前回
の続きです。
前のブログで、落語台本に応募してくる作品で、多数、存在するけど、落語台本には必要ないもの…それは、ト書です。と書きました。
ト書とは…
「こんにちは」
と、喜助はアホみたいな笑顔で玄関から入ってきた。
の赤字の部分を指します。
ネットで調べると、
演劇脚本用語。台詞(せりふ)以外に登場人物の出入り、動き、心理、状況や照明、音楽、効果などの演出的要素を指定して書いた部分をいう。歌舞伎(かぶき)脚本で「ト思入(おもいい)れあって」というように、かならず頭にトと書いたのが名称の始まり。(日本大百科全書より)
とあるように、演劇脚本用語なんですね〜。なるほど。
落語台本は、基本的にこのト書は要りません。
落語はある種、会話劇です。
なので、会話だけで成立させることが大事です。
もちろん、古典落語の中に、ト書のようなナレーション部分が出てくることもあります。(『鷺とり』で、鷺を捕まえるために、円頓寺へ向かうシーン等。わからんかったら、YouTubeで「月亭天使、鷺とり」と検索して見てください。なんらかの鷺とりが出てくると思います)
ただ、それは、どうしても必要な説明なので例外やと思ってください。
(今、これ書いてて気づいたけど、説明の入るシーンは、一人で円頓寺に鷺を取りに行くシーンなので、会話にならないから、という理由があるのかもしれない)
この辺り、落語を聞いたことないのか、落語台本を見たことないのかわからないのですが、ト書を連発する人が、毎年、かなりの割合いらっしゃいます。
基本的に、落語台本になっていない作品は、落語を理解してない=落語台本として求められるものを理解してないと思うので、落語台本としてあまり面白くないのですが、もし、大量にト書が書かれた台本をやらないといけないとなると、ト書を全部、セリフに直さなければなりません。めっちゃ大変…。
例えば、先ほどの例文だと、
「こんにちは」
「おお、お前かいな。相変わらず、アホみたいな顔して、どないしてん?」
「アホみたいな顔て、ほっといとくなはれ。ちょっと入らせてもらいまっせ」
「いやいや、もう、入ってるやないか!おい、勝手にお茶を入れるやつがあるかいな」
みたいな感じに直さないといけません。
なので、登場人物の動きや状況は、全て台詞で表してほしいのです。
もしかしたら、慣れてない人にとっては難しいのかも…とも思いますが、逆にいうと、台詞だけだからこそ、できるボケもあります。
漫才でもよく使われる手法ですが、「△△のつもりで喋っていたけど、実は○○やった」というものです。
漫才なら…
A「ちょっと、コンビニの店員やりたいから、お客さんやってくれない?」
B「いいよ」
A「いらっしゃいませ」
B「あの、すみません。牛乳ってどこにありますか?」
A「あ、お客さま、すみません〜。うちはラブグッズショップですよ」
B「コンビニの店員ちゃうんかい!」
(即興で考えた台詞なので、笑いの精度は不問にしてください。深夜のテンションで書いてます)
上の例え、もしコントや演劇のように、コンビニの制服を着てたり、セットがコンビニだったら、ボケとしては成立しにくいわけです。
しかし、落語や漫才の中でのコントだと、出てきたままの衣装で、別の人物を演じるだけなので成立するんです。
会話だけの台本は、難しい反面、作れる笑いの幅も広がるし、やっぱり、私はシステムとして「落語は最強や」と思ってます。
この△△やと思ったけど○○やったという方程式を使ってはないものの、「これ落語やん」と思ったのが、バカリズムさんのコント『悪魔の契約』です。
正直、すごいです。
一流になる芸人の才能って、こういうことなんやなぁと。
台本も演技もオチも全て決まってる。
見終わった後、すごく気持ちいい。
こんなん作れたら、いいなと思う。
リンク貼りませんが、ぜひ、YouTubeで「バカリズム、悪魔の契約」で検索してください。公式YouTubeで単独ライブの映像が上がってます。
こんなふうな新作台本があったら、絶対、受賞すると思います
ではでは、続く