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企業法務を専門とする弁護士です(登録30年目)。特に、知的財産法と国際取引法(英文契約書)を得意としています。

ルネス総合法律事務所 弁護士 木村耕太郎

 出張で沖縄の名護市に行ったことがある。那覇から名護まで車で2時間くらいかかったか。


 沖縄の道路はもちろん左側通行であるが、街中でドルが使えたり、水をガロン単位で販売していたり、今も占領時代の名残がある。すごかったのは、高速道路の脇に看板が立っていて「この両側はグリーンベレーの演習場です。実弾にご注意ください」とか書いてある。


 でも裁判所と法務局に行き、日本の隅々まで同じ法律が施行されていることを実感したときは少し感動した。やはり沖縄は日本であると。


 名護は静かで美しい町である。海は青く透明だ。


 そんな町に新たな基地ができるなんて、住民なら反対するのが当然だ。それは分かる。特に「海兵隊」だから心配だという向きもあろう。


 しかし「基地のないわが町」と「基地のあるわが町」を比較しても意味がない。日米安保がある以上、どこかに基地は必要だ。日本がロシアや中国から攻撃されたときに自衛隊だけで何時間持ちこたえられますかという話なんだから、戦争なんて起こらないという前提で考えては意味がない。戦争が起こったときに日本国の被害を最小限に食い止めるためにどうするかの話をしているんである。こういう話は、わからない人には説明してもわからない。


 国の政策の問題なんだから、地元の同意を取り付けるとか説得するとかは必要ない。同様に徳之島や鹿児島県が反対しているからって政府はいちいち気にする必要はない。社民党が何を言おうが断固として無視しなければならない。


 理屈はこういう話なんだが、私だって自分の住んでいる町に基地ができると聞かされたら反対する。または、直ちに引っ越すであろう。


 基地のある町は住民税を無料にし、医療費、教育費も無料、住宅も政府が無償または格安で供給するとか、せめてそれくらいしたらどうか。町外に引越したい人には引越し費用を補助するとか。そのための税金なら喜んで払いたい。基地のない町の住民である自分としてはそれくらいしかできない。