面白い本と出逢いました。

「徳川家康とお亀の方」という本です。

 

お亀の方というのは、尾張徳川家家祖・徳川義直公の産みの親です。

つまり、徳川家康の側室ということになります。

徳河家康の正妻は、今川義元と血縁関係にあった築山殿、豊臣秀吉の妹・朝日姫ですが、一方、側室は19人もいたとされます。

お亀の方は十三番目に当たる側室です。

お亀の方が側室になったのは、家康53歳、お亀の方21歳のとき。

徳川秀忠の母に当たる西郷局や、紀州徳川家家祖・徳川頼宜と水戸徳川家家祖・徳川頼房を産んだお萬の方も、あまりクローズアップされることのない存在でした。

 

以前から私は女性の側から歴史を眺望してみたら面白そうだなあ、と思っていたのですが、「徳川家康とお亀の方」はまさしく女性の側から見た日本史です。お亀の方は才気あふれる女性だったようですが、西郷局やお萬の方同様にこれまで小説やドラマの主人公にはなったことのない人物でした。

これまでお亀の方のような女性が主人公にならなかったのは、残っている資料が少ないからだと思います。

その中で、これだけの資料をよく集めたものだと感心します。

二部の資料編も過不足なくまとめられていて、とてもみやすいです。

漫画なのですが、原作者は「公方様のお通り抜け」「日本博物館事始め」で知られる女流作家の西山ガラシャさん。

作画は瀬知エリカさん。監修者として、原史彦さん。

 

 

画風は日本昔ばなしのようなほんわかしたもの。

毛筆で描かれているそうです。

お亀の方は、実際は頭の切れる理的な人なのですが、身にまとった雰囲気がほのぼのしていて、きついことを言っても許されてしまう得なタイプだったのではないかと思いました。

 

 

お亀の方の人生は前半は波乱万丈でしたが、後半は落ち着いてきます。

徳河家康に側室になるかと打診されたとき、

「わたしは、何があろうと前に進むしかない。運命の流れに身をまかせるしかない」

とお亀の方は自分に言い聞かせます。

頭のいい人ほど、あれこれ考えて優柔不断になりがちですが、お亀の方は違います。

一種の諦観にも似た踏ん切りのよさが、お亀の方の運勢をいい方向に運んで行ったように思えます。

「風向きを気にし過ぎる百姓はいつまで経っても種を蒔けない」ということわざがありましたが、思い切って飛び込めば案外人生ってうまくいくものなのだ、と教えられたような気がします。