商売において、顧客名簿以外ほかには何もいらない。 | 三茶農園/きむらさとる

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人々は、情報洪水、成熟市場、エコ意識の浸透などなど、行きすぎた消費社会に疑問を持っているわけで、毎度毎度新商品を買ってくれる新規顧客ばかり開拓するということに限界が来たわけです。

で、今度は既存顧客に末長く使っていただくことも考えよう、となってきているわけだが、そもそも、既存顧客に長くつかってもらうなんてことは、商売におけるあたりまえの基本。江戸時代の昔から、お得意さまの重要性を、商売人ならみな知ってるわけです。
江戸時代の呉服屋は、店が火事になったら、大福帳を井戸に投げ込んで逃げるんです 。反物なんかが燃えていても、そんなものは放っておいて、まずは大福帳を守るわけです。大福帳は特殊な、こんにゃくで作った紙を使っているから、墨で書かれた文字が水につけてもにじまない。で、火事がおさまったら、井戸から大福帳を引き上げて、商品が燃えてしまったお詫びかたがた大福帳に記載された取引先に1軒1軒あいさつ回りをします。そうすると、お客さんがまた商品を買ってくれる。だから、建物も立て直せますし、商品も仕入れてこられる。呉服が燃えた損失は微々たるもの、それに比べてデータベースの焼失の損害は図り知れないということを、昔の商家はよく知っていたわけです。
「大福帳」とは顧客管理帳、いわゆる顧客名簿データベース。
富山の薬売りの「懸場帳」、立山信仰の「檀那帳」も同じように代々引き継がれる顧客名簿です。
ソーシャルメディアによって「人と人とのつながり」という古くからあった関係性に戻ろうとしている。 マスメディアで100万人に薄く情報を流すのではなく、まず100人を濃いファン(ロイヤルカスタマー、エバンジェリスト)にする。その100人を基点に、人のつながりと共感の道筋を辿って静かに広がっていき、計100万人に伝わっていくようなコミュニケーション。

となると、100人にしっかりファンになってもらうためのマーケティングをしていかないといけない。
それがソーシャルメディア・マーケティングの勘所だと思う。どうやって、その100人のライフタイムバリューになっていくか。新規顧客を増やすのではなく、既存顧客に長く使ってもらう発想への転換。
共感してもらった濃いファンに、末永く使っていただきながら、できたらお知り合いも紹介していただく、というのが商売の基本です。これを、ネットという以前にはなかった物理的距離と心理的距離を介さないツールを用いることで、さらに、リアルタイムコミュニケーションしていこうってのがソーシャルなマーケティング、っていう話ですかね。