欧州の「トランプ化」 | きなこのブログ

きなこのブログ

大失業時代が到来しています。大失業の恐ろしさを歴史から学ばなければならない。『大失業は戦争への道につながっている』

日本を明るい未来へ…

欧州の対米従属の行方
https://tanakanews.com/160415europe.htm

米政界のエリートたちの多くは、米大統領候補のドナルド・トランプを嫌っている。

米政界の主流派は近年、軍産複合体や金融界といった大口献金元の言いなりなので、軍産が好む好戦策や、金融界が好むバブル膨張策が失敗し、米国民が政界に対する不満をいくら高めても、好戦策やバブル膨張策に固執せざるを得ない。

トランプは、好戦策やバブル膨張策の失敗を正面から指摘して有権者の支持を集めている。

米政界の主流派は、トランプに対して脅威を感じているので、その分、トランプへの敵視が強くなる。

だがその一方で、トランプの主張は、政治家が有権者に対して人気取りをする際に便利なので、米政界では最近、トランプに似た主張をする議員らが増えている。

米政界の「トランプ化」の一つは、同盟国に厳しい注文をつけることだ。

たとえばトランプはNATO「ソ連の存在を前提に作られた時代遅れの組織」と酷評し、米国がNATOの軍事費総額のうちの73%も負担しているのはおかしいと述べ、欧州諸国が軍事費を増やさない場合、自分が大統領になったら米国のNATOへの関与を減らすと表明している。

マスコミはさっそく「NATOに対する米国の費用負担はもっと少ない22%だけだ。トランプはまた誇張している」という感じで報じた。

だが、米共和党の保守派の上院議員であるトム・コットンは

「NATOに対する費用負担はかつて米国と欧州がほぼ同額だったが、今では米国7割、欧州3割になっている。NATOに対する欧州諸国の貢献が足りないというトランプの指摘は正しい」

「トランプが、共和党の他の候補より劣っているということはない」

と述べている。

コットンはハーバード大を卒業後、米軍将校としてイラクとアフガンに駐留し、オバマの対イラン和解策に反対する軍産系エリートだ。

コットンはトランプに同調した後「トランプは欧州が金を出さないなら米国がNATOから抜けていくと言うが、そうでなく、粘り強く欧州にもっと金を出させるよう仕向けた方が良い」と、軍事産業の受注を増やす方向の、軍産ならではの主張を展開している。

4月6日、米議会上院の議員たちが、NATOのストルテンベルグ事務総長を議会に呼んで非公開の会合を開いた。

ボブ・コーカー上院外交委員長を筆頭に、共和党の上院議員たちが口々に、NATO加盟の欧州諸国、特にドイツがNATOの費用を少ししか負担していないことをタダ乗りだと非難した。

共和党上層部のトランプ化を象徴する出来事だった。

トランプが大統領にならなくても、同盟国への態度が厳しくなる米国の傾向は、展開が遅いか速いかだけの違いだろう。

在野の国際政治分析者であるジャスティン・レイモンドはこの件に関して「(軍産の一部としてNATOの拡大を推進してきた)上院議員たちが、自分たちは欧州のタダ乗りを昔から何度も批判してきた、などと表明したが、そんな話は初めて聞いた」と皮肉りに書き、これまでシンクタンクの中だけにとどまってきたNATOの存在の無意味さをめぐる議論を、米国民全体の選挙論争に拡大する転換をトランプがやっていると指摘している。

「NATOからの米国の離脱」を語るトランプの話法を換骨奪胎し、軍産のコットン議員は「欧州にもっと軍事費を出させる」話に変えている。

だが、現実を見ると、欧州諸国が米国の求めに応じて軍事費を大幅増額することはない。

欧州は戦後ずっと、世界が米国の単独覇権体制でかまわないと考えてきたが、それは米国が合理的な世界戦略をとっている限りにおいてだった。

911後の米国は、アフガニスタン、イラク、シリア、リビアなど中東の戦争で軒並み大失敗し、これらのすべてが国家破綻の状態にある。

米国(軍産、NATO)は近年、ウクライナ問題でロシア敵視を強めたが、これも米当局(ビクトリア・ヌーランド国務次官補ら)が画策してウクライナの親露政権を転覆することで引き起こされている。

