あれは30代半ば、上の子小3、下の子年中の頃、料理上手な友達とともに、〇〇ガスの料理教室に数ヶ月通った。

家事の中で唯一好きなのが料理! みんなで作って、楽しく食べて、タッパーでお待ち帰り♪ まるで学生時代の調理実習のようで、どえらい期待を抱えて申し込んだ。


結婚前に通った新宿高層ビルのお教室は、エシャロットとかズッキーニとか、当時、家庭ではまださほど使われていなかった(半径1m調べ)素材をあしらい、「これ、絶対、作らないよねー笑」などといい放ちながら、友達3人で通ったっけ。


しかーし、地域密着、主婦の味方、〇〇ガスさんは違う。もちろんガスレンジの新調やパン焼き器の購入などの種蒔きも兼ねてはいらっしゃるだろうが、実に家庭的な即、役立ちそうな(ちゃんと家でもやれば)料理のラインナップ。

子どもたちがいない時間にご近所仲間とファミレスやカラオケ、子どもの友達が来る時は掃除に整理整頓、という実に忙しい毎日の中で、料理の腕を磨こう、家族に喜んでもらおう、なるべく残して夕飯の一品にしようという魂胆も新しいエプロンにくるみ、いざ会場へ。


みきちゃんママ(仮名)も可愛いエプロンでにっこにこ。入り口を入るとすぐ、〇〇ガスさんの機器が並びパンフも揃えてあるが、そこは軽く目視したあと、2階へ上がる。

私たちのような30代が多いかな、いや意外と結婚を控えた20代後半のお嬢とか? 


じゃーーん。戸を開けて確認。で、閉めようとした、は、嘘だけど。

あらら、意外と年配の方ばかり。三角巾をキリリとしめて、少し幅広のお背中に回したエプロンのリボンも気のせいか、固く結んでおられる。


むむむ。やりおる。これは、、、

さて。みきちゃんママと目が合い深く頷く。抜かりなく行こう。


優しそうな笑顔の女性講師の方が、算段を丁寧に説明する。テーブルは5人。私たち2人の他は、想定56歳から64歳のおばさま3人。きちんとお化粧して口もとは笑顔。

でも、私にはわかる。説明を聞いているようで聞いてない。

「はいはい。早く始めましょうよ。そんなに詳しく言わなくとも、わたしら大丈夫ですから」とお顔に書いてある。


ガタっと席を皆が立ち、始まった。

今日は和食。あっさりしたお上品な和え物から挽き肉を使った蒸し料理、ヘルシーメニューだった。

包丁づかいも比較的簡単なものだったので、下拵えをしようと包丁の所に歩み寄ると、

「あー、あなた、これ洗って」と刃物ではなく、葉ものを渡される。

「あ、はい」

洗い終わると次はこれと長ネギ。

なんと、この日の私は、洗い場担当だったのだ。

野菜を何種か洗ったのと使った調理器具を洗った記憶ばかり。

途中、みきちゃんママを見ると、私同様の扱いだった。私は引きで見て、笑いそうになった。


同じ年頃のママたちの知り合いが更に増えるかもとも思って入会したけど、これでは姑に囲まれて修行してるかのよう。

それでも試食の時間はとても楽しく、姑さんたちも根は優しく朗らかで、いい集まりではあった。


たしか隔週の教室日程だったが、メンバーが多少入れ替わっても、その料理のメインの部分、切る・焼く・炒める・煮る。は、ほぼ覚えがなく、洗う・拭く・手渡す・片付ける。そんな下っ端生活が続いた。


そうして、私たちはおばさまたちにとても可愛いがられ、道で会っても楽しく会話できていたので、料理の術はともかく、処世術は身につけたのであーる。感謝っ。