片手で楽しむ阿武奈絵
やっとこさ「春画展」に行ってきた。平日週末関係なしの大盛況、入場に何時間も待つというウワサを聞き、じゃあ混雑が落ち着くまで待つかっつって悠長に構えていたものの、いつまでたっても客足は遠のかず、むしろ終了日が近づくにつれまたもや盛況を呈し始めているに至り、これではいかんと重い腰を上げたのである。
当日は天気も上々、お出かけするのに最適なお散歩日和。会場となった永青文庫で入場に20分ほど待たされるが、寒くないので苦ではない。やっと入場できたと思ったら、中はひとの洪水でまともに見られず、狭い空間に老若男女が犇めく地獄絵図。ひとが多すぎるせいなのか熱気なのか興奮なのか、とにかく暑い。頬を上気させ、はあはあと息を弾ませながら虚ろな目つきで会場をフラフラと徘徊するマダムは、どこから見ても変態であった。
結果から言う。非常に良かった。春画はマダムが思っていた以上に歴史があり、バリエーションに富み、アクロバティック(?)であった。
まず肉筆画から見ていくのだが一番古い春画は鎌倉時代のもので、斎宮(天皇家の巫女)の済子女王が男と密通した事件を題材にした「小柴垣草紙」である。
これがまた大らかというか解放的というか、のびのびとなさっている。済子女王の相手は朝廷を警護する武士だそうだ。高貴な女性を手籠めにするというファンタジーは昔から普遍なんだなあ。しみじみ。
春画は床の間に飾っておくものではなく、必要なときに引っ張り出しすぐに仕舞ってしまうものだ。従って、保存状態が非常に良い。
さまざまな体位が描かれた巻物、表装された春画もあった。春画は見て楽しむだけのものではなく、大名や武家の娘が結婚するとき嫁入り道具のひとつとして持たせた。初夜のテキストという実用書でもあるし、子孫繁栄を願うという縁起物としての一面もあるそうだ。
でもいきなりこんなもの持たせられた娘も驚いただろうなー。だって無修正だよ?当たり前だけど。もうね、がっぷりしっかりハマってる局部が丸見えなんだもの。当たり前だけど。
春画は別名「笑い絵」とも呼ばれ、局部をパロディ化したものも描かれた。
ところで春画の素晴らしいところは、登場人物の全てが楽しんでいるということである。カップリングの階級も多種多様、高貴なひとびと、帯刀した武士と女房、坊主と稚児、一般民衆、遊女と火消し、花魁と若旦那。組み合わせは無限である。
更にカップリングも多彩で、男女の他に女同士(張型有)、男同士、3P、乱交、のぞき、SMなどなど何でもあり!幽霊や骸骨といった異種格闘技的なものまである!
北斎の春画として一番有名なアレもあった!!このたった一枚の春画から、日本における触手の歴史は始まったのだ。
しかし、しかしこれで驚いてはいけない!そこには更に破壊力抜群なブツが展示されていたのである。
エイ相手に男の厭世的な表情が含蓄のある一枚。これを見て一体どうしろと。変態大国日本という称号は伊達じゃねえぜ。
さあ、気を取り直そう。気を取り直しても結局春画だけどな。江戸時代の売れっ子絵師は誰もが春画を描いた。浮世絵春画には風景や小物などが事細かに描かれ、登場人物の状況と当時の風俗が忍ばれて風情がありまくり。表情も素晴らしい!
最近の展覧会ではタイトルに英訳がついているので、それを確認するのも楽しみのひとつである。いくつか見てみよう。
「陽物涅槃図」の英訳は「Penis Prinirvana」
なるほど、入滅前ってことで涅槃ニルヴァナにPriが付くのか。陽物はそのままっつーか、まあ、直訳だな。
「歌まくら」→「Poeme of the Pillow」
これは分かり易く風情のある英訳だ。歌をポエムにしてるのが大人なニュアンスを伝えて良い。
「花鳥余情 吾妻源氏」→「Deep Feelings of Bard and Flowers Genji of East」
余情がDeep Feelings!ディープフィィィィーーリングス!分かるような分からないような。
「枕童子抜差万遍玉茎」。おっ、これはなかなか訳し辛いんじゃないか?
「Pillow Book for the Yong, All you Need to Know about How the Jeweled Rod Goes In and Out」
うわあああああ!程よく訳し過ぎ!もしかして玉茎がJeweled Rod?Jewelが受動態ってことは「宝石で飾られた」?なんてジュエルなサオなんだ!しかもGose In and Outって!In and Out!インアンドアウト!いんあんどあうとおおおおおお!!どストレート過ぎるぜ!
とにかくこの春画展は圧巻であった。欲を言えば、やはりもっと大きな会場でゆっくりと見たかった。っつーか、春画っていまだに取り締まり対象なの?どうなの?今回みたいに「18歳未満入場禁止」にすれば上野でもやれんじゃねえの?
まあ、初めて伺った永青文庫の建物そのものが素晴らしく、窓やら階段やら踊り場の書棚やらを味わえたのは面白かったけどさ。
ブティックでは図録を購入。4000円と少々高いが質の良い紙を和綴じにした力作。これこそ永久保存版だ。大事にしようっと。他にはトートバッグ、ティーシャーツ、トランクス、伝統工芸の合切袋(三万円の受注生産!誰が買うんだよ!)といった土産もあったが、全体的に高かったのが玉に瑕。殿料金なのか?「春画展」を開催した殿の勇気は称えるけど、土産物の値段は庶民相手にリサーチした方が良いぞ。
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