暗くともただ一向にすすみ行け

心の月のはれやせんもし

 

(今は暗い道をあゆんでいるように思うかも知れないが、ただひたすら進むことだ。いつかは良知の月があらわれるかもしれない)

 

中江藤樹(江戸時代初期の陽明学者。元・伊予国大洲加藤家家臣。脱藩後、郷里である近江国小川村へ戻り、私塾を開く)

 

 

中江藤樹は近江聖人と呼ばれた陽明学者です。

陽明学は、幕府の朱子学に対抗する学問として幕末志士たちに支持されました。

大塩平八郎も陽明学の「知行合一」の考えから兵を起こしたとされています。

しかし、藤樹の考えの基本となるのは、天と地と人は一体であり、形あるものことごとく兄弟だ、というものです。

たしかに厳格な身分制度を制定していた幕府の考えとは相容れないものがありますが、きわめて温厚な考えです。

人間は元来、「明徳」というまっすぐな心を持って生まれたのに、私欲などで心が曇ってしまっている。

元来の「明徳」を取りもどすためには学問を修めることだ、というのです。

何だかルソーの「自然にかえれ」に似ていると思いました。

それはさておき、冒頭の和歌はそれほどすごいことを言っているわけではないのですが、道半ばの自分にとって、とても励ましとなるものです。

 

参考文献:中江藤樹一日一言(中江彰)致知出版社