今年の気になるニュース | 知財弁護士の本棚

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企業法務を専門とする弁護士です(登録30年目)。特に、知的財産法と国際取引法(英文契約書)を得意としています。

ルネス総合法律事務所 弁護士 木村耕太郎

 今年もいろいろありました。今年のニュースで記憶に残ったもの、皆さんは何ですか。


 ローカルなニュースですが、私は「銚子市立総合病院の閉鎖」に注目しています。


 千葉県銚子市は人口7,8万人の町です。大きな観光ホテルが数軒あり、漁獲高(重量)日本一の漁港があります。決して田舎ではありません。その町で唯一の総合病院が医師不足で閉鎖されてしまったのです。


 私は、たまたま今年の春に銚子に旅行に行きました。「東洋のドーバー海峡」と呼ばれる屏風ヶ浦が見たかったのです。東京から特急で2時間以上かかりますが、行く価値はあります。温泉もあり、夏涼しく冬暖かく、なかなか良いところです。その経験がなかったら見過ごしてしまったニュースかもしれません。


 でも、これは単なるローカルな話題ではなく、今後、日本各地で起こる数多くの同様の問題の先がけなのです。


 背景には、制度改正で研修医が研修先の病院を自由に選べることになったことがあります。そのため一部の大学病院が人手不足となり、地域の病院に応援の医師を送る余裕がなくなったそうです。このような問題が顕在化したため、現在は、旧制度へのゆり戻しも検討されているようです。


 研修医を奴隷のようにこき使うと言われる今までの制度がよかったとは思いませんので、旧制度に完全に戻ることはないのでしょう。でも何とかうまく解決してほしいものです。


 また、産科の廃止・縮小が全国で相次いでいるということも気になります。


 産科の場合、長時間の過酷な労働に加えて、訴訟リスクを気にしてなり手が減っていることも大きいと言われています。たしかに、医療過誤訴訟というと産科と麻酔科が多いというイメージがあります。


 でも出産は本来的に危険な行為です。結果だけで訴訟を起こすなんてばかげていると、個人的には思います。

 

 かつて、労働訴訟で企業側を代理する弁護士は誰もいませんでした。同業者から白い目で見られたからです。今はそんなことはありません。医療過誤訴訟においては、今もなお、医師側を代理すると白い目で見られるような風潮がなきにしもあらずで、医師側を代理する事務所は限られています。私自身は医療過誤訴訟はやりませんが、医師側、特に産婦人科医を代理する弁護士がもっと増えないかと期待しています。