この前の三連休に映画を観てきました。
「ネクストゴールウインズ」という作品です。
実話をもとにした映画で、アメリカ領サモアのサッカー選手の戦いを描いています。
2001年のワールドカップ予選でオーストラリアに史上最悪の得点差31-0で大敗したサモアサッカーチームはオランダ人監督を招聘し、勝利を目指します。
ところが、勝利どころか、1点も得点したことのないチーム。
願いは勝利などではなく「1ゴール」でした。
チームのメンバーはみな兼業のアマチュアで、明らかに太りすぎな者、トランスジェンダー、筋肉オタク、警察官など多士済々。
でもみんなアマチュアなんですね。
サッカーでは、トップチームの選手が驚くような高給を手にしているいっぽう、底辺ではこのようなアマチュアなチームがあることにも驚かされました。
新監督は20歳以下アメリカサッカーチーム監督の座をクビになったトーマス・ロンゲン。
のちのち明らかにされますが、私生活でも窮地に立たされています。
彼の信念は「勝利こそすべて」とでもいったもので、選手にも勝つために過酷なトレーニングを要求します。
そんなトーマスですが、サモアの風土やサモア人の考え方に次第に影響を受けるようになっていきます。
サモアへの転勤を勧めたひとりに別居中の妻もいるのですが、トーマスがいま陥っている窮地が自身の性格や考え方によることを見抜いていました。彼は自他ともに追い詰めてしまう攻撃型タイプです。ある事件がきっかけで、ずっと自分を追い詰めていたのです。別居中の妻は、サモアに行くことによってトーマスが変化することを期待していたのでしょう。
その通り、次第にいい方向に変わっていったトーマスですが、トンガとの試合での前半線で元の勝利至上主義者に戻ります。
プレーの完璧さを求め、それができない選手たちを罵倒するトーマス。
挙句の果ては、自らの感情をコントロールできなくなり、ハーフタイム中に監督を辞めるといってロッカールームを出ていってしまいます。
激高したままのトーマスに対し、サモアサッカー協会のダビタ会長は「あなたが監督を辞めて、幸せならばそれでもいい」とあくまでもサモア流に穏やかに言います。
そのときトーマスは、自分は勝利によって、過去の失敗を帳消しにしようとしていたのだと気づきます。
そんな都合主義的な考えにより選手を動かそうとしていたエゴイスティックな自分にも気づきます。
スポーツの目的は勝つことではなく、楽しむこと。
自分らしくあること。
トーマスは過去にあった嫌な事件から目を背けることによって、事件そのものがなかったように思おうとしていました。
しかし、現実から目をそらしていても始まりません。
過去の失敗に対しては、まず受け入れること。
臭い匂いの元をそのままにしておいて、強い芳香剤を置いてもごまかしにすぎません。
失敗を受け入れ、ダメな自分を自分で許すことによって次へのステップへと進めるのです。
映画の冒頭ではトーマスは、
「サッカーは人生そのもの」
と語ってました。
しかし、現実を見つめ、やっと前に進む決意をしたトーマスの胸に
「サッカーだけが人生のすべてではない」
娘の言葉が響きます。
この映画の配給はディズニーなのですが、1993年公開の「クールランニング」を思い出しました。
お勧めの映画です。