プロボクシング東洋太平洋フェザー級タイトルマッチ12回戦が3日、東京・後楽園ホールで行われた。ロンドン五輪でバンタム級銅メダルの、東洋太平洋フェザー級チャンピオンの清水聡(32=大橋)が同級6位の上原拓哉(23=アポロ)と対戦した。挑戦者の上原も16戦全勝(10KO)で無敗レコードだ。注目の無敗対決となり今回は清水の苦戦も予想された。しかし、2ラウンド目に清水の打ち下ろしのワンツーが決まり上原がダウン。その後はキレのあるパンチでダウンを追加し、上原を圧倒した。計4度のダウンを奪って3ラウンド1分26秒にTKO勝ちとなった。予想以上に圧巻のパフォーマンスで、あっという間に決着がつき、清水の強さが際立った試合となった。清水はプロデビューから8勝8KOの連勝を記録しパーフェクトレコードを更新した。

他の長身の選手と違う特徴

 清水の特徴はフェザー級では珍しい180cmに近い身長と、左構えのサウスポーのスタイルだ。普通はそれだけ身長があると、相手との距離を取ってリーチを活かした長距離のボクシングを展開する。しかし清水は高いKO率からも分かる通り、どんどん積極的に前に出てプレッシャーをかけていく。相手としたら、ただでさえサウスポーはやりづらいのに、前にガンガン出てくるので面食らうのだろう。また、近い距離になると高い位置からの打ち下ろしのストレートが飛んで来るのでひとたまりもない。接近戦では身長差があり高さがあるので、清水の顔にパンチが届きにくい。このように相手にとっては非常にやりづらく、理にかなったスタイルを展開している。また清水は、細い体からは考えられないKO率100%を誇るパンチ力が武器だ。ボクシングではKO率が高いパンチャーは3種類に分けられる。

キレとパワーと硬さ ハードパンチャーの種類は違う

 ハードパンチャーというとパンチの強さに目が行きがちだが、必ずしもパンチのパワー=KOには結びつかないのがボクシングだ。KO率が高い選手にはそれぞれ特徴がある。まずは、1発のパンチが破壊力があり、パワーで相手を倒すパワーパンチャータイプだ。こういった選手は拳に体重を載せる技術に優れていて、全体重が拳に乗って強力なパンチを打つ。例にあげると井上尚弥選手や内山高志選手だ。パンチ力で相手を圧倒し、KO率も非常に高くシンプルに強い。

次にキレやタイミングで倒すタイミングパンチャータイプた。ボクシングは必ずしも強いパンチで倒れるとは限らない。パンチが強くても、そのパンチが見えていたり、予測できたりすると相手も対応することができる。しかし、いいタイミングや予測できない見えないパンチを急所にもらうと、強いパンチでなくても倒れてしまう。試合を見ていてそんなに強く当たっていないのに倒れている場合は、タイミングで倒しているケースが多い。このタイプは井岡一翔選手やワシル・ロマチェンコ(世界最速の3階級制覇王者)などが当てはまる。

最後に今回の清水のように、硬いパンチを打つハードパンチャータイプだ。このパンチはハンマーで殴られているようなパンチでもの凄く痛い。相手からしたらジャブもストレートも硬くて効かせられるので非常に嫌なタイプだ。そんなに強くないパンチでも相手の顔を腫らしてしまう事ができる。硬い拳は持って生まれてくるようなもので、才能による部分が大きい。現に清水のパンチは物凄く硬いようだ。ダイヤモンドレフトのニックネームもダイヤモンドのように硬いところから、つけられているのだろう。以前インタビューで聞いたことがあるが、清水は骨が硬いらしく、それがパンチを硬くしているようだ。強い骨を持っているようで、ハードパンチャーにありがちな拳を痛めることもないようだ。このようにハードパンチャーといえども3種類に分けられるが、この3種類を組み合わせて複合的なパンチを打つ選手も多い。

来年は清水聡にとって勝負の年となる

 今回の試合に勝ったことで世界挑戦にも一歩前進だ。現在の清水の世界ランキングはWBCが6位、IBFが3位と世界挑戦は射程圏にある。しかし、中量級であるフェザー級は、海外でも人気が高くなかなかチャンスが訪れない。清水はアマチュア時代には現在の世界チャンピオンや、そのレベルの選手とも戦っている。プロでのキャリアはまだ10戦に満たないが、アマチュアでは2大会連続でオリンピックに出場しており、ロンドンでは銅メダルを獲得している。アマチュア戦績も170戦 150勝 (70KO・RSC)と豊富な戦績と実績がある。いつ世界戦が決まってもいい位置付けにいるのではないだろうか。来年は清水にとっても勝負の年となりそうだ。15歳から始めたボクシングは、自分に取っての相棒で一生の付き合いです。と語っていた。本人も「今までで、一番良い内容。まだ良くなります。来年は世界挑戦する」と試合後に意気込みを語っていた。そんな清水が世界挑戦する日も近いのではないだろうか。勝負の年となる来年の清水聡に注目だ。

 

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