sexって人によってそんなに差がないと思います?

他の人の行為を見る事はまずないのだから 
実際、他人がどんな風にその時を過ごしているのかはわからない。

相性がいいとか悪いとか、大きさがどうのこうのとか揶揄するけれど、
私が一番思うのは、

なぜこうも一人ひとりアプローチが違うの?ということ。

仕事で分析分類をしているせいか、ついどこかで自分のプライベートでも客観視しているのかもしれない。
でも、他の女性は気にならないのだろうか…。
スタートから一人ひとりやり方が違うってこと。
そういうの、どこにも書いていないし。
違うというよりまったく違う。
少なくとも私の出会った相手はそれぞれ個性的だと思う。

ハウツー本に書いてあるような部分、核心に触れないような部分は同じかもしれないし、本やビデオで学習できそうな部分はそれなりに近いものがあるかもしれない。

うまく表現できないけど、ちょっとした力加減や本人の感覚的な部分はどうしようもないのだろうなと思う。本質が出る。

そして、
行為の時間や量にかかわらず、一度ふれあえば、その人の本当の創造力や優しさが見える気がする。

その人のすべてがわかるような気になる。

おそらく女性の側もわかられてしまっているんだろうな…。

互いに、すべてをさらけ出しているってこと。
考えれば恐ろしく、それでいて至福の部分。

人をsexしないで判断することはできないかもしれない。とさえ思うのだけど。

講演会場は異常に盛り上がった。
途中、前回の講演にはなかったおもしろいエピソードも織り込まれ、それに集まっていた人たちは反応し、多いに笑った。

私は今回は早めに会場に入って、前回と同じ2列目に座っていた。
そして、前回と同じようにパソコンを広げた。しかし、私が指摘したところはすべて修正されていたし、内容をメモるような気分でもなかった。


講演終了後に「懇親会は乾杯だけで帰らせてもらうように言ってあるので、先にここへ行って待っていて欲しい」と地図を渡された。

店は高級な創作料理店だった。フランス料理を基本にした和洋折衷の会席をお箸でいただく。
靴を脱ぎ部屋に入ると通されたところは、低いカウンターになっており、掘りごたつのように座り、前に立ち働く数名のコックの様子が舞台を見るように眺める事が出来る。

「●●さまから先に食前酒を勧めるように言われていますので」
マネージャがおしぼりを持って横に来た。

「ではミモザをください」


ミモザがほとんどなくなりかけた頃、息をはずませた状態で彼が入って来た。
「名刺交換に手間取ってしまって…」
前回と同じく、私と目をあわせる事なく、うつむきながら彼は言った。

シャンパンで乾杯をした後、私が言った。

「いい講演でした。笑いもあってテンポもよく完璧でした」

「あなたに褒めてもらえるようがんばって講演しましたから…」

そういうとそのまま沈黙した。

新しく運ばれてくる料理を口にしながら、その後も何度も沈黙が流れた。
ほとんど身のある話はせず、味の感想を言いあったり、ぼんやりコックの動きを眺めたりした。

締めのご飯が出る。次はデザートとコーヒー。
「今日これから…」
と小さな声で彼が話し始めたので、私が後を続けた。
「泊まる事はできないですよ」おおげさに、でもまんざらでもないように冗談めかして先制する。
「いや、そんな失礼なことは思っていないですよ」
多くの男性は判を押したように必ずこういう。こういう返しができる機会を作ってあげるのは女性の役目ではないだろうか。
「もう少しだけ飲めないかなと思って…」
「本当は誘ってくれるのかなーと思っていました。でも、今日は帰ります」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

おそらくこの調子では、今度2人で会うという約束をすればきっと最後まで行きつく可能性が高い。
そういう雰囲気だ。
2度目と3度目の違いが大きいのか小さいのか、それはよくわからない。若い人と違って、ただの友達になるかそういう相手になるかは早めに決まる。線路のようにポイント切り替えがあってどちらに行くのかガチャンと切り替える…そんな感じだ。お友達から始めませんか?というような悠長なことはない。1年かけてくどく…ということはたぶん稀だ。
それは男性だけでなく女性も同じ。でも、今日はやめておこう。


私は迷っていた。ずいぶんと彼に傾いていたものの、隣に並んで座ってみてわかったのだが、背が意外と低かった。もちろん背が低いのは好き嫌いに関係しない。
しかし、背が低い人の中には、いざという場面でおおいにコンプレックスを発揮することがある。
ハダカになってプライドもコンプレックスも捨ててほしい時、強がって女性を乱暴に扱う。
私にそれほどの経験があるわけではないが、これまで何度かそういう場面に遭遇した。
彼はシェフとして成功しているだけに独善的な匂いも感じるし、そういう可能性は否めない。
世の中にはいろいろな性癖があり、乱暴な事を望む女性もいるかもしれないが私は苦手だ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

8階から乗った下りのエレベータの中で、彼は私の体の後ろに回り、腰を抱きすくめた。
たいていの男性はエレベータの中で迫る時、奥に追い込んでキスをしようとする。
だが、彼はそうではなく、自分が後ろに回った。
真正面から人の顔を見る事ができない人をウブでかわいいと言っていられるのは若い人の場合で、ある程度年齢がいってこういう事をする人は、後ろめたいと感じているのかコンプレックスがあるか。あるいはバックが好みか…。

「また会う約束をして。小指を貸して」
彼は言った。
私は指切りのつもりで左の小指を出した。その瞬間、体に電撃が走った。
彼が私の指をすっぽりと口に含んで舐めていた。
小指と薬指の付け根の間に舌を這わす。不用意にも快感が走り、無防備になった瞬間に
今度は親指、人差し指、中指が口の中に飲み込まれてしまった。

単なる愛情表現にしては具体的で直接的。
彼は自分の舌のテクニックに自信があるのだ。今まで寝た女性たちにきっと絶賛されたことがあるのだろう。
舌の動きが「一度自分と寝たらきっと好きになるはず」と訴えている。
実際、舌は長く、先が尖っていて丸まったり伸びたりと滑らかな動きをしている。これは彼のデモンストレーションなのだ。

エレベータが1階についた。短い時間だったが私の左手は彼の意のままになってしまっていた。
閉を再び押そうとする彼を制して、私の右手が開を押し、歩道へと導いてくれた。

心地よい風が酔いを醒ましてくれる。

今度は、私が彼の腰に手を回す。こんな場面で変に間をあけて歩こうとするのはよくないと思っている。
相手のプライドを傷つけてしまう。帰りたければきちんと相手の体に手を回し、まやかしであっても嫌いではないとアピールして歩く事が大切なのだ。
ゆっくりと歩く。
歩きながらさりげなく腰から臀部を触ってみる。わざとではなくうっかりといった感じでお尻の割れ目、肛門のあたりに指が当たるようになでる。
肛門を触られて、まんざらでもなさそうな様子の男性は女性のバックにも執着する。
彼はいやがるどころか心なしか臀部を手のひらに押しつけて来た。それは、この人と寝れば要求される範囲は広いという信号なのだ。

結局、次の約束はしなかった。
私にはそうやって得た情報と自分の気持ちを整理する時間が必要だった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

この年になると勢いだけでいろんな要求を受け入れるのはしんどい。だが、男性はつきあいの浅い相手にこそ強引な要求をしてくる。
せっかく貴重な時間なのだからおだやかにロマンチックに過ごしたいという思いはなかなか達成されることがない。
無論、sexをしなければ、嫌な思いはしなくてすむ。
人生はsexをしなくても十分楽しいし充実している。
多くの女性がセックスレスでも楽しそうなのはカラ元気ではなく本当にそれでいいと思っているからだ。
むなしいセックスをするくらいならしない方がいい。
そう思わせるほど、元夫を含め、多くの夫は期待に応えない。そういうことだ。


しかし、その反面sexを楽しもうとするならば、おそらく今しかないと思うのが48歳という年齢ではないだろうか。
そして、それは私だけでなくほかの女性たちもそう感じているはずと思う。

ほかの事、たとえば、趣味に類するものはいくつになってもできる。だが、ことsexはどうだろう。
単に行為としてではなく、互いの駆け引きも含めれば、すでにタイムリミットではないか。
48歳なんて若い人から見ればsex適齢期をとっくに過ぎていると思うだろう。

でも、実際歳を取ってみると分かるのだが、気持ちは20代とそう変わらない。
若いとき以上に焦りがあるかもしれない。
男性に相手にされないようになることは人生のなにかが終わる時なのだと思う。
あるいは、女性としては死を迎え、新たな生き物に生まれ変わるのかもしれない。
蝶のように変態する。
蝶はさなぎから美しい羽を持った姿に変わるが、人間の女性は羽をもがれ、かたい殻のさなぎになる。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ともあれ、その日は大通りに出たら、丁重に頭を下げ、強く手を握って1人タクシーに乗り込んだ。
彼はエレベータの中以外では紳士であり、シャイな男性だった。
私に対し「ありがとう」と言い、自分も別のタクシーに乗り込んだ。
10歳年下の男性とのデートは多くの女性がうらやむかもしれない。
しかし、近いうちに答えを求められるのだから、悩みが増えただけと言えるかもしれない。
それでも、きっと同世代の女性からは贅沢な悩みと言われるのだ。


家の近くのダーツバーの前でタクシーを降りた。飲み直すというか、この悶々とした気分は家には持って帰らない。一杯のバーボンとマスターとのたわいない話で、気分を変えてから戻る。
さっきの事はすべて忘れる。家ではあくまでお母さんだ。キャバクラ帰りのお父さんの気持ちとそうかわりはないと思う。ダーツの成績は500を少し超えた。自分にしてはかなりハイスコアだ。気分よく家に帰ろうと思った矢先、携帯にメールが入った。


「ますます/惹かれました。次回を楽しみに待っています」

さあ、どうしようか…。

会ってからずっと、ごくまじめな話に終始した。
それは彼が意外にも目も合わせられないくらい緊張していたからだ。
メールのような積極的な言葉はいっさい出てこない。

彼は自分が、イタリアの学会に招聘されて来年早々に講演をしないといけないこと、それが業界初の出来事であり、自分としてはイタリア語をそれまでにマスターできるのかどうかが不安だという事を語った。
私は、私の友人がアーティストでイタリア人と結婚して語学のプライベートレッスンを受け付けている事を伝え、それに対し、彼はぜひ紹介してほしいと言った。
そして、その話題が終わった後、当初の目的に添って、前回の講演内容について、私の見解を述べた。仕事柄、分析結果を述べるのはそう難しい事ではない。だが、彼はことのほか喜んだ。すでに業界内であがめられている人は、普段、講演内容にケチをつけられる事はない。

「今度の土曜の講演でそのあたりを修正して披露するからあなたにぜひ聞きに来て欲しい」
そう言った。
言ったというより懇願に近かった。ドキドキして目を合わさない彼とその強い懇願に、好感を持った。
スケジュール帳を取り出してみると午前中に息子の学校での懇談が入っていた。
そのため、幸いというか午後に予定は入れていなかった。
学校から子どもと一緒に帰るつもりだったのだ。

-----------------------------------------------------

私は、男性と始終一緒にいるようなつきあい方はしたことがない。

結婚している間も夫は週末だけ帰ってくる週末婚だった。寂しくなかったし、どちらかというと「えっもう週末?」というぐらい1週間はあっという間だった。
離婚した今だから言えるが、何年かに1回の割合で夫以外の男性とsexをしたこともあった。だが、相手に依存する事はなかった。たった1回もしくは長くて数回のつきあいだった。無論、結婚していたら他の人とつきあうことだけでも罪を犯していることになる。だが、人の気持ちはそんな単調ではないし人生は長い。

夫に操を、などときれいごとではすまない複雑な思いを抱えていた時期もあった。
だが、自由になったはずの離婚後に新しい出会いはなかった。
浅い付き合いの相手とでも条件が合えばできるし、あるいは勢いだけでもsexは成立する。しかし、そう執着しているわけではないので、あれよという間に3年経ってしまった。

条件といっても、結婚前のお嬢さんとは内容がかなり違う。
相手が未婚か既婚かとうことも、年齢も、懐具合も金遣いの荒さもそう影響しない。こちらとしては、根掘り葉掘り家族や生い立ちのことを知りたがる人はそれだけでパスだ。自分の家族の事を異常に話したがる人ともあまりつきあいたくない。
できれば過去ではなく、今からしようと考えている事や夢を話してくれる人がいい。つきあうのは未来であって過去ではない。これから,この人と過ごすとどんな事が起こるのかがわかればそれで良い。
だが、簡単そうなこの条件をクリアする人になかなか巡りあわない。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

彼は私の年齢も住んでいるところも聞かなかった。私もあえて言わなかった。
「そろそろ帰りたい」と伝えるとうなずいてあっさりと立ち上がった、
店を出ると横に並ぶ事もなく少し前を歩いた。無言で駅まで送り「ありがとう」と言った。
それにはとても好感が持てた。
ひょっとして女の人との付き合いに慣れていないのかなとも思い始めた。初めてのデートは90分で終了した。
でも、たぶん私は次の講演に行く。

昼過ぎに新たなメールが来た。

「いよいよ明日ですね/約束忘れないでください」

私自身も数日前の憂鬱な気分から、なぜかわからないが、会うのが楽しみなモードになってしまっていた。
男女の間はゲームに近い。参加してみると楽しい。

「学生時代のようにどきどきしています/駅からまっすぐ北に歩いたところにあるビルの前で待っていただけますか」
彼からのメール。

「場所了解です/でも、なんだか主旨変わっていませんか」

「もう気持ちが/おさえられなくて。すみません」

「Re/とりあえずうかがいますから」