食糧危機の足音 | きなこのブログ

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食糧危機の足音
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 「2030年までに地球が二つ必要になる」、世界自然保護基金(WWF)は警告を発しました。


 WWFのレポート「生きている地球」によると、2007年のデータをもとに分析したものによれば、「世界の人々は地球の環境を無視して地球の資源を消費しすぎている」というのです。


 世界中で異様なまでの乱開発と資源消費が続いています。WWFは、現在世界の人々は、地球環境が持続的に支えられる限界を50%も超過する消費生活を送っていると言うのです。仮に、世界中の全ての人々が米国人並みの生活をすれば、地球は二つどころが4.5個も必要になると指摘、そしてかろうじて中国人全体を見ての平均的な生活水準を全世界の人々が行うのであれば、今のところ地球は一つで足りるということですが、この中国人一人当たりの資源の消費量は過去2年で3割以上増加しているということです。


この勢いは止まるわけもなく、まさに地球全体は危険ゾーンに向かって走り続けていると言えるでしょう。そして昨今の異常気象をみると、その悲鳴を「生きている地球」が人類に発しているようです。


食糧危機はじわじわと近づいてきている!?


 とにかく人類は地球が本来持っている生産力を超えて原資を食い潰しているのです。


 WWFはこのままいけば、地球上で壊滅的な環境破壊が起こり、その衝撃は経済危機の比ではない、と指摘しています。


 ところが世界中はそんな警告にはお構いなし、各国自らの国民の生活向上のために一生懸命日夜奮闘です。「環境が破壊されるから生活水準を落とせ」などという主張が、人々の共感を得られるわけがありません。「決定的な悲劇」が訪れなければ、人類全体が「環境保全」という意識を共有することなどできようもないでしょう。


 そしてこの「決定的な悲劇」がじわりと近づきつつあるようです。人々は何となく変調をきたしている地球環境の変化を感じているものの、まだ状況が壊滅的にはなっていないので、危機感がピークに達しているという段階でもありません。しかしながら、我々が目にする日々のニュース、そして日々刻々と変わる資本市場、特に穀物市場の中に大きな変化のマグマが見て取れます。


 世界中の人々が真に危機を感じないのであれば、市場が暴力をもって人々の前に恐ろしい現実を突き付けることでしょう。静かな相場の流れがやがて大きな激流となって世界を覆い尽くすのです。


 世界には主要作物というものがあります。年間約6億トン近い生産高をほこる、コメ、小麦、そしてトウモロコシです。これに大豆を含めると年間20億トンの生産量になりますが、これらは世界の全ての食物生産量のおよそ半分を有しているのです。バラエティー豊かな様々な食べ物に囲まれて我々は生活しているような気になっていますが、実はこの主要4つの作物は世界の食糧供給のキーなのです。


 そして現在、コメを除き、この小麦、トウモロコシ、大豆の価格の異常な急騰が止まらなくなってきたのです。あの2008年、狂乱の価格と言われた商品の史上最高値をすでにトウモロコシと大豆は抜いてきました。1ブッシェル、トウモロコシは8ドル、大豆は17ドルと驚くべき価格になってきたのです。10年前の常識では、トウモロコシは2ドル、大豆は5ドルというのが当たり前の感覚だったのです。


 2008年の狂乱した商品相場の高騰時には、WTIの石油価格は149ドル(現在は90ドル)まで達していました。


 トウモロコシと大豆はその時の狂乱価格をあっさりと抜いてきたのです。しかも現在の世界は景気後退懸念から、商品相場全体は低迷して下落基調にあるのです。その商品安の時にあって、この主要穀物の暴騰状態は決して投機などではありません。完全なる供給の不足がもたらしているもので、これでは今後、さらなる価格の上昇が予見され、その影響がどのようなものになっていくかまだ分からないのです。


 現在、世界中がこの穀物価格の驚くべき高騰に悲鳴を上げていないのは、タイムラグの関係で影響が及んできていないからに過ぎません。2008年に世界中で起こった食糧を求めた暴動、そして昨年、「アラブの春」といってチュニジアから始まってエジプト、リビアと政変をもたらした原動力はこの食糧高騰が引き金だったのです。


世界中で巻き起こっている異常気象


 前述したように、世界中の人々の豊かな生活を求める気持ちは抑えようもありません。


 そして、中国やインドや東南アジア、その後はアフリカ諸国までが発展していく勢いは止めよもないのです。先進国だけが豊かさを許容するという時代は終わりました。70億人という現在の世界の人口は増える一方ですし、それに対応する地球上の資源は全く足りず、結果として世界各地で争いは絶えません、皆が生きていくためには乱獲を許容し、とにかく生きるために資源を確保するしかないのです。そして「生きている地球」が、この人類の宿命的な動きにまさに警鐘を鳴らそうとしています。


