疲れた顔を嬉々と載せ
深まる宵を切り裂いて

走る走る走る走れ

ひとたび止まれば
大きなため息ひとつして

吐くよ吐くよ吐いて吐くよ

深まる都会の暗闇の影
追い付かれてたまるかと

逃げる逃げれば逃げる逃げれる

近づく明日の憂鬱な朝
早く現つに戻れよと

急ぐ急いで急げ急ぐよ

ホームと名乗りし
わが家の入口

誰もがそっと息を吐く
今日一番の優しい息を
車、酒、銃、暴力が生み出すカオス。
それがハードボイルド小説の世界の醍醐味。

アキを中心に繰り出される幼いが勢いのある赤い炎のようなバイオレンス

柿沢と桃井が見せる冷たく深みのある青い炎のようなバイオレンス

2つの温度差のある炎
赤い炎は青い炎を畏れ
衝突を回避しようと模索しながら
悩み、葛藤しながら
幼きバイオレンスが成熟していく

何も人がたくさん死ねば優れたハードボイルド作品なわけではない

カオスの中で成長していく若者を描いたハードボイルドの名作
もう一歩
もう一歩が
遠い道

いま一歩
いま一歩が
救いの道

この一歩
この一歩が
作る道

道端の花
天界の星
地平の山

欠ける月
枯れる桜
満ちる海

幾多幾夜を過ごした風

そう
この一歩

そう
また一歩