死文化した不正競争防止法2条1項3号 | 知財弁護士の本棚

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企業法務を専門とする弁護士です(登録30年目)。特に、知的財産法と国際取引法(英文契約書)を得意としています。

ルネス総合法律事務所 弁護士 木村耕太郎

 新学期となり、うちの子は「いきものがかり」に就任したそうである。亀の世話をしながら、「さーくらー舞いー散ーるー」とか絶叫したら、受けるんじゃないかな。小学生は知らないか。


 さて先日の勉強会で、東京地裁平成20年7月4日判決・平成19年(ワ)19275号(以下、第1事件という)および東京地裁平成22年11月4日判決・平成20年(ワ)36935号(以下、第2事件という)に接して、「そうだったか?」と思うことがあった。


 事案は要するに、形態模倣品をA社が製造し、B社を経由してC社に納入され、C社が不正競争防止法2条1項3号該当で訴えられたのが第1事件。同じ模倣品についてAとBが訴えられたのが第2事件である。


 第1事件では、模倣品であることは認定されたが、Cは「譲り受けた者」であり、善意・無重過失(=模倣品であることを知らず、かつ知らないことにつき、重大な過失がない)であるとして、法19条1項5号ロにより、適用除外とされた。


 第2事件では、実は製造者はAでなく、中国のメーカーであるということになり、AもBも「譲り受けた者」であり(そういう表現ではないが、意味はそうなる)、善意・無重過失であるとして、やはり請求棄却となった。第2事件では、模倣品か否かは判断する必要がないとしている。


 「重過失」というのは、故意と同視しうる過失であるから、法律の世界では、認めないのが原則である。だから、法2条1項3号というのは、条文はあるけれど、実際の適用場面は極めて狭い、ということになる。メーカーを直接、訴えないとダメだ。そのことが、今回のケースでよくわかった。


 *その後の調査で、輸入業者を相手に訴えたケースで、善意・無重過失ではないとして請求を認めた裁判例がいくつかあることが判明した。