またもや映画のことについて書かせていただきたいと思います。
映画館で「ドッグマン」という映画の予告編をみました。
なんとも地味なタイトルだなあ、と思ったのが最初の印章です。
ですが、リュック・ベンソン監督の新作と知ってびっくり。
リュック・ベンソン監督は、名作の「ニキータ」(1990)や「レオン」(1994)で有名な監督です。
ハリウッド映画の中にフランス映画的な暗さを持ち込みながらも一流の娯楽映画として楽しめる作品を創り出した手腕は見事としかいいようがありません。
しかし、「ニキータ」と「レオン」の出来があまりにもよかったせいで、その後は少し精彩を欠いていた感があるのも事実です。
前作の「ANA」(2019)もそれなりに楽しめたのですが、あまりにも「ニキータ」に似ていたように思います。
その前作から4年振りの作品が「ドッグマン」となります。
この作品は全面に暗さが漂っています。
両親から見放され、社会の不条理を一身に背負ったかのような主人公のダグラス。
父親が放った散弾銃により、下半身の自由を奪われ、車椅子生活を送っています。
職を得るにも苦労し、女装してショービジネスに糧を求めていました。
唯一の味方は大勢の犬たち。
そんなつつましくも小さな幸せのある生活でしたが、外部からの圧力により崩されていきます。
日本のコピーだと「規格外のダークヒーロー爆誕」とありますが、ダグラスはヒーローなどではありません。
運命に翻弄されて右往左往する迷い人です。
人助けをしたところから生活が崩れていくというのは「レオン」」と似ているのですが、この映画はストーリーを楽しむものではないと思います。
どっぷりとリュック・ベンソン監督の世界観に身をゆだねて観る映画です。
盟友、エリック・セラの音楽が監督の世界観を支えます。
監督初期の「最後の戦い」「サブウエイ」「グランブルー」に共通する原点の暗さに戻ったかのような映画です。
暗いけど破滅的ではない。
観てスカッとする映画ではありませんが、あとから余韻がじわじわと広がってくる何とも不思議な映画です。