欧州にとっては、対露制裁への参加による経済的な悪影響が大きい、不必要な策になっている。

昨年からは、米国がアサド打倒をめざして起こしたシリア内戦の失敗で、欧州に難民が押し寄せる危機が発生し、米軍が創設に関与したISISやアルカイダによる自爆テロがパリやブリュッセルで起こされ、欧州は散々な目にあっている。

それもこれも、好戦的な軍産に席巻され続ける米国への従属から、欧州が自立しようとしないことから起きている。

欧州では、対米従属を続けたいという考えがいまだに上層部で強いが、草の根の国民は、EUが好戦的な米国に従属した挙句、難民危機やテロ、不必要なロシアとの敵対に巻き込まれていることに反対する傾向を強めている。

その象徴の一つが、先日オランダで行われた国民投票でEUとウクライナとの協定への反対が可決されたことだ。

米国は、上層部が好戦的な軍産に従属していることに、草の根の市民が反対を強め、その流れでトランプが台頭しているが、欧州も同じ構図で、草の根市民に支持された非主流派の右派と左派が選挙で勝って台頭している。

機能的に軍産の一部であるマスコミは、欧州の非主流派を「(危険な)極右・極左」と報じ、主流派(軍産)の好戦策の方が危険でしかも失敗していることを軽視している。

欧州諸国が、米国の要求に応じて軍事費を増やせば、ますます国民の支持を失う。

だから欧州は、米国から求められる軍事費増に応じられない。

トランプは、それをわかった上で「欧州が軍事増に応じなければ」という、軍産好みの条件をつけてNATO解体論を語っている。

「欧州に軍事費を増やさせる方法としてトランプのやり方は使える」と言っている軍産の議員は、実のところトランプと同じ隠れ多極主義(隠れ親露・親中)なのかもしれない。

米欧や中東でいま起きていることは、冷戦後の「軍産延命の時代」が終わっていく流れだ。

冷戦終結は、レーガンとゴルバチョフによる、軍産に対するクーデター的な事業だった。

軍産複合体は、英国勢による米国支配策として創設され、第二次大戦の有事体制を戦後もそのまま続ける冷戦体制を構築し、米国覇権は「軍産覇権」と化した。

だがその40年後、レーガンは軍産の一部のようなふりをしつつ、ゴルバチョフの対米融和姿勢を利用して冷戦を終わらせ、軍産の存立基盤を破壊した。

冷戦構造という存立基盤を破壊されたものの、軍産は冷戦後も米国の上層部を牛耳っていた(ロンドンをNYと並ぶ金融センターにしてもらう見返りに軍産を見捨てた英国に替わり、70年代から米中枢に入り込んだイスラエルが軍産を主導した)

軍産は、米欧が世界のどこかに恒久的に軍事介入しなければならない状況を作ろうと画策し続けた。

ロシアは冷戦後しばらく経済破綻した弱い国になり、米国の敵でなくなっていた。

90年代半ばに選ばれたのは、EUのとなリの旧ユーゴスラビアで、米国は、親露的なセルビアのミロシェビッチ政権を濡れ衣的に敵と定め、本当は暴力団(麻薬組織、人身売買組織)でしかないコソボの勢力(KLA)を正義の味方と喧伝してテコ入れし、この馬鹿げた構図のもと、欧州に軍隊を出させた。

同時期にイスラエル系の主導で始まったのが、アフガンやソマリア、スーダンなどでのイスラム過激派(ならず者国家)との戦いだったが、イスラム過激派は強くなかったので、軍産はサウジアラビアに協力させ、サウジ王家の資金の一部がアルカイダなど過激派に流れる構図を作り、敵を強化した。

サウジがアルカイダを育てたのでなく、軍産がアルカイダを育て、その資金をサウジに出させた。

この馬鹿げた構図の上に「開花」したのが01年の911テロ事件で、これを機に米政府は一気に好戦的になり、冷戦後の経済中心の覇権策を吹き飛ばし、軍産イスラエルを代表するネオコンが政権中枢で台頭した。

