サッカー審判TIPS(702) 儀式の練習 | サッカー審判KenKenのブログ

サッカー審判KenKenのブログ

サッカー3級審判KenKenの審判経験記

サッカー審判TIPS(702)
儀式の練習

先日行なわれたサッカー審判プラクティカルトレーニングでの講習を紹介する。
TIPS(700)で書いた(1)の講習。フリーキック判定からキックをさせるまでの一連の手順。
講習者約30人が主審役、FW役、DF役に分かれてスタンバイ。
・FW役が2人でボールを手で持ってパスしながら歩く。
・DF役は数人が出てきて一人がボールを持っているFW役にタッチ。
・これをファウルとみなし主審役が笛を吹く。
・DF役はボールの前に立つので主審が壁を下げさせる。
・笛でプレー再開。
というプログラムだ。この練習の目的は、バイタルエリアでのFKで壁の距離を確保する儀式の手順確認。

参加者はお互い知らない同士なので遠慮がち。
トコトコと歩きながらボールをパスしたり高く投げ上げて落としたり。DFが歩いて近づいてきてタッチする。
ヒョロヒョロと笛が鳴る。
DF役たちはだらだらと壁を作りそして下がる。

こんなことの繰り返し。講師からは主審役のアクションについて何のコメントもなし。見本を示すでもなし。
どうにも緊迫感が無い。まったりとした時が流れていく。
こんな講習を受けに来たのではない。これでは何度繰り返しても何も得るものはないとがっかり。
もっと実戦に近い状況にしたいと考え、変化を付けることに(勝手に)した。
DF役だった私は何度目かの練習のときに5人のメンバーとダラダラとFWに近寄りファウルを犯す。
笛が鳴ったらボールの前に立ち、後ろを向いて片手を上げGKに壁の位置を尋ねるジェスチャー。
そして次の順の時はボールの前に座って靴の紐を締めなおすパフォーマンス。
同意してくれたメンバーの一人が私と並んで靴紐を結びなおす。
こんなことはこの講習では想定していないだろうが、試合中では起こらないとも限らない。
私だったら、笛が吹かれたときにボールの前にいた選手が靴紐を結びなおそうとした場合には(距離を守らない
という理由で警告を出しても良いのだが)、まずはとりあえず一度「強く」注意して離れさせる。
以前に少年の試合であったことだが、笛が吹かれた途端に離れた場所からボールの前に走ってきて靴紐を
結びなおし始めた選手がいた。これには、一発でイエローカードを出させてもらった。

話を戻そう。
あんなことやこんなことをしても講師は何も言わない。
退屈な練習に変化をつけてくれてありがたいと思ってくれているのだろうか。
試合で起こりそうなことをもう一つやってみた。
FW役が回ってきたときに、壁が下がっているときにボールを50cmほど前に出してみた。
これも何も起きない。
これでは練習にならないだろう。

自分が主審役をやる順番がやっと回ってきた。
ところがここで講師がひとこと。
「時間が足りないので主審役は2人でやってください。一人が笛を吹いて一人が壁を下げさせて」
なんとまあグダグダな講習だろう。

文句を言っても仕方がないのでペアを組む人に「じゃ、私が笛を吹くので壁を下げさせてください」と打ち合わせ
て練習開始。
ピーッと笛を強く吹き、ファウルを宣告。
ボールをセットしてFW役に聞く。「すぐ蹴る?」 それに対して「いいえ」。
左手に持った笛を頭上に上げて右手で指し「笛で再開します」と宣言。そしてボールを動かさないように、
主審が場所を覚えてるよと意識させるように「ポイントはここ」と指示し、「はい壁下がろう」と言う。
あ、ここでバトンタッチしなければ。
ということでフリーキックのセレモニーの練習は終了。

もし私が講師だったら、もう少し実践的にやらせたい。
FW役は手ではなくインサイドでのパス交換でもよいからボールを動かしてもらう。
DF役は3人くらいで実際にボールを追う。
ファウルをさせるわけにはいかないのでFW役に対してタッチしてもらう。
そこで笛を吹く。
キーパー役を一人つくり、壁の位置を指示させる。
DF役には前もって指示して実践に近いリアクションを依頼する。
例えば笛が吹かれたらボールを遠くに蹴ってしまうとか、主審にノーファウルをアピール(異議)するとか。
それに対して主審役がどう対応するかを見て、その都度「こうした方が良かったよ」とか「こういうふうに言って
みたら」などとアドバイスをする。
周囲で見ている受講者も「こんなことあるある。こういう風に対応すれば良いのか」と今後の参考になること
うけあいだ。

文句ばかり書いたが、講師の方からも良いアドバイスがあった。
主審がボールを拾ってフリーキックのぽインドに持ってきて渡した場面があった。
それに対して「主審はボールに触らない。ポイントを示し、選手に持ってこさせて置かせれば良い」と言ってた。
主審の役割は試合の監視だからポイントを示しながら周りを観察し状況を見ておいた方が良いからだ。

何回かに一回、9.15mの紐を持ってきてボールから壁までの距離を計測。一同笑ったりうなったり。これは
面白かった。

さらに、「ゆっくりと慌てずにやりましょう」という言葉も。
どの受講者も笛を吹いてからすぐ壁を下げさせるアクションに移ってしまったが、ファウルを取ってから再開
させるまでは主審の時間なのだから急いで蹴りたいのでなければゆっくりとやればよいとのこと。
これはその通り。ただ、試合の終盤で残り時間が気になる場合には頭上に時計を掲げてストップウォッチを
止める動作をして見せればよいだろう。(本当に止めたら、プレー再開時に時計を動かすのを忘れずに)

そして最後に、「状況は一回一回異なります。画一的に同じ対応をするのではなく自分で考えて対応をして
ください」という言葉で締められた。