 昨今の異常気象を見てください。もはや異常気象などというものでなく、異常こそが常態であって今後のこのような気象状態は収まるのではなく、加速していくと感じないでしょうか? 昨年はタイの洪水でタイ中が水浸しになりました。あんなことがあるのか、と驚いたと思います。現在、世界の食糧供給基地である米国は熱波に襲われ、何と国土の6割が干ばつ、60年ぶりの異常事態です。ビルサック農務長官は事実上の非常事態宣言を発しました。


 またひるがえって、日本の連日のこの暑さは何でしょう? 今年冬の激しかった寒波からあっという間の熱波、日本から春と秋は消え去るかのようです。しかしこんなことも日本ではもはや年中行事でまたか、という感じです。竜巻によって日本国内で死者が出るなど考えも及ばないことで、昨今の出来事は従来の日本人の想像を超えています。先日の九州の異常な豪雨もしかり、映像で見た川の氾濫に恐ろしさを感じた方も多かったでしょう。明らかに何かがおかしい、その異常性が昨年の地震も引き起こしていると言えるでしょう。


 現在の世界的な異常気象は米国の干ばつだけではありません。当然のことながら世界中で農業被害が後を絶たなくなってきたのです。


 豊作を伝えられていたロシアの小麦生産は、何と干ばつで2割減ということです。インドはモンスーンの時期なのに、雨が降らずサトウキビが不作、砂糖価格は上昇です。一方ブラジルでは、豪雨が続き、このためコーヒー農家で収穫ができず大被害、コーヒー価格は上昇中です。欧州も北部で豪雨が相次いでいます。英国やスウェーデンやアイルランドでは6月の降雨量が過去最高となりました、このためビール原料の大麦が大被害です。一方、欧州の南部は熱波に見舞われています。イタリア東部から黒海、ウクライナにかけての穀倉地帯は、7月に異常な高温となり、平均気温は平年を5度上回って35度以上、やはり小麦やトウモロコシが大きな被害を受けているのです。


 今年の場合は春先から大豆の価格が高かったのですが、これは南半球、特に世界最大の大豆産地である南米が夏(北半球の冬)に50年ぶりの大干ばつに襲われて、大豆が極端な不作になったからです。また中国も現在酷い洪水に襲われています。一体、世界中で従来通りの気象状況であるところがあるのでしょうか? 異常が恒常化して今後世界の農業生産はどのような影響を受けていくのでしょうか?


 干ばつが激しい米国の各州では車の洗車は禁止、さらに酷いところでは、プールの注水も禁止しました。家の前に水をまくことも禁止です。まさに水を使うなというわけです。


 問題はこれら、異常な気象状況が起こったのは、わずか1ヵ月半前からで、この時は世界中、現在のような熱波や干ばつは全く予期していなかったのです。その証拠に、現在急騰しているトウモロコシや大豆などは豊作が伝えられて価格は大幅下落中だったのです。現在8ドルしているトウモロコシなどは今年は豊作予想で、いずれ余ってくるということで、5ドル割れに陥っていくのは必至であるという見方が大勢でした。ですから、変化が起こったのは、この1ヵ月半のことで、突然の異常気象で状況が一変したというわけなのです。気象の専門家をはじめ、誰もこのような異常気象が起こることを予想していなかったのです。


 投資家ジム・ロジャーズは、農業従事者が超高級車を乗り回す時代がやってくる、と予言しています。世界中が驚くべき食糧難に陥っていくと警告しているのです。


 「国債を刷れ!金融を緩和しろ!」不況脱出の手立ては世界中一緒です。借金に借金を重ねて、マネーを刷りまくってデフレを解消しろとの大合唱です。


 現在、投資対象が無くなっているマネーは、一斉に日米独など安全資産とされる国債に殺到しています。今やマイナス金利でも、国債に投資するというのですから驚きです。


 相場の世界は非常に移りやすいものです。一たび流れが変わってその膨大な資金が儲けを求めて穀物に本格流入したらどうなっていくでしょうか? 本当のインフレが起こる時は供給が足りない時です。そしてトウモロコシ、大豆、の在庫は驚くべき速度で減少しているのです。もはや1ヵ月分しかありません。いったい今後どうなっていくのでしょうか?


 日本はトウモロコシの輸入は世界一で、ほとんど米国に頼っています。米国からの輸入比率はトウモロコシが90%、大豆は66%です。


 米国のビルサック農務長官は今後について、「輸出は減少するだろう」と明言、「現時点では減少幅は小さい」と言ったものの、「状況次第だ」と本音ももらしました。


 飽食の時代の終焉が近づいています。コメが余っているなどと涼しい顔をしている時期はもう長くは続かないでしょう。食糧価格が急騰してパニックが訪れてから、人々は何が起こったのか、そしてそれがどんなに深刻なものかを知ることになるでしょう。