だがネオコン「新レーガン主義者(Neo Reaganite)」を標榜するだけあって、実は軍産のふりをした軍産破壊者だったようで、彼らがブッシュにやらせたイラク侵攻は、開戦の大義だった「大量破壊兵器」の不存在が侵攻前から分かっているという無茶苦茶さだった。

米国は、イラクでもアフガンでも占領に失敗したが、いまだに好戦策をやめていない。

軍産が米政界を握る限り、軍産を延させるための好戦策がとられ、欧州や日韓など同盟諸国にも同じ姿勢をとらせ続ける。

しかし、軍産の代理人として米政権の中枢で実際の好戦策を展開する人々が、好戦策を過剰に稚拙にやりすぎて大失敗し続けるネオコンやチェイニー(ブッシュ政権の実権者だった副大統領)だったり、好戦策と融和策を行き来することでロシアやイランといった反米諸国を台頭させ、問題の解決をこれらの反米諸国に任せてしまうオバマだったりするものだから、軍産の延命策は常に失敗している。

軍産は、軍部だけでなく政界、外交界、マスコミ、学術界など、権威ある勢力の全体を握っているため、常に失敗しているのに失敗が失敗として指摘されず、軍産が米国を握り続けている。

トランプが指摘するまでもなく、軍産はとっくに時代遅れだが、なかなか潰れず非常にしぶとい。

その原因は、米国側でなく、同盟国の側にある。

欧州や日韓といった同盟諸国はこの間、でくのぼうのように、無茶苦茶な米国(軍産)に従属し続けてきた。

その理由として、米国に逆らったら政権転覆や経済制裁を受けるという恐怖心もあるだろうが、それ以上に大きいと考えられるのが、米国が無茶苦茶でも見て見ぬふりをして、世界の運営(覇権)を米国に任せておいた方が楽だという同盟諸国側の怠慢さ(現実主義)だ。

1カ国で全世界を取り仕切る(支配する)のは、大国でも大変な事業だ。

戦後、単独覇権国になることを決めた米国のチャレンジ精神は尊敬に値するが、それはじきに軍産英イスラエルに食い物にされた。

米国中枢では、軍産支配から離脱するため、ネオコンやチェイニーやオバマが好戦策を稚拙にやって大失敗させ、同盟諸国が愛想をつかして対米従属をやめていき、露イランや中国などBRICSに加えてEUが協調し、米国に頼らない世界運営をやってくれることを期待した。

だが、積極的なのは露イランだけだ。

欧州も日本も、対米従属から出たがらない。

中国は露イランの後方支援に徹し(中国の国是は親米だ)、他のBRICSはさらに消極的だ。

ブラジルなどは内政が混乱し、国際政治に関与する余裕がない。

私はこれまで、欧州は国家統合していくのだから、対米従属をやめるつもりだろうと考えてきた。

EUが経済に加えて政治を統合すると、米露中と並ぶ大国となるので、EUは対米自立して多極型の世界運営を好むようになると考えるのが自然だ。

だがよく考えると、EUの国家統合を欧州に強く勧めて開始させたのは、レーガンの米国だった。

冷戦終結でゴルバチョフが東ドイツを崩壊させた時、レーガンは西ドイツに対し「東西ドイツを統合するなら今しかない。しかしドイツが統合して強国になることを全欧州が恐れている。この恐れを取り除くため、ドイツは東西統合と同時にフランスなどとの全欧的な国家統合を開始するしかない」と二者択一的に迫り、ドイツは欧州統合の道を選んだ。

ドイツは、米国から欧州統合を強制されて始めたといえる。

欧州統合が、欧州自身の能動的な決断だったなら、それは欧州が対米自立し、世界の覇権構造を多極型に転換してEUが極の一つになる目標を追求することになるが、統合が米国に二者択一的に強要されたものだったことをふまえると、話が違ってくる。

欧州は、米国の隠れ多極主義者に強要されて国家統合への道を歩み始めたものの今ひとつ決断力がなく、実利がともなう経済統合は進めたが、国権の根幹にかかわる財政統合や政治統合はいつまでも進まずない。

