井上円了。
安政5年(1858年)~大正8年(1919年)。
長岡藩領三島郡(現・新潟県長岡市浦)生まれ。
仏教学者、哲学者。
明治18年(1887年)、哲学館(現・東洋大学)を設立。
明治37年(1904年)、哲学堂を設立。
明治38年(1905年)、哲学館大学長を辞任。
「護国愛理」(理に執着することにより国を護る)を提唱。
哲学堂は、井上円了が私財を投げうって造った哲学のテーマパークといってもよい公園です。
哲学堂には77か所にものぼるそれぞれ名前を付けられたポイントが点在しています。
哲学堂を訪れた者が最初に潜るのは、哲理門と呼ばれる正門です。
この門の右側には天狗、左側には幽霊(いずれも現在はレプリカ)が備えつけられています。
この門の存在は有名で、地元の子供から哲学堂は「幽霊公園」と呼ばれています。
井上円了は妖怪博士、お化け博士として有名ですが、その基調は一貫して、幽霊否定の立場です。
幽霊のしわざと言われる事象を実際に現地に行って確かめ、ひとつひとつ、幽霊のせいではないと検証していったわけです。
哲理門では、物質の世界の不思議を天狗で、精神の世界の不思議を幽霊で表している、と説明文には書かれています。
この説明は分かりにくく、水木しげる氏の「天狗は学問を続けているうちに高くなる鼻、幽霊は地に着かなくなる足を自省している」という説明のほうがよほど分かりやすいと思います。
この風景がもっとも哲学堂公園らしいと思っています。
手前に六賢堂、奥に四聖堂が見えます。
哲学等のシンボルタワーのような存在の六賢堂。
聖徳太子、菅原道真、荘子、朱子、龍樹、迦毘羅の六人を祀っています。
ちなみに、四聖堂は、孔子、釈迦、ソクラテス、カントを祀っています。
狸灯。
説明文によると「人間の心情は狸に類するものがありますが、時には、光輝ある霊性を発揮することがあるとして、狸の腹に光り(灯篭)を志仕込んでありました」とあります。読んでも、あまり意味が分かりません。目立つところにあるので、人気の高い置物です。
鬼灯。
狸灯と比べるとおどろおどろしい置物です。
「われわれの心中に悪念、妄想がやどっているのは心の鬼のためですが、心の内に良心の光明があるので、鬼がその灯篭(良心)に圧倒せられ、苦しんでいる状態を表しています」
との説明文です。
三学亭。
神道の平田篤胤、儒教の林羅山、仏教の釈擬然の三人を祀っています。
面白いのは、この下にある建物です。
「尾無毛泉無白」と書かれています。
読み下すと、尾に毛なし、泉に白なし、です。
何の建物でしょうか?
正解はトイレです。
なぜなら、上の文を解くと「尿」になるからです。
円了は哲学堂を著作の印税で設立しました。
財力の大切さは、勝海舟に教えられたと言われています。
三祖碑。
中国の黄帝、インドの足目仙人(アクシャ・パーダ)、ギリシャのタレスを祀っています。
円了は教育者としては福沢諭吉ほど有名ではなく、著述家としては柳田邦男ほど知られていません。
それは、福沢や柳田が他の人を巻き込むように思想活動を行っていたのに対し、円了が愚直なまでに真理探究だけに取り組んだからなのだと思っています。
最後に管理事務所へ行くと一枚一二〇円で哲学堂煎餅が売っていましたので、お土産に買って帰りました。
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