竹中平蔵氏(以下、竹中):みんな多様な働き方をしたいんです。
いろんなアンケート調査があって、アンケート調査にバラつきがあるんですけれども、たとえば協会がやったアンケート調査によると、派遣でやっている人の7割は「当面派遣でやりたい」と言っています。
厚労省が派遣についてやった調査では、「正社員に変わりたい」という人と「今の非正規のままのほうがいい」という人を比べると、実は「非正規」と答える人が多いんです。
数字はね。
多様な働き方があるから、派遣でいるのが「なんか悪い」とか「かわいそうだ」とか、その前提はやっぱり捨ててほしい。
それはケース・バイ・ケースだということ。
正社員で雇われたい人もいますよ。
でも、そうじゃない人も多いんだということをまず大前提にしてほしい。そしてもう一つ・・・。
田原総一朗氏(ジャーナリスト:以下、田原):本当かなぁ、それ。
竹中:本当なんですよ。田原さん、
もう一つ大事なことがある。
どうして派遣が増えたかというと、簡単なんですよ。
日本の正規労働は世界の中で見て、異常に保護されているからなんですよ。
森永卓郎氏(経済アナリスト:以下、森永):それは違います。
竹中:1979年の東京高裁の判例で解雇の4要件が示された。
要するに、同一労働・同一賃金と言うんだったら、「正社員をなくしましょう」って、やっぱり、あなた、言わなきゃいけない(編集部注:このとき竹中氏は、辻元氏のほうを見ていた)。
全員を正社員にしようとしたから、大変なことになったんですよ。
田原:竹中さんの言った4要件はこれですよ(注:フリップを取り出す)。
4要件というのは、人員削減の必要性。
解雇回避の努力。人選の合理性。
解雇手続の妥当性。
4つないといけない。
竹中:実はそれが判例なので、非常に不明確だというところに問題があるんです。
だから、大企業のように、訴訟リスク・・・これやると訴訟をされると思うところは、なかなか解雇できない。
田原:そして本当に(訴訟に)負ける。
竹中:そうです。
一方で、「うちなんかは訴訟されるわけがない」と思っている中小企業は、平気で正社員といえども解雇しているんですよ。
だからそのルールをきちんと・・・。
森永:竹中さんの言っている事実認識がすごく違うのは、実はOECDが雇用者保護の厳格性を綿密に調査して比較しているんですよ。
さっき竹中さんがオランダモデルにしろと言ったんですけど、正社員の雇用保護の厳格性は、日本よりもオランダのほうが圧倒的に高いんですよ。
つまり、ものすごく厳しいんですよ。
解雇には、地方労働委員会の許可が必要なのですよ。
ほとんど認められない・・。
竹中:日本の場合、中小企業にそれが適用されていないからなんですよ。
だから、厳しいルールも必要なんです。
ただ、今はルールが明確ではないということが重要なんです。
それを明確化しようと言ったら、「解雇自由化」という議論に歪められるんですよ。
【新たな労働時間制度】8年越し“再チャレンジ” 拡大懸念、労働界は抗戦
http://www.47news.jp/47topics/e/261124.php