対米従属もやめず、米国の異様に稚拙な好戦策に延々とつきあう不甲斐ない欧州の現状が、これで説明できる。

しかし同時にいえるのは、欧州の国家統合が逆戻りできないことだ。

リスボン条約など、欧州統合の取り決めには、いったん加盟した諸国が欧州から離脱する条項がない。

しかも、もし欧州が統合をやめて以前のばらばらな国民国家どうしに戻ると、米国やロシアからもっと身勝手な扱いを受け、ますます不利になる。

加えて欧州統合は、昔から、独仏の強い指導者が目指したことだった。

ナポレオンやビスマルク、ヒットラーなどが、武力や政治力で欧州を統合して君臨することを目指した(ナポレオンとヒットラーは英国に阻まれて失敗した)。

欧州を統合して米露と並ぶ世界の極の一つにすることは、現在でも、野心ある欧州の政治家の目標になりうる。

フランスで次期大統領とも目される大人気の「極右」の政治家マリーヌ・ルペンは従来、草の根の人気を集めるため欧州統合に反対してきたが、いずれ実際に大統領になった後も統合に反対し続けるのかどうかあやしい。

「今までの悪しき統合と全く違う、良い統合を進める」などと言い出しかねない。

欧州統合は、ナポレオンが果たせなかった夢だ。

指導者たるもの、フランスだけでなく全欧州を運営したいと考えて当然だ。

欧州は、簡単に統合への道筋を放棄しない。

軍産に牛耳られた米国が、失敗が運命づけられている好戦策を無限に繰り返す存在であることを、米国自身と、欧州など同盟諸国の人々は、しだいに確定的なこととしてとらえ始めている。

国際政治に関してマスコミがひどい歪曲報道を続けてきたことに対する批判が、しだいに明確に出てきている。

軍産が行き詰まるほど、マスコミは好戦的な論調になり、日本などでは当局による報道管制も強まり、これまで気づかなかった軽信的な国民も、歪曲報道に気づく傾向が増す。

対米従属策による不利益が大きくなるとほど、欧州は、国家統合による対米自立を能動的に考えるようになる。

この面で今後、欧州を転換させる事態がありうるのが、ウクライナと英国だ。

ウクライナでは4月12日、米当局による反ロシア戦略の一環として首相に据えられていたアルセニー・ヤツェニュクが辞任を表明し、代わりにポロシェンコ大統領の側近の一人である議会議長だったボロディミル・グロイスマン(Vladimir Groisman)が首相になった。

ヤツェニュクは、14年初めにウクライナを政権転覆に誘導した米国のヌーランド国務次官補が、当時漏洩した電話の会話の中で、首相に最もふさわしい(米国に都合の良い)人物として名前を挙げており、この電話の後、ヤツェニュクは首相になった。

彼は米国の傀儡だったので、しぶとかった。

14年夏の選挙で大統領になったポロシェンコは当初、米国との関係を重視してヤツェニュクに首相を続投させていたが、今年に入ってヤツェニュクを追い出しにかかり、2ヶ月かけて首相を自分の側近と交代させた。

私は以前の記事で、ポロシェンコが反ロシアのふりをした親ロシアの指導者でないかと書いた。

ポロシェンコを米国傀儡の反露勢力の一人とみなせば、首相が誰になろうとポロシェンコが大統領である限りウクライナの混乱はおさまらないが、そうでなく、ポロシェンコが隠れ親露派であるなら、首相が米国の傀儡からポロシェンコの傀儡に交代したことで、これまでミンスク停戦合意に調印しながら無視してきたウクライナが、今後しだいに停戦合意を履行し、ウクライナ東部に自治を与える憲法改定などを開始する可能性が高まる。

米国(軍産)は冷戦後、ロシアが弱い間はロシア敵視策を大してやらなかったが、00年にプーチンが大統領になってロシアの再建を開始し、国際社会でロシアがかなり再台頭してくると、ロシアと隣接するグルジアやウクライナを操って対露敵視策をやらせている。

これは、欧州の対米自立を阻み、NATOと軍産を延命させるための策であるが、グルジアはすでに反露姿勢を弱めており、ウクライナも国家破綻に瀕して反露姿勢が行き詰まっている。

東欧では、オーストリア軍の参謀総長が最近モスクワを訪問し「オーストリアにとって最も親しい国はロシアであり、(米国など)その他の国でない」と宣言している。

欧州で今年ありそうな地政学的転換のもう一つは、英国で6月23日に行われる、EUに残留すべきかどうかを問う国民投票だ。

もし、英国のEUからの離脱を支持する人が過半数になり、実際に英国がEUを離脱すると、その後のEU(独仏)は、これまでより速いテンポで政治財政統合を進めていくだろう。

軍産の一部だった英国はこれまで、EUの内部にいることで、EUが統合して米国から自立した世界の極の一つになっていく動きを遅延・阻止するとともに、東欧諸国と組んでEUがロシアと対立し続けるように仕向けてきた。

英国が離脱すると、EUの統合を遅延阻止する力が低下し、EUは政治統合への動きを速める。

冷戦終結とともに米国(レーガン政権)がドイツに開始させた欧州統合は、冷戦によって英国に牛耳られていた米国の、英国に対する反撃だった。

冷戦は英国にとって、米英とソ連がドイツを恒久的に東西に分割してドイツを永久に弱体化して二度と英国のライバルになれないようにするとともに、西ドイツやフランスを、英国が牛耳る米国に恒久的に従属させる体制だった。

冷戦を終わらせたレーガンは、ドイツを再統合した上でフランスなどと国家統合させ、欧州をドイツ中心に再編する流れを植えつけた

英国は仕方なくEUに入り続けつつ、内側から欧州統合を邪魔してきた(英国はEUの前身のEECに1973年から加盟している)。

ドイツやフランスは、英国や軍産に邪魔され、対米従属からの離脱も進められずにいるが、こうした状況を変えるべく、英国の姿勢に関係なく、政治統合を進めることにしたのだろう。

ドイツがそれを英国に通告し、英国は国家的な態度を決めるための国民投票を実施することにした(このあたりの経緯は明確にされていない)。

英国はEUに残った場合、政治財政統合によって国権をEUに剥奪されていくことを容認しなければならない。

英国の上層部は、EUに残留し、経済的な恩恵を維持しつつ、政治統合を邪魔し続ける道を希求し、BBCをはじめとする英国のマスコミは、国民投票がEU離脱を決めると大変なことになると喧伝して国民に圧力をかけている。

欧州のことを延々と書いたが、米国が同盟諸国の貢献不足への非難を強める「トランプ化」は、日本にも大きな影響を与える。

トランプは先日、日本に対する北朝鮮の脅威に関して「日本は米国に頼るより、自力で北朝鮮に立ち向かった方がいい。日本は見事に北を打ち破るだろう」と述べている。

日本政府にとって北朝鮮の脅威を喧伝することは、日本が米国に頼らざるを得ない対米従属の国是を維持するための策だ。

米国から「日本は米国に頼らず自力で十分に北を打ち破れるぞ」と事実を言われてしまうと、対米従属の目的を達成できなくなってしまう。

日本のナショナリズムは、これまで「反米」「対米自立」がなかった(対米自立は左翼の標語だ)。

右翼の中で反米主義はこまめに排除されてきた。

日本のナショナリズムは、中国や韓国朝鮮に対する嫌悪(敵視でない点が重要)を扇動し、日本が中韓との協調の方に流れていくのを阻止する対米従属の維持装置としてのみ機能してきた。

だが米国が日本に自衛の強化を求め、核武装や「日豪亜同盟(地域覇権国化)」への誘いを続ける今の傾向が続くと、いずれ日本で「反米」までいかなくても「非米」つまり米国からの自立や核武装、地域覇権国化を右から求める新たなナショナリズムが勃興しかねない。

この展開は、米国の隠れ多極主義者が狙うところだろうが、日本の権力機構(官僚)にとっては全力で排除する必要があるものだ。

昨日、日本の核武装を主張する右派の論客で、政界入りを目指していた田母神俊雄氏が選挙不正の疑いで逮捕されたが、これは日本の官僚機構が、米国のトランプ化に呼応する日本国内の右派の動きを予防的に阻止しようとする動きだろう。

日本政府は先日、G7の外相会合を広島で開いたが、広島を選んだ理由も「被爆国の日本は核武装などしません。永遠の対米従属が全国民の願いです」という米国へのメッセージに見える。