップ「世界の警察官」という、アメリカが世界を管理するという役割を自覚してこれまでやってきた。
ところが、アメリカ大統領選の有力候補者である、ドナルド・トランプは、「そろそろワールド・ポリスという考え方を捨てよう。もうアメリカには、それだけのお金(財政力)がないのだ」と正直に言い出した。私は、この考えは正直でいい、と思う。
おそらくマレーシア航空MH370便の行方不明の謎はこれからも解明されることなく、ザワザワといつまでも、噂話だけが世界中で 広がり続けるであろう。真実を知っているのは、主要な各国の政府の上層部、権力者たちだけである。
私、副島隆彦 が今、書いて報告できることは、ここまでである。これ以上の真実は私にも分からない。
最後に最新の記事を載せる。
(転載貼り付け始め)
「米大統領 サウジ訪問も国王の出迎えなし」
NHK 2016年4月21日
アメリカのオバマ大統領は中東で同盟関係にあるサウジアラビアを訪問したが、オバマ大統領が空港に到着した際の歓迎式典にサルマン国王は姿を見せず、両国の冷え込んだ関係を示した。
(転載貼り付け終わり)
●どうやら中国と英国(英連邦)が組み始めた。イギリスはアメリカに逆らう
最後に付け加えて書くが、 あのパナマ文書 というもの、アメリカが、イギリスの キャメロン首相 を狙ってのものであった。
昨年の10月に、中国の習近平(しゅうきんぺい)国家主席(大統領扱い)が、ロンドンを国賓(こくひん)として訪問して、エリザベス二世女王と、黄金の馬車に乗って、バッキンガム宮殿に入っていった。
あの、中国とイギリス(および英連邦=えいれんぽう= カナダやオーストラリア)が、が組んだことに対する、アメリカからのイギリスへの 報復、仕返しである。
中国の今以上の台頭と世界各国への大攻勢を、もう許さない、と、アメリカが焦りだして必死で動いていることが分かる。
(了)
副島隆彦 記