私がクラシック音楽を聴くようになったきっかけは、村上春樹さんの小説を読んでいて「スパゲッティをゆでるときは『泥棒かささぎ』に限る」とか何とか書いてあったからである。
「泥棒かささぎ」はロッシーニのオペラである。ロッシーニ(1792-1868)は70歳以上まで比較的長生きした作曲家である。
ロッシーニのオペラで一番有名なのは「セビリヤの理髪師」で、この話の続きがモーツァルトの「フィガロの結婚」である(原作者が同じ)。ときどき間違って「セルビアの理髪師」という人がいる(私の母だ)。セビリヤはスペインの都市である。
ロッシーニのオペラは、どれも序曲が素晴らしい。しかしオペラ全体はというと・・悲劇も喜劇も同じように聞こえてしまう。序曲だけが評価されている作曲家という面がある。
ロッシーニはミスター・クレッシェンド(「次第に強く」の意味)と呼ばれて若くして名声を確立、30代にはほとんど引退生活に入り、後半生には大きな作品を残していない。
よく言えば「悠々自適」のうらやましい人生。しかし、自分の作風が時代遅れになったことを知ったがゆえであり、可哀想でもある。
仕事をしないで何十年も生きながらえるロッシーニ的生き方は、私には無理そうである。