(データ)

ブランド名:神鶴 紅 山廃本醸造

使用原料:国産米

精米歩合:70%

度数:16度

日本酒度 ±0
酸度 1.5

仕込水:木曽伏流水(軟水)

製造元:鶴見酒造株式会社 

愛知県津島市百町旭46

TEL(0567)31-1141
FAX(0567)32-0586

 

~最新の設備で作り上げる懐かしさを感じさせるお酒

 

昨今、日本酒の世界にも生活の多様性の影響を受けて変革の波が来ていると思います。

また後継者問題は中小の酒蔵にとって深刻な問題となっています。

専門家ではないので詳しいことまでは分からないのですが、日本酒業界にもM&Aが多くなっているようです。

愛知県の盛田のような大手が中小を吸収合併する場合、リオン・ドールのような異業種が参入する場合、あるいは、ごく中小の企業が子会社化する場合など、その形態は多種となっています。

 

この鶴見酒造は、明治6年(1873年)の古い酒蔵ですが、やはり異業種の資本を得て、復活を遂げました。

昨年、2022年には敷地内に新屋を建設し、設備も併せて最新設備にしました。

9月には工場見学をさせていただいたのですが、床から機械までみなピカピカです。

お酒の熟成も職人の勘に頼らない計器による測定を徹底しています。

案内していただいた方の説明によると、麹、もろみ、酒母といった酒造りに欠かせな原料の状態を機械で計測し、その結果をクラウドに集約。さらには、温度管理も遠隔操作できるようにしているそうです。

いかにも最新設備です。

 

 

 

この鶴見酒造では、フラッグブランドである「我山」と「山荘」、そして日常使いの「神鶴」の三つの銘柄のお酒を造っています。

「我山」は米をしっかりと溶かし「雑味のない透明感と米の旨味」を目指し、「山荘」は徹底した低温管理で米を溶かし過ぎないようにして「芳香でやや辛口、綺麗な味わい」を目指しています。

いっぽう「神鶴」は「料理に寄り添う、すっきりした飲み口」をコンセプトに造られています。

 

製造の指揮を執るのは若き南部杜氏の渡辺氏。

酒造りに懸ける熱い思いがほとばしっています。

最新設備を使って、いかにも今風のお酒を造るのかというと、そうでないのがこの酒蔵の面白いところです。

 

昨今の日本酒は純米大吟醸や純米吟醸が流行ですが、鶴見酒造では純米酒にこだわるよりも、アルコール添加にすることにより、バランスのいい辛口を目指しているように思います。

現に我山の大吟醸は純米ですが、山荘の大吟醸はアルコール添加です。

 

どちらも飲んでみたのですが、渡辺氏の情熱が伝わってくるような熱いお酒で、丁寧に造られているという印象です。

この先、まだ変化していくお酒のように思います。

 

ところで、日常使いの「神鶴」ですが、以前からある伝統のある銘柄です。

昔の地名であった神守(かもり)村にある鶴見酒造が造るお酒なので「神鶴」と名付けられたのですが、純米吟醸の「千」、吟醸の「紫」、純米の「万」、山廃本醸造の「紅」の4銘柄があります。

これも全部飲んでみたのですが、一番大衆酒の「紅」が一番口に合いました。

尖ったところのないマイルドな飲み口で、辛すぎず、甘すぎず、絶妙のバランスだと思います。

熱燗が推奨とのことでしたが、冷でも十分、その実力を発揮しています。

素直な味でどんな料理にでも合います。

もし、毎日続けてひとつの銘柄のお酒しか飲めないとしたら、このお酒を選ぶだろうと思わせたのがこの「紅」です。

媚びていないけれど、愛想がないわけではない。

そんなお酒だと思いました。