全動物がヒトと同程度の知能を持ち始めた。

所沢市との交渉が成功し、猛獣は自由に過ごす権利を取得した。


それは恐怖だ。常にビクビクと怯え緊張して過ごす。


檻に入れられていた猛獣が至る所でヒトと同じように自由に動いている。

ライオンや白熊が、近所の山田うどんの駐車場で悠々と過ごしていて、人間はその横を気づかれないように緊張して歩く。


わたしの自宅は田んぼの真ん中の一軒家で、周りの田んぼは水深が深くカバがいる。

時々鼻だけ出して威嚇している。巨体で突進されたら恐ろしい。


歯止めのきかない猛獣の恐怖に怯え外に出られない。


過去に出会ったゴリラの女の子を思い出す。


あの子がヒト同様の知能もった最初の動物だ。


いま、どうしているのだろうか?

あの子がいれば猛獣との架け橋になってくれて、わたしは助かるのではないか?

あの子はどこにいるんだろうか?


以前の記憶を頼りに、会いに行くことにする。そう考えたとたんに、とてもさびしくなった。「家に連れてこよう!」


カバに気づかれないように田んぼを抜ける。畦道は人一人分しか通れない。田んぼの底なし沼に落ちないように慎重に走る。


ライオンの真横はスキを伺いながら息を止めて足音をさせないように通る。


すぐ近くでライオンと白熊が、向き合っていて緊張感がそこらじゅうに漏れている。


暗い森の入り口を塞ぐようにオランウータンやゴリラが山を作るようにいた。

その中で、わたしはたくさんの瞳から知能の証である白目を探す。あの子は他の動物と違って白目がハッキリあったはずだ。


不安そうにこちらを向く真ん丸の可愛らしい瞳を発見した。

うちの犬のような真ん丸の黒目しかない目だ。

わたしとゴリラの女の子は抱き合う。ゴリラだと思っていたがチンパンジーだった。

彼女は、もう自分の力では歯止めがきかないと言った。


抱いて家に戻る。


家への一本道を通ろうとすると、向こうからライオンが来るのが遠くから見えた。わたし達に気づいてはいない。

ライオンよりはカバの方がこわくないとの理由から田んぼに潜った。

潜るわたし達の頭上真横に、ライオンが探し物でもしているかのようにいる。

気づかれないように動かない。気づかれないようにもう少し潜りたい。が、なぜか少しづつ浮かんでいく。足に力を入れて沈もうとする。

完全に頭が少し水面から出てしまった。

その時、畦道の反対側から白熊がきてライオンと膠着状態になる。

わたしはチンパンジーの女の子を抱えて畦道を走る。

走りながら、昔女の子が大人だったときにいっしょに草原の小高い丘の上をフワフワ飛んだことを思い出す。

シャガールの絵みたいな映像が走るわたしの頭の中に流れる。

濃紺や青や群青を叩きつけたような空には、黒い渦のようなものがたくさんある。

わたしはそれが鳥だと知っている。

姿は見えないが見たことのない知らないわたしは、金髪で真っ白い木綿の素朴な民族衣装のようなワンピースを着た女性と手をつないで、緑の草原より少し高いところをフワフワと流れている。


草原の小高い丘には素朴な木造の白くベインとされた手すりのついた洋風な小屋がある。

そこはわたしの家だと、わたしは知っている。

そこでわたしとのチンパンジーの女の子は暮らしたことを知っている。そんなような映像が断片的にスライド映像される。


<目